こんな方におすすめ

そもそも「健康的な歯周組織とは」から再確認する機会は多くはないでしょう。
ここでは関野歯科医師に歯周炎の定義、歯肉炎から歯周炎への移行の解説、そして矯正型の外傷について詳しく解説してもらいました。
 
日頃から目にすることが多いであろう、歯周炎や歯肉炎に関しての基礎について、今一度確認ができる内容になっています。
そして矯正治療における歯周組織に対する影響力について考察いただいたのでぜひ復習や振り返りにご視聴くださいませ。
 

動画の紹介

●矯正治療に携わる先生
●歯周組織周りの基礎を確認したい先生
●矯正型外傷について知見を広めたい先生

動画内容

 矯正治療が歯周組織に影響を及ぼすことをご存知だと思います。
その中でも、具体的な影響を患者さんそれぞれに対して的確に判断できる歯科医師や歯科衛生士の方は少ないのではないでしょうか。


今回は関野歯科医師をお招きして、歯周組織に矯正治療が及ぼす影響をテーマに講義を行っていただきました。


第1回目の本講義では、 歯肉炎と歯周炎に関する知見と矯正型外傷の2つにスポットを当てて解説してくださいます。

動画の方が詳しく解説しておりますので、ぜひ並行して動画の視聴をおすすめします。

関野歯科医師について

関野愉歯科医師は、日本歯科大学生命歯学部歯周病学講座にて准教授として活躍されております。

健康な歯周組織とは?

健康な歯周組織の構造はどのような状態かというとしてるかというと、

・プロービングアタッチメントロスが少ない 
・骨吸収がない
・プローディングディクスは3ミリ以下
・ポケットの部分を除いて3ミリ以下
・全顎の10%を超える部分から出血なし
 

この5つは重要な要素となります。
 

歯根の上にエナメル質がありセメント質が多いっている状態で、この境をセメントエナメル境と言います。
 主成分はコラーゲン繊維です。

 コラーゲン繊維が歯肉の結合組織から走行し、セメント質に入り込んでいるというところを付着と言いますが、これがよく聞く アタッチメントということになります。

「歯肉と結合組織の表面は、上皮で覆われ、歯肉上皮は核化しています」と関野先生。

歯肉上皮は、触れただけでは痛みがわからない程度に強度があります。 

体の中で唯一の硬組織

歯周組織の特徴として、体内組織から唯一突き出ている部分は硬組織である歯しか存在しません

ですから、接合上皮という構造をしています。 

この接合上皮というのは、 いわゆるシールのように歯と接着している構造をしています。 


「先ほどもお伝えしていますが、あくまでシールや吸盤のようにペタっと貼り付いているような構造をイメージしてください」と関野先生。

健康な歯周組織なら、体内に菌が入らない

健康な歯周組織であれば、前述した生都合上日による付着があることで、感染しても細菌は、体内に入っていくことはありません

歯肉炎と歯周炎の違い 

「ここでの症例定義も決まっています。アタッチメントロスが起こるかどうか、といった状況ですね」と関野先生。歯周炎は、炎症があり、アタッチメントロスがあることです。
歯肉炎では、この症状がありません

レントゲンのように写真上で見ると、骨吸収があるという状況が歯肉炎との違いだと明確になります。

「炎症症状は見られますが、歯肉炎に加えてレントゲンで見ると骨吸収が見られます」と関野先生は仰います。

歯肉炎であれば歯石を取ったり、 ブラッシングを強化したりするようなクリーニングを行うことで健康な歯周組織に改善します。 
しかし歯周炎は違うのです。
重症な歯肉炎に移行した場合、歯周炎と呼ばれそう簡単には改善しない傾向があります。

ホープレス歯というように、歯根の先まで骨吸収が進んでいる状況もあるとのことです。

歯肉炎から歯周炎への移行

歯肉炎から歯周炎に移行する原因は歯肉炎が バイオフィルム、プラークによってバイオフィルム中の細菌構成と構造のバランスが悪くなっていく事で起こります。

細菌が悪菌に変わっていくと病原性が高まって、歯肉炎から歯周炎に移行するということが考えられてます。 
 

「プラークにより毒素が排出され炎症反応が起こるのですが、特徴はバイオフィルムから1、2ミリの幅の範囲で炎症ICTが波及します。そこに健康な結合組織と骨があるという形になっています」とのこと。

プラークに対して1、2mm幅の炎症が波及することに伴い、骨吸収が起こると考えてください」と続けて関野先生は話しました。

【症例】歯周組織へのアプローチ

「隣接面の模式図を参考に見て行きましょう」と関野先生。

骨があり、歯根と歯の幅が1mmだとしましょう。
この場合、炎症はどう波及するでしょうか。 
例えば、プラークが歯肉に付着しこのプラークから2ミリ幅で炎症が波及します。

とすると炎症が波及するでしょうし、歯根と歯の間が1mmだとしたら、歯槽骨の吸収が起こります。
 
関野先生の対応は次のとおりです。


レントゲンで見るとこのような形になります。こちらにプラークが付着し、こちらはそんなに歯肉炎にプラークがついてない状態です。垂直性となると、 こちらは骨吸収は起こらず、こちらでは骨吸収が転んで、垂直性になるという理論になります」とのことでした。

歯周炎のエンドポイントは?

歯周炎におけるエンドポイントは、歯の喪失です。

歯が完全に喪失するまで、どのくらいの時間があるのか

その点こそ、本当のエンドポイントです。
ですが現状の視界が苦では、歯の内部まで見るにしても研究自体が難しいので、スロゲートと言われているものが現在の歯科業界ではエンドポイントとされています。

歯周組織と矯正外傷

ここまで歯周組織とその炎症について解説してくださいました。
では矯正という視点から見たらどうでしょう。 


ここでは矯正型外傷という考え方をします」と関野先生。

矯正は歯牙移動を行いますが、歯牙移動する段階で歯根膜に炎症が起こったり、骨吸収が起こったりすることがあります。 

この場合は例外なく“外傷”と考えます。
 理論上は矯正型の外傷不可は1方向に向かって加わります。


対比するものとして挙げられることは、咬合性による外傷です。

「この場合はジグリング型の外傷と言い、一方向じゃなくて、強絶的に揺さぶられるような外傷が加わる状態を示します」とのこと。
 

矯正の場合は、理論上害からの外傷と考えます。

 歯の一面に圧迫側、反対の面に緊張側が生じることで、 歯牙移動している過程では、歯根膜の繊維の編成や血栓、内出血といった炎症所見が見られます。」と関野先生。


ですが、矯正による歯牙移動が完了すると正常化します。 矯正による移動負荷が取り除かれて落ち着いたら、炎症は治まります。

まとめ

ここまで関野先生にお話しいただいた内容は、歯肉炎と歯周病との違いとその移行過程、矯正による歯周組織に対する外傷と言った内容でした。


歯周病というのは炎症を起こしているのはあくまで歯肉の結合組織です。
それに伴って骨吸収やアタッチメントロス、歯周ポケットの形成(上皮の埋入)が生じるとのことでした。


歯周病が進行すると、歯が喪失するという理由はここにあるのです。
 

矯正型外傷の場合、健康な中歯根と歯肉との軟組織の場合であれば一時的に組織喧嘩が発生します。
ですが矯正治療が完了すればその位置で安定して、炎症所見は治まるのです。


この次の動画では、『果たして矯正治療は歯周炎とか歯肉炎がある場合に歯周組織の健康状態にどう影響するのか』について言及してまいります。
引き続き関野歯科医師が内容を掘り下げて解説して下さるので必見です。 ぜひご視聴くださいね。

 

担当講師

関野愉

関野愉 先生

准教授
日本歯科大学生命歯学部歯周病学講座

1991年に日本歯科大学新潟歯学部(現新潟生命歯学部)を卒業後、奥羽大学歯学部歯科保存学第1講座にて岡本浩教授に師事。エビデンスに基づいた歯周病の臨床を学ぶ。その後1999年よりスウェーデン、イエテボリ大学のJan Lindhe教授の元に留学。Per Ramberg准教授の指導のもと、プラーク形成過程や科学的プラークコントロールをテーマに研究を行い、途中アメリカ、フォーサイス研究所のSigmund Socransky教授の元に短期留学。2005年、イエテボリ大学にてphDを取得した。現在は日本歯科大学生命歯学部歯周病学講座にて准教授を務め、疫学研究をはじめとする臨床研究を主なテーマとして研究活動を行ない、その傍ら講演会や書籍執筆も多数おこなっている。

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