講師紹介 関野愉

  • 関野愉
  • 日本歯科大学生命歯学部歯周病学講座
  • 准教授
  • 1991年に日本歯科大学新潟歯学部(現新潟生命歯学部)を卒業後、奥羽大学歯学部歯科保存学第1講座にて岡本浩教授に師事。エビデンスに基づいた歯周病の臨床を学ぶ。その後1999年よりスウェーデン、イエテボリ大学のJan Lindhe教授の元に留学。Per Ramberg准教授の指導のもと、プラーク形成過程や科学的プラークコントロールをテーマに研究を行い、途中アメリカ、フォーサイス研究所のSigmund Socransky教授の元に短期留学。2005年、イエテボリ大学にてphDを取得した。現在は日本歯科大学生命歯学部歯周病学講座にて准教授を務め、疫学研究をはじめとする臨床研究を主なテーマとして研究活動を行ない、その傍ら講演会や書籍執筆も多数おこなっている。
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こんな方におすすめ

歯周治療のゴール設定を明確にしたい歯科医師・歯科衛生士

メインテナンス(SPT)時のBOPの重要性を再認識したい方

論文データに基づいた臨床的根拠を学びたい歯科医療従事者

動画の紹介

本動画では、日本歯科大学歯周療法学講座の関野愉先生が、歯周炎の予後を予測するための多角的な指標について、海外の重要な論文を紐解きながら解説しています。

歯周炎は「部位特異性」という特徴を持つため、口腔内を一括りにせず、部位(歯面)、一歯、そして患者という3つの異なるレイヤーで評価することが不可欠です。

エビデンスに基づいた「健康」の定義と、臨床的な「許容範囲」の境界線を明確に示しており、日々の診療における意思決定や患者様への説明に直結する非常に有益な内容となっています。

動画内容

BOP(出血)の有無とアタッチメントロスの相関

メインテナンス期におけるBOPは、炎症の有無を示すだけでなく、将来的な組織破壊の「陰性適中率」が極めて高い指標です。

動画内で紹介された後ろ向き研究によると、直近4回のメインテナンスですべてBOPがなかった部位では、99%近くの確率でアタッチメントロスが進行しません。

逆に、BOPが継続的に見られる部位では約3割が進行のリスクを抱えています。 

 

「BOPがあれば必ず悪化する」わけではありませんが、「BOPがなければほぼ悪化しない」という事実は、メインテナンスの安全性を担保する上で非常に重要な基準となります。

BOPを全顎10%未満に抑えることが、予後を安定させるための大原則であることが再確認されています。

ポケット深さと歯の喪失リスクの関係

治療後の再評価時に残存したポケット深さも、強力な予後予測因子です。

スウェーデンの研究データでは、ポケットが7mm以上残存している場合、3年半で25%以上の確率で歯周炎が進行します。

 

一方で、4mm以下のポケットでBOPがない状態であれば、進行リスクは劇的に低下します。 

一歯レベルでの喪失リスクについても、5mm以上のポケットが残ると喪失率が高まりますが、4mm以下でBOPがない状態を維持できれば、11年間の長期観察でも歯の喪失を極めて低く抑えられることが示されています。

 

臨床的には「PD4mm以下・BOPなし」をひとつの安定基準(エンドポイント)と考えることの妥当性が裏付けられています。


新分類の基準(CP1)と臨床的安定性(CP2・3)

患者単位での予後評価については、2017年の新分類が定める基準(CP1:PD4mm以下、BOP10%未満、4mm以上のBOPなし)が理想的ですが、これを達成できる患者は全体の約5%と非常に厳しいのが現実です。

 

しかし、研究によれば、BOPを伴う5mm以上のポケットが4面以内(CP3)であれば、10年間の安定性において理想的な基準と有意な差は認められませんでした。 

 

これは、すべての部位で完璧を目指すだけでなく、患者様の背景や特定の歯の重要性(補綴の支台歯など)を考慮し、現実的な「安定状態」を目指すことの重要性を示唆しています。

個別化された治療計画の立案とチーム医療

一歯ごとの診断(レビス・グラビス・コンプリカーター分類)を行い、保存可能な歯、保存の可否が不明な歯、抜歯すべき歯を明確に分けることは、全顎的な治療計画において不可欠です。

 

どの歯に暫間固定や補綴を行うかをあらかじめシミュレーションすることで、迷いのない治療進行が可能になります。 

 

最終的には、臨床指標だけでなく、患者様のセルフケア能力やリスク因子(喫煙等)を統合し、「この患者様にとっての最善の着地点」をチームで共有することが、真の意味での予後向上に繋がります。

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