動画の紹介
数多くのクリンチェックを手掛ける先生が、「どこを見て」「何を考え」てクリンチェックを作成しているのか?
考えてみたことはないでしょうか。
今回の動画では、皆様に好評の、横田先生による公開クリンチェックをご覧いただきます。
横田先生のクリンチェックの作成過程をご覧になりながら、学べることは多いはずです。
クリンチェック作成に時間がかかったり、どのように治療計画をしたらよいか分からなかったりする先生方にお勧めの動画です。
動画内容
症例概要について
この症例は、20代女性の上下顎前突症例です。
骨格的には上下顎のバランスは取れているものの、叢生と歯列弓形態の改善が必要になっています。
セファロ分析の結果、上下顎骨の大きさは正常範囲内であり、上下顎骨の前後的位置関係に大きな異常は認められませんでした。
プロファイルは、ややコンベックスタイプで口唇の突出感があります。
上下顎前歯部の唇側傾斜が見られ、スマイルカーブがやや強めになっており、下顎前歯部の突き上げが認められると横田歯科医師(以下:横田先生)。
オーバージェットとオーバーバイトは概ね問題ないレベルと判断されました。
この症例は、軽度から中等度の上下顎前突を呈していますが、骨格的な不調和は軽度であり、歯性の上下顎前突が主体であると考えられると横田先生は話します。
したがって、インビザラインによる歯の移動を中心とした矯正歯科治療が適用可能であり、良好な治療結果が期待できるとのことでした。
治療の方法について患者様に伝えること
インビザラインによる矯正歯科治療を行う際は、患者様のご希望とご予算に合わせて、治療方法は1つでないということを伝えていると横田先生。
横田先生のこの診療は理想的で、複数の治療プランを提案するようにしましょう。
歯科医師から診療を提供する場合、患者様に適した治療があるかもしれません。
しかしながら、治療期間やアライナーの枚数、仕上がりの改善度合いなど、それぞれの仕上がりを求める患者様が大勢います。
ですので最終的な治療方法は、患者様とご相談の上、決定していきましょう。
患者様が求める以上の治療を提案することはあっても、決めるのは患者様です。
私の勤めていた歯科医院でもその点は徹底しておりました。
クリンチェックを用いて、各プランの詳細をわかりやすくご説明し、実際の歯の動きをイメージしていただきながら、治療プランを選んでいただきましょう。
そこで初めて正しいクリンチェックの修正を行い、最適な治療計画を立案します。
戻ってきたクリンチェックを診ていく
ではここで横田先生のクリンチェックを一緒に見て行きましょう。
最初に返ってきたクリンチェックでは、治療の序盤からアーチ形態の改善と叢生の解消を中心に設定されています。
IPRを多用しながら、上下顎の前歯部を唇側に移動させる計画となっており、上顎前歯の唇側移動量は1.4mm、許容範囲内に収まっています。
ステージ数は35と比較的少なく、シンプルな設定のため、予測実現性は高いと考えられます。
ただし、この段階では臼歯部の咬合接触については深く言及されておらず、注意が必要と横田先生は話します。
全体的には、問題のない初回のクリンチェックであると言えますが、上記の点を解決していく必要があるでしょう。
臼歯部の咬合接触を解決する
臼歯部の咬合接触を解決するには、以下の点が重要になります。
・臼歯部の咬合接触の重要性
・クリンチェックの修正ポイント
・モニタリングの重要性
以下で詳しく解説します。
臼歯部の咬合接触の重要性
インビザラインによる矯正歯科治療において、臼歯部の咬合接触は非常に重要な要素です。
前歯部の移動に注目が集まりがちですが、臼歯部の咬合が安定していなければ、治療後の後戻りや咬合の不調和を引き起こす可能性があります。
上下顎前突症例では、前歯部の唇側傾斜を改善するために臼歯部の咬合が犠牲になりやすい傾向にあります。
したがって、治療計画の立案段階から臼歯部の咬合接触に十分な注意を払う必要があります。
クリンチェックの修正ポイント
臼歯部の咬合接触を確保するために、クリンチェックの修正が必要となる場合があります。具体的には、以下のようなポイントに注目します。
1. 治療終了時の臼歯部の咬合接触を確認し、不十分な場合は咬合接触を強めに設定する
2. 上下顎の臼歯部にアタッチメントを追加し、咬合接触の改善を図る
3. 必要に応じて、バイトランプを設置し、臼歯部の咬合接触を意識付けする
4. IPRの量や位置を調整し、臼歯部の咬合接触に影響を与えないようにする
これらの修正を加えることで、治療終了時に安定した臼歯部の咬合接触が得られるようにします。
モニタリングの重要性
クリンチェックの修正に加えて、治療中のモニタリングも非常に重要です。
定期的な来院時に、臼歯部の咬合接触を確認し、必要に応じてアライナーの調整や追加のアタッチメントの設置を行います。
患者様には、アライナー装着時の臼歯部の咬合接触を意識していただくよう指導しましょう。
治療中のモニタリングを怠ると、臼歯部の咬合が浮いてしまい、治療後の咬合の不調和を引き起こす可能性があります。
逆に、適切なモニタリングを行うことで、安定した臼歯部の咬合接触が得られ、良好な治療結果につながるため留意してくださいと横田先生は仰いました。
前歯に叢生が強い場合は?
前歯部に強い叢生が認められる症例では、アライナーによる歯の移動をスムーズに行うために、いくつかの工夫が必要です。
まず、アタッチメントの設置を検討します。
前歯部の歯根にアタッチメントを縦向きに設置することで、歯の移動をより効果的にコントロールできます。
特に、捻転や傾斜が強い歯には、アタッチメントを用いることで、効率的な矯正力の伝達が可能になり、アタッチメントの設置にて前歯部の叢生の解消が円滑に進むことが期待できます。
また、前歯部の叢生解消に伴い、臼歯部の咬合接触が不安定になることがあります。
これを防ぐために、バイトランプの設置を検討しましょう。
上顎前歯部にバイトランプを設置することで、アライナー装着時の臼歯部の咬合接触を確保し、臼歯の離開を防ぐことができます。
バイトランプを用いることで、患者様に対して、臼歯部の咬合接触を意識していただくことも可能です。
以上のように、前歯部の叢生が強い症例では、アタッチメントとバイトランプを適切に使用することで、効果的な歯の移動と安定した臼歯部の咬合接触が得られます。
以上が横田先生のクリンチェック公開で得られた学びになります。
ぜひ臨床の場で生かして下されば幸いです。
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1本15分程度で構成しているので、ぜひ隙間時間にスキルアップしてみませんか?
ここまでお読みくださりありがとうございました。
動画の方も是非ご視聴ください!
編集・執筆
歯科専門ライター 萩原 すう