動画の紹介
数多くのクリンチェックを手掛ける先生が、「どこを見て」「何を考え」てクリンチェックを作成しているのか?
考えてみたことはないでしょうか。
今回の動画では、皆様に好評の、横田先生による公開クリンチェックをご覧いただきます。
横田先生のクリンチェックの作成過程をご覧になりながら、学べることは多いはずです。
クリンチェック作成に時間がかかったり、どのように治療計画をしたらよいか分からなかったりする先生方にお勧めの動画です。
動画内容
処方書を出して戻された、横田先生も手を付けていないクリンチェックを皆さんで見ていきましょう。
ファーストクリンチェックをどう見ていくか、自分ならどう指示出しをするかぜひ考えてみてください。診療をしていくと発見が見つかるかもしれません。
ぜひ動画と並行してご覧ください。
症例と主訴
以下に、今回のクリンチェックの患者様の紹介をまとめます。
ぜひご参考にしてください。
症例
症例は以下のとおりです。
6点、挙げられると横田歯科医師(以下;横田先生)はおしゃっています。
1. 20代前半の女性
2. 骨格的に下顎劣成長で上顎前突
3. 典型的な2級1類の不正咬合パターン
4. 上顎前歯の突出(オーバージェットが大きい)
5. 右上に過剰歯(1233’パターン)あり
6. 吹奏楽の楽器演奏により前歯の突出が進行
吹奏楽部は、リードを使う木管楽器を担当していたとのこと。
マウスピースの形成上、どうしても起こりうるパターンです。
主訴
主訴は以下のとおりです。
吹奏楽部のリード楽器を吹いていたことによる影響がここででできており、患者様は治したいとお考えのようです。
1. 前歯が出ているのが気になる
2. 特に期間にこだわりはないが、歯並びを綺麗に直したい
3. 矯正方法(ワイヤーかマウスピース)にこだわりはなく、おすすめの方法で治療したい
これらの点を踏まえたうえで横田先生のアプローチを見ていきましょう。
横田先生の治療アプローチ
横田先生の治療のアプローチは大きく分けて3点に分けられます。
1. 診断と治療計画
2. クリアアライナー治療のステージング
3. アタッチメントとゴムの使用
横田先生のアプローチを1つずつ解説しますので、ぜひご覧くださいね。
1. 診断と治療計画
横田先生は、まず患者の背景と症状を詳しく分析されます。
20代前半の女性で、吹奏楽の楽器演奏により前歯が突出したという経緯を考慮していますよね。骨格的には下顎劣成長で上顎前突の2級1類の不正咬合パターンと診断しています。
治療計画として、オーバージェットが10mm未満であることから、顎矯正手術ではなく矯正歯科治療単独で行うことを決定づけています。
具体的には、上顎の右側の過剰歯(C歯)と両側の第一小臼歯(4番)を抜歯し、前歯部をリトラクション(後方移動)する計画を立てていらっしゃいました。
この流れからもわかるように、横田先生はまず患者様の主訴に重点を置いているといえます。
2. クリアアライナー治療のステージング
クリアアライナー治療のステージングでは、まず3番歯を単独で動かし、その後6前歯をひとかたまりでリトラクションする方法を採用されています。この方法により、ステージ数を50-60枚程度に抑えることができると考えられました。
また、臼歯部も同時に近心移動させていますが、前歯と臼歯の動きを分けて行う方法も検討しています。ただし、ステージ数が増えることから、まずは提案されたプランで様子を見る方針です。
あくまで主体は患者様にあるのです。
3. アタッチメントとゴムの使用
治療効果を高めるために、アタッチメントとゴムの使用を計画しています。特にこの動画を撮影時点ではアタッチメントの装着を多く行っていたと横田先生。着脱であらぬ力がかかり予測実現性の高さを安定させるためといいます。
大きく動かす3番の歯にはアタッチメントを付け、ゴムで牽引する予定です。また、前歯部のリトラクション用のアタッチメントも使用します。
横田先生は、アタッチメントの選択よりも患者のコンプライアンスの方が重要だと考えています。そのため、アタッチメントの配置には柔軟な姿勢を取っています。
また、治療の加速化装置の使用も検討しており、特に大きな歯の移動が必要な症例では効果が高いと考えています。
インビザラインの治療時注意すべきこと
横田先生が注意すべきポイントとして挙げている部分が以下の点です。
1. 咬合平面の調整
2. アタッチメントの配置
3. コンプライアンスの重要性
4. 歯の移動と歯根の位置
5. 歯肉退縮のリスク
6.クリアチェックの修正方法
7. 被蓋の調整
8. 患者への説明
1. 咬合平面の調整
下顎前歯の咬合平面を整える速度を落とし、確実に臼歯の挺出と前歯の圧下を行うようにプランニングを変更すべきだと指摘しています。
2. アタッチメントの配置
前歯部全体にアタッチメントをつけることで、患者がアライナーの着脱時に不適切な力がかかることを防ぐ必要があると述べています。
3. コンプライアンスの重要性
アタッチメントの選択よりも、患者のコンプライアンスの方が治療結果に大きな影響を与えると考えています。
4. 歯の移動と歯根の位置
CTで確認し、歯根が歯槽骨から逸脱しないような移動経路を計画することの重要性を指摘しています。
5. 歯肉退縮のリスク
歯の大きな移動を伴う場合、歯肉退縮のリスクがあることを患者に伝える必要性を示唆しています。
6. クリアチェックの修正方法
1回の修正にかける時間を5分程度に抑え、修正と確認のサイクルを短くすることで、より精度の高い治療計画を効率的に作成できると述べています。
7. 被蓋の調整
最終的な被蓋(特に水平的、垂直的な被蓋)の調整が重要であり、必要に応じて手動で修正する必要があると指摘しています。
8. 患者への説明
治療中に歯肉の外科処置が必要になる可能性があることを、事前に患者に説明する必要性を述べています。
これら8つのポイントは、治療の精度を高め、患者の理解と協力を得るために重要だと横田先生は考えています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
横田先生の動画を定期的にご覧になっている方はお気づきかと思いますが、一定のルールをお持ちで治療に当たられているのがわかると思います。
ぜひ横田先生がマイルールとしてお持ちのポイントを覚え、実践で生かしてもらえたら幸いです。
ORTConlineでは日頃の診療で他の人には聞けない悩みを解決するため、様々なテーマを取り扱っています。
基本は1本15分程度で構成しているので、ぜひ隙間時間にスキルアップしてみませんか?
ここまでお読みくださりありがとうございました!
編集・執筆
歯科専門ライター 萩原 すう