動画の紹介
数多くのクリンチェックを手掛ける先生が、「どこを見て」「何を考え」てクリンチェックを作成しているのか?
考えてみたことはないでしょうか。
今回の動画では、皆様に好評の、横田先生による公開クリンチェックをご覧いただきます。
横田先生のクリンチェックの作成過程をご覧になりながら、学べることは多いはずです。
クリンチェック作成に時間がかかったり、どのように治療計画をしたらよいか分からなかったりする先生方にお勧めの動画です。
動画内容
症例概要について
この症例は、50代の女性の方で、長年上下の前歯部の叢生を気にされており、タイミング的に余裕が出てきたので矯正治療をご検討されて来院されたとのことです。
歯並びは上下ともややコンベックス気味で、特に前歯部に強めの叢生があります。
患者様のご希望としては、なるべく低予算でインビザラインのライトパッケージに収めたいとのことでした。
前歯部の叢生は笑顔をつくった際に目立つので、特に女性の方は気になりますよね。
私も気になっていたので務めていた歯科医院の医院長に相談したことがあります。
プロファイル
・50代女性
・上下前歯部の叢生
・タイミング的に余裕が出てきたので矯正治療を検討
・歯並びは上下ともややコンベックス気味
・前歯部に強めの叢生あり
・補綴物が多数装着
・費用を気にされており、インビザラインのライトパッケージでの治療を希望
横田歯科医師(以下:横田先生)は、通常はこのような症例の場合、インビザラインのコンプリヘンシブパッケージで対応すべきだが、患者様のご要望に応えるべく、ライトパッケージで治療計画を立案しようと試みられています。
抜歯や補綴物の仕直しも検討しつつ、なるべく患者様のご希望に沿った治療方針を模索されている症例といえるでしょう。
多くの患者の特徴
インビザラインによる矯正治療を希望される患者様の中には、以下のような特徴を持つ方が多く見受けられます。
1. 治療期間よりも費用を重視する
多くの患者様は、「期間は気にしない」という意見を持っています。矯正治療に要する期間よりも、費用面を重視する傾向が強いと横田先生は仰います。
2. インビザラインライトパッケージでの対応を望む
費用面を重視する患者様の中には、「インビザラインライトで対応できないか」という問い合わせをされる方が多くいらっしゃいます。通常のコンプリヘンシブパッケージよりも低予算で治療を進められるライトパッケージを希望される方が多いようです。
3. 治療内容よりも費用を気にする
患者様の中には、治療内容の詳細よりも、とにかく「費用は気にする」という方が一定数いらっしゃいます。治療方法や期間、結果より費用面で折り合いをつけたいとのご要望が強い傾向です。
4. 歯科医師の提案よりも自身の希望を優先する
医学的に見て最適な治療方法があったとしても、患者様の中には自身の希望を優先される方がいらっしゃいます。歯科医師の提案よりも、費用面で自身の希望に沿った治療方法を選択される傾向が見られます。
5. 治療結果よりも費用の満足度を重視する
治療終了後の満足度についても、歯並びや噛み合わせの改善度よりも、いかに費用を抑えられたかという点に重きを置く患者様が多いと横田先生は仰いました。
このように、インビザラインによる矯正治療を希望される患者様の中には、費用面を最優先に考える方が多く見受けられます。歯科医師には、患者様のご要望を尊重しつつ、医学的に見て適切な治療方法を提案していくことが求められます。
小臼歯の抜歯を考慮した方がいい
この症例のように、前歯部の叢生が強く、スペースの不足が著しい場合、小臼歯の抜歯を考慮した方が良いケースがあります。
以下のような点を考慮すると、小臼歯の抜歯が望ましいと考えられます。
1. 前歯部の叢生が強度である
上下顎ともに前歯部の叢生が強く、歯列弓内のスペースが不足している場合、小臼歯の抜歯によりスペースを確保することが有効です。
抜歯することで、前歯部の排列を改善するための十分なスペースが得られます。
2. インビザラインのライトパッケージでは対応が難しくなる
インビザラインのライトパッケージは、限られた枚数のアライナーで治療を行うため、大幅な歯の移動が必要な場合は対応が難しくなります。
小臼歯の抜歯により必要なスペースを確保することで、ライトパッケージでの治療が可能になる場合があるでしょう。
3. 非抜歯での治療では期間が長くなる
非抜歯で叢生を改善しようとすると、歯の移動量が多くなり、治療期間が長くなる傾向があります。
患者様のご要望として治療期間の短縮が挙げられている場合、小臼歯の抜歯を検討することで、治療期間の短縮が図れる可能性があります。
4. 抜歯により良好な咬合関係が得られる
小臼歯を抜歯することで、前歯部のスペースが確保できるだけでなく、全体的な咬合関係の改善にもつながります。
オーバージェットやオーバーバイトの改善、臼歯部の咬合関係の安定化など、抜歯により良好な咬合関係が得られる可能性があります。
5. 長期的な安定性が向上する
抜歯により得られたスペースを利用して歯を適切に配列することで、長期的な治療結果の安定性が向上します。
非抜歯で無理に歯を移動させた場合、後戻りのリスクが高くなる可能性がありますが、抜歯により適切なスペースを確保することで、後戻りのリスクの軽減が可能です。
ただし、小臼歯の抜歯は不可逆的な処置であるため、慎重に検討する必要があります。患者様のご要望や口腔内の状況、治療目標などを総合的に判断し、メリットとデメリットを十分に説明した上で、患者様との合意のもと、抜歯を決定することが大切です。
患者様の希望を考えていく
患者様のご要望を踏まえ、前歯部の叢生を改善するために、上顎両側の第二小臼歯(2番)の抜歯を横田先生は検討しました。
抜歯により得られるスペースを活用することで、前歯部の叢生を解消し、歯列弓の配列を整えることが可能になります。
ただし、抜歯後の歯列弓の配列は現状であまり悪くないため、大幅な変更は避けたいと考えていらっしゃいます。
現在のクリンチェックの結果は、決して悪いものではありませんが、前歯部の唇側へのフレア量が3〜4mmと大きく、歯槽骨のサポートが不十分になる可能性があります。
このフレア量では、歯肉退縮(リセッション)のリスクが高くなることが懸念されるからです。
また、インビザラインのライトパッケージで使用可能なアライナーの枚数が限られていることを考慮すると、臼歯部の遠心移動とフレアを同時に達成することは難しいでしょう。
そこで、臼歯部の遠心移動は行わず、歯列弓の側方拡大とIPRを組み合わせることで、前歯部のスペースを確保し、叢生の改善を図ることを提案されました。
治療目標としては、臼歯部の咬合関係をAngle Class I(1級)に維持しつつ、左下前歯部の唇側フレアを2mm以内に抑えることを目指したいと横田先生。
以上の方針で、患者様のご要望に沿った治療計画を立案し、インビザラインのライトパッケージでの対応を模索していきたいと思います。
ただし、治療計画の実現性や歯周組織への影響については十分に検討し、患者様にメリットとデメリットをご説明した上で、同意を得ながら慎重に進めていくことが肝要です。
以上が横田先生のクリンチェック公開で得られた学びになります。
ぜひ臨床の場で生かして下されば幸いです。
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1本15分程度で構成しているので、ぜひ隙間時間にスキルアップしてみませんか?
ここまでお読みくださりありがとうございました。
動画の方も是非ご視聴ください!
編集・執筆
歯科専門ライター 萩原 すう