こんな方におすすめ
●マウスピース矯正を取り入れている先生
●日々の診療で困っている事がある先生
●クリンチェックを学びたい先生
公開クリンチェック_横田先生_007
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●クリンチェックを学びたい先生
数多くのクリンチェックを手掛ける先生が、「どこを見て」「何を考え」てクリンチェックを作成しているのか?
考えてみたことはないでしょうか。
今回の動画では、皆様に好評の、横田先生による公開クリンチェックをご覧いただきます。
横田先生のクリンチェックの作成過程をご覧になりながら、学べることは多いはずです。
クリンチェック作成に時間がかかったり、どのように治療計画をしたらよいか分からなかったりする先生方にお勧めの動画です。
症例のプロファイルは、上顎骨の前方位と下顎前歯部の突き上げを特徴とする、軽度から中等度の上顎前突症例であると考えられます。
今回の症例は、骨格的には上顎がやや前方に突出しているものの、極端な上顎前突ではない症例です。
セファロ分析の結果、上顎骨の大きさは正常範囲内であり、上顎骨がやや前方に位置しているというプロファイルを示していました。
一方、下顎骨の後退は見られませんが、突き上げが強いような印象を受けます。
前歯部がやや突き上げているような状態になっているため、咬合平面を改善させる際に、下顎の挺出と上顎の圧下を同時に行う施術が多いと横田先生は仰いました。
ではここで本題の横田歯科医師(以下:横田先生)によるクリンチェックの着眼点を指南頂きながらこの症例を見ていきます。
注目する点はまず3つです。
・下顎のジャンプを削除し、上顎の遠心移動量を増加
・咬合平面の改善と臼歯の接触状態の調整
・前歯のステージは時間をかけていい
以下で詳しく解説します。
当初のクリンチェックでは、最終ステージで下顎が前方に12mmほどジャンプするような設定になっていました。
しかし、この症例では上顎骨の前方位が主な問題であり、下顎骨の後退は見られないため、下顎のジャンプを削除し、その分上顎の遠心移動量を増やすように修正しました。
具体的には、上顎の遠心移動量を9cu増加させる指示を出しています。
この修正により、全体的なステージ数は42枚となり、右側では上顎の遠心移動が順次的に行われ、下顎のジャンプがなくなります。
対して左側では微妙な回転や臼歯の接触状態の改善が行われるようになりました。
下顎前歯部の突き上げが見られ、スマイルカーブがやや強めになっています。
咬合平面を改善させる際に、下顎の挺出と上顎の圧下を同時に行うことが多いですが、ステージ数が多いケースであるため、上顎のステージに合わせるぐらいのペースで、ゆっくりと下顎の改善を行うように、横田先生は指示を出しています。
最終的なクリンチェック上の咬合接触状態は、臼歯がやや強めに接触し、前歯があまり咬んでいない状態になっています。
これは意図的に行ったもので、アライナーの厚みがある分、臼歯が早期接触しやすいため、できるだけ臼歯は強く咬合接触させるようなクリンチェックを設計しています。
前歯部に関してはやや開咬気味の仕上がりにしておくことで、実際の咬合接触状態が意図した通りになりやすいと考えられることから、横田先生の臨床経験を踏まえて指示を出されました。
下顎前歯部の突き上げが見られるため、咬合平面の改善が必要になります。
しかし、上顎の遠心移動に多くのステージ数を要するケースでは、下顎前歯部の圧下を急ぐ必要はありません。
上顎のステージ数に合わせて、ゆっくりと下顎前歯部の圧下を進めていくことが望ましいです。
急激な下顎前歯部の圧下は、クリンチェック上では可能であっても、実際の臨床では難しく予測実現性が下がります。
ですので、上顎の遠心移動のペースに合わせて、緩徐に行うことが重要です。
この症例では、3番と6番にボタンカットを設置し、リンガルボタンを装着して、ゴムの使用も検討しました。
アタッチメントを多用すると、患者様にとってアライナーの着脱が大変になることがあるため、患者さんのキャラクターを見極めながら、必要に応じて設置することが大切です。
患者様の性格によっては、丁寧に作業できる方もいますがそうで無い方もいます。
私の場合は毎日規則正しく着脱活ケアをするのは苦手なので、そのようなキャラクターの患者様に配慮するのは重要になるので念頭に置いておきましょう。
また、上顎の遠心移動時の前歯部のフレアを抑制するために、治療開始時から2級ゴムの使用を検討することも有効でしょうと横田先生は話します。
さらに、下顎前歯部の圧下を行う際には、前歯部の歯根にアタッチメントを縦向きに設置することで、よりコントロールしやすいです。
特に、下顎の2番などは、アタッチメントがあってもアンフィットしやすい部位であるため、リンガルボタンを装着し、ゴムを使用することも検討すべきでしょう。
最後に、上顎にバイトランプを設置することで、咬合の安定性を向上させることができます。
バイトランプは、アライナーによる歯の移動中の咬合の安定化に寄与し、治療中の不快感を軽減させる効果が期待できます。
今回の症例は、クリンチェックを初めて経験する方には最適な案件だと横田先生は話します。
なお、クリンチェックを初めて提出する際は、いくつかの注意点があります。
まず、クリンチェックは最短の枚数で仕上げようとするため、前歯の改善などを急激に行うような設計に練っていることが多いです。
しかし、実際の臨床では、上顎前歯部の圧下と下顎前歯部の挺出を同時に行うことは難しいことが多いため、初回提出時は、理想的な状態を目指すのではなく、現実的な歯の移動量と方向性を考慮することが重要です。
アタッチメントの設置についても、初回提出時は必要最小限にとどめ、治療の進行に合わせて追加していくことが望ましいでしょう。
患者様のコンプライアンスを考慮し、アライナーの着脱が困難になりすぎないように配慮することが大切です。
クリンチェックの初回提出は、治療計画の基礎を作る重要なステップです。
理想的な設定ではなく、現実的で無理のない歯の移動を心がけ、必要に応じて修正を加えていくことが、良好な治療結果につながります。
以上が横田先生のクリンチェック公開で得られた学びになります。
ぜひ臨床の場で生かして下されば幸いです。
ORTConlineでは日頃の診療で他の人には聞けない悩みを解決するため、様々なテーマを取り扱っています。
1本15分程度で構成しているので、ぜひ隙間時間にスキルアップしてみませんか?
ここまでお読みくださりありがとうございました。
動画の方も是非ご視聴ください!
編集・執筆
歯科専門ライター 萩原 すう