こんな方におすすめ
数多くのクリンチェックを手掛ける先生が、「どこを見て」「何を考え」てクリンチェックを作成しているのか?
考えてみたことはないでしょうか。
今回の動画では、皆様に好評の、横田先生による公開クリンチェックをご覧いただきます。
横田先生のクリンチェックの作成過程をご覧になりながら、学べることは多いはずです。
クリンチェック作成に時間がかかったり、どのように治療計画をしたらよいか分からなかったりする先生方にお勧めの動画です。
動画内容
横田歯科医師による50代女性の矯正症例のクリンチェックがご覧いただけます!
左上4番のインプラントが悩ましい点ですが、埋入位置や上部構造の再製作を検討しつつ、他歯の遠心移動と咬合平面の改善を図ります。
インプラントは動かせないため、隣在歯とのスペースに注意しながら、上下顎の同時移動や、ジルコニア上部構造のIPRにより、効果的な歯牙移動を目指します。
顎間ゴムの使用は基本的に必須とし、50枚程度のアライナーで1年以内の治療完了を考える横田先生のクリンチェックをどうぞご覧ください。
横田歯科医師とは
スタディグループ『MeLoS』に講師として在籍していらっしゃいます。
岐阜県と京都府を拠点にインビザライン治療やインプラント治療を中心に診療しています。
「痛みの少ない治療で患者様に喜んでもらう」ことがモットー。
アライナー矯正には抜歯の必要性が出てくることもあるので、口腔外科での経験も活かしていけたらと話してくださいました。
また同じ『MeLoS』のメンバーである木川先生と、2021年株式会社ORestを設立。
木川先生は大阪府吹田市ご出身。
1991年4月3日生まれで、動画撮影時点で31歳と若手の方です。
youtubeチャンネルの運営もされているとのことなので。ぜひご覧ください。
横田歯科医師の見解
横田先生の見解をまとめると、以下のようになります。
1.右上7番は欠損
2. 左上4番にはインプラントが埋入済みで、これが矯正の際の悩ましい点
3. 前歯部のディープバイトと前方への突出傾向
4. インプラントは、位置によって他歯の移動の妨げにならないか、また上部構造の再製作が必要かを検討
5. 右側は上下顎とも遠心移動と歯列の配列改善が必要で左側は、インプラント周囲のスペースを考慮しながら遠心移動と平面の改善が必須
6. 上顎前歯の唇側傾斜と下顎前歯の舌側傾斜を同時に改善
7. 左上3番と4番インプラント体の距離を事前に測定し、最低1.5mmの距離を確保
8. インプラントは、変位歯に対するアンカーとして有効活用
上記8つがメインの見解になります。
主訴
患者様は50代女性になります。
主訴は以下のとおりです。
・前歯の叢生
・前歯の審美性とかみ合わせ
・抜歯による今後の自身の歯の健康維持
・インプラントが継続して使えるかどうか
この点を、横田先生がクリンチェックを通して改善していきますので、ぜひご覧ください。
横田先生のクリンチェック
では、ここから実際に横田先生が行ったクリンチェックでフォーカスした点を取り上げて解説していきます。
臼歯の咬合とカップリングを考える
この症例では、臼歯部の咬合とアンテリアカップリングを良好に保ちながら、左上のインプラントをどう扱っていくかが重要なポイントになります。
インプラントの埋入位置が他歯の移動を妨げないことを確認し、上下顎の咬合接触を考慮した平面の改善を行う必要があります。
左上4番のインプラントは動かせないため、隣在歯との距離を適切に保ちつつ、他歯の遠心移動と平面の改善を同時に進めていくことが求められるでしょう。
上部構造の再製作も高い確率で必要となるため、患者への十分な説明が欠かせません。
上下の咬合接触で4番は動かさない方向で考える
修正途中のクリンチェックを見ると、左上4番のインプラントは動かさず、他の歯の移動を妨げないようにする必要があります。
しかし、上下の咬合接触を改善するために平面を整えていくと、インプラント以外の歯は連動して動いていくのに対し、4番だけが動きません。
咬合接触が強くなりすぎたり、逆に弱くなったりするリスクがあるため、たとえインプラントの埋入位置が他歯の移動を妨げなかったとしても、上部構造の再製作はほぼ必須になると考えられるでしょう。
患者様にはインプラントを使える可能性はあるものの、上部構造の再製作が必要になることを事前に伝えておくことが重要になります。
インプラントの使える可能性はある
左上4番のインプラントが存在しますが、これを活用できる可能性はあります。
まず確認すべきは、インプラントの埋入位置が他の歯の移動を妨げないかどうかです。
もし問題なければ、インプラントを維持したまま治療を進められますが、咬合平面の改善などを行う際、インプラント自体は動かせないため、上部構造の再製作は高確率で必要になります。
インプラントの種類や状態を確認し、上部構造の再製作が可能かどうかを検討する必要があるでしょう。
患者様には、インプラントを使える可能性はあるものの、使えない場合もあること、また使えたとしても上部構造の再製作が必要になる可能性が高いことを伝えておくことが重要になります。
歯牙移動量はすべてにおいて予測実現性がある
歯牙移動量を確認すると、上顎左側で1.0mmの遠心移動が予定されていますが、特に問題ないレベルだと考えられます。
他の部位に関しても、歯根の移動やフレアの量を見るとまったく問題のない範囲です。
したがって、今回計画されている歯牙移動は、量的には予測実現性としては可能であると判断できます。
ただし、上顎前歯の唇側傾斜と下顎前歯の舌側傾斜をほぼ全ステージを使って同時に改善していくアプローチについては、その移動様式をより詳細に検討し、必要に応じて微調整を加える必要があるでしょう。
さらに効果的な歯牙移動が実現できるかもしれません。
いずれにせよ、移動量自体は問題なく達成できる見込みが高いです。
ジルコニアを削って前歯を動かす
左上4番のジルコニア上部構造は、IPRを0.5mm行うことで、前歯を動かすためのスペースを確保することができます。
上顎前歯の唇側傾斜と下顎前歯の舌側傾斜を改善するために、5番の遠心移動と前歯部の舌側傾斜を同時に進行させる必要がありますが、このIPRによって作られたスペースを活用することで、スムーズな歯の移動が可能になるのです。
ジルコニアの削合は0.5mmから始め、状況に応じて調整しながら進めていくことが重要であり、このアプローチによってインプラント上部構造を活かしつつ、前歯部の審美性と機能性を向上させることができるでしょう。
ですが、ここで横田先生はIPRの代用として切削をお考えのようです。
指示書にコメントをするポイント
実際に3Dコントロールで操作することは可能ですが、エンジニアに戻しクリンチェックを再考する場合には、コメントで記載すると良いでしょう。
ここで横田先生は、以下の内容をコメントされました。
・上顎臼歯の挺出、上顎前歯の圧下は同時に行ってください
・左上4はインプラントで上部構造の切削でiprを代用します
自身で3Dコントロールを操作するにしても、コメントに記載しておくと安心です。
ぜひ真似をしてみてほしい点です。
顎間ゴムに関しては必ずかけている
横田先生は、「基本的には必ず必須ではない顎間ゴムに関して、必ずかけるようにしてきると仰いましたが、この点に関しては各々の先生の判断で良いかと思います」と話されました。
顎間ゴムの使用に関して、横田先生の判断と患者のコンプライアンスを考慮して基本的に顎間ゴムは必須となっているとのこと。
本症例でも必要に応じてゴムの使用を検討することになると思います。
ただし、ゴムの強さや装着時間などは、治療の難易度や患者の協力度合いを見ながら、トータルで判断していくことが重要だと考えます。
横田先生は、患者様に対して「ゴムは最初からかけるのが当院の治療スタイルです」と伝えることで、顎間ゴムの必要性を理解してもらい、装着へのモチベーションを高めるようにしているとのことでした。
まとめ
横田先生はインプラントが入っている場合、インビザラインを行う際はそのままインプラントが使えるのかどうかという点を考える必要があると話されました。
ORTC onlineでは様々な症例や議題をテーマに講義を行なっているので、ぜひご参考にしてくださいね。