こんな方におすすめ
クリンチェックの処方書での指示は入れずに、ファーストクリンチェックの戻しを待った症例です。
インビザライン導入支援を行うMeLoSにて、担当講師をしている横田歯科医師の日々のルーティンについても解説いたします。
クリンチェックの動かし方が妥当なのか普段のクリンチェックの操作が垣間見えます。
動画内容
「委託していたクリンチェックが戻ってきたけれど、このあとどうしたら良いのだろうか…?」
そうお悩みの方はいるのではないでしょうか。
今回は処方書を出してない患者さんのクリンチェックをピックアップして頂き、クリンチェックの見方や修正のポイント、横田先生がどのようにクリンチェックの修正を行っているかを実際に拝見させて頂きます。
こちらの概要を一読した上で動画の視聴を頂けますとより理解が早く進みます。お時間が許せばぜひご視聴までされるのをお勧め致します。
【横田歯科医師】実際の症例を使ったクリンチェック
インビザライン導入支援を行っている『MeLoS』にて担当講師をしている横田先生による公開クリンチェックをご紹介していきます。
患者さんのステータス
今回の症例の患者さんのステータスは22歳の女性とのこと。主訴以下の通りです。
・八重歯が気になるので抜歯してほしい
・下顎大臼歯が舌側に傾斜しているので歯を磨きにくい
・下顎前歯の重なりが気になる
「こちらの患者さんは小児の頃にワイヤー矯正を勧められたのですが、ワイヤー矯正は嫌だということで断念されています。ですがインビザラインによるマウスピース矯正のことを聞き、まずは話をお聞きしたいと来院されました」とのことです。
歯科医師視点の症例解説
横田歯科医師の視点から見て、この症例を噛み砕いて行きますと以下の通りとのことです。
・犬歯は唇側定位により八重歯となっている
・犬歯関係の判断がつきにくい
・左側は2級
・アングルの分類だと第1大臼歯の近遠心的関係
・右側は2級
・エンドオンと言われるアングルの分類
「このクリンチェック上にレントゲンの画像はもちろんありません。別途、レントゲン撮影やセファロ分析を行うこともあります。 この方に関するプロファイルは、コンベックスタイプですね。で上顎が前突傾向にあり、骨格性の2級で姿勢でも2級。オーバージェットが8ミリ程度で、前歯部の水平的な被害がちょっと強くついてしまっているという症例になります」と横田先生。
これらの点を踏まえて、横田先生は次のクリンチェックにおける着眼点を紹介してくださいました。
横田歯科医師のクリンチェック時着眼点
横田歯科医師のクリンチェックは、大きく分けて以下のようなものになるそうです。
・犬歯の関係
・アングルの分類
・ビフォーアフター比較
・歯根比較
・下顎中切歯を基準
・患者さんとの願望の調和
・クリンチェックでの実現性チェック
犬歯の関係とアングルの分類
「クリンチェックに出す処方書の時点で、特に何も指示を出さず、戻ってきた計画に対して行うこと。 それは犬歯の関係の分類と、アングルの分類がどうなっているのか、と言うことです」
そう横田先生は仰った上で、
「骨格的に上顎前突の傾向がある2級症例で、全身の関係っていうのはどうなっているのかを見ていくことが多いです」と話されました。
ビフォーアフター比較と歯根比較
「その後ルーティーンとしてやることは、戻されたクリンチェックを動かします。このクリンチェックがそもそも妥当なのかどうかというところを評価していくのです」とのこと。
繰り返しクリンチェックを動かしながら、ビフォーとアフターを重ねて見てみるそうです。
この時紫色の部分が実際の歯列で、クリンチェックで動き終わった後が白色の歯列になります。
「ぱっと見た印象は前に出ているということと、側方にも広がっている印象を受けます」と横田先生は仰いました。
下顎中切歯を基準
「ここで治療の計画を考える時には基準と歯を設定することが重要になります」と横田先生。
大半の症例では、まず基準にする歯というのは下顎の中切歯となります。もちろん症例や患者さんの希望にもよるところはあるでしょう。
横田先生曰く、「この患者さんは下顎中切歯の歯槽骨の幅というのがかなり薄いですから、移動の制約を受けやすくなるでしょう」とのこと。
ですから、臼歯を基準にここまで動いてくれたらというものは理想論であって、その結果下顎の中切歯がとんでもないところに移動してるとなってしまえばこの計画は破綻してしまうのです。
「だからこそ移動の制約が1番著しい下顎の中切歯が、まずどうやって動いていくのかというのを見るのが良いと思います」と横田先生は仰いました。
クリンチェックでの実現性チェック方法
横田先生が行うクリンチェックの実現性をチェックする方法が次の点になります。
・歯牙移動評価
・歯根の傾斜
・歯槽骨
・生体的にこのインビザラインの実現性は可能か
「実際に生体の中で実現性が高い動きなのかというところは必ず見ておかないといけません」と横田先生。
そこで見るべきポイントというのが、戻されたクリンチェックの動きです。
「移動の制約が1番著しい下顎の中切歯がどのように動いていくかを見ることがよくやる1つの方法です。もう1つは患者さんが出っ歯感であったり、口元の突出感などを訴える時に願望との調和というのを、第一に考えてあげることでしょう」
考慮するのに忘れてはいけないことが、患者さんの希望です。この条例の場合は上顎の前歯にあたります。
「この症例ですと上顎前突の傾向があって、オーバージェットが強いので、上額の中切歯を基準にして行うと、どうやったら調和するかなっていう風な観点でも良いのかも知れません。」
横田歯科医師によるクリンチェックの実践
ここからはぜひ動画を観ながらご理解を深めて行ってほしいと思います。
「見ていただくとわかるように、下顎歯列弓の形はいびつです。狭窄もしています」と横田先生は続けて「弧を描いてるというよりかは、四角い形もしております。
ですので下顎の移動も複雑になりそうだということが想像されますよね。ですから今回は下顎の中切歯を基準にするというスタートラインに立ちます」と仰いました。
実際にビフォーアフターと比べてみますと、かなり前に出ているといった状態です。
3Dコントロール画面の中にあるテーブルの中の歯牙移動表はクリンチェックでは頻繁に使うツールです、と横田先生。
歯牙移動表による評価分析
「いろんな方向への移動量が明確な数字で出てきます。ここで下顎の歯間の部分を選択しますと下顎の中切歯、右下1番が、2.5ミリ唇側にフレア、左下の1番も、2.8ミリ移動しているとわかるので非常に便利です」
ここで表示される数字を元に、実現可能な歯牙移動が起こるかどうかを分析していくとのことです。
「日本人の歯肉の形態は薄い人がほとんどです。この症例の女性も含め、若い女性の口腔内の写真を見ると、歯肉の形態は薄い場合が多くあります。事前にCT撮影をしまして歯槽骨の幅も確認していますが、本当に薄いんですね」と横田先生。
先生は続けて、「2.5ミリ、2.8ミリのようなフレアの量というのは、矯正治療に伴うリセッションが強くなることを予想します。実際、2ミリを超えていく、フレアの治療の前後の症例を見ますと、歯肉退縮が起こってしまっている症例っていうのは比較的よく見かけます」
ですから横田先生は1つの基準として、下顎の中切歯を選び前方に出すのであれば、2ミリの移動を超えているのかどうかというのが大切になってくるとのことです。
「撮影しているCTをチェックしていると、症例によっては歯列弓の形自体が、今画面に見えている歯列弓の形態のようになっている患者というのがいてます。この場合は、大幅に、頬側に拡大したとて、そこに骨がないということになります」
歯牙移動させていく中で実現すればいいのですが、移動が難しいと想定されます。
このような場合、 骨の形態、そこに骨があるのかどうかっていうのは、下顎前歯だけではなく確認が必要となってくるのです。
まとめ
処方書なしの場合のクリンチェックが戻された時の対応の参考になりましたでしょうか。
インビザラインのためのクリンチェックを行う際の着目点が明確になったかと思います。
処方箋なしの場合だと、ここまで初回のクリンチェックを行う必要があると言うことです。
ご覧いただきました歯科医師の方の中には見た瞬間、この症例に関して、「抜歯だろう」と感じる方がいるかもしれません。
このようにあえて修正しないと、こう言ったクリンチェックが戻されることがあると留意しておく必要があると忘れないでもらえたら幸いです。
次の動画ではよりこの症例とは別のものを同じように解説していただきながら、横田先生のクリンチェックの様子を観ることができます。
是非ご参考ください。