こんな方におすすめ
根分岐部病変がある歯の保存基準に悩んでいる歯科医師
垂直性骨吸収の残存がリスクになるかを知りたい歯科衛生士
科学的根拠に基づいたSPTの判断基準を学びたい歯科医師
動画の紹介
本動画では、日本歯科大学歯周療法学講座の関野愉先生が、臨床で特に判断に迷う「リスク部位」の予後予測について、膨大なエビデンスを基に解説しています。
全身的なリスク因子である喫煙や糖尿病だけでなく、個々の歯における解剖学的な問題が、メインテナンス(SPT)期においてどの程度「負の要因」となるのかを解き明かします。
単に病変があるから抜歯・外科処置と判断するのではなく、プラークコントロールや炎症の有無、骨の質(皮質骨の連続性)といった「健康の指標」が伴っていれば、保存的なアプローチでも十分に良好な予後が得られることを示唆しており、日常の診断力を高める必見の内容です。
動画内容
度数(1度〜3度)による喪失リスクの差異
根分岐部病変は解剖学的に清掃が困難なため、歯周治療において最も厄介な部位の一つです。
動画内の長期観察データによると、1度の分岐部病変であれば、適切なSPT下において歯の喪失リスクは健康な歯と有意な差はありません。
しかし、2度・3度となるとリスクは3倍〜7倍近くまで跳ね上がります。
特に動的治療中に抜歯されるリスクが高まるため、治療計画の初期段階での正確な判定が重要となります。
垂直的サブクラス分類による精密な予後予測
同じ2度の分岐部病変であっても、垂直的な骨吸収の程度(サブクラス)によって生存率は劇的に変わります。
根の長さの1/3未満の吸収(サブクラスA)であれば、10年生存率は約91%と非常に良好です。
対して、2/3を超える吸収(サブクラスC)では生存率が約23%まで低下します。
このように「度数」だけでなく「垂直的な深さ」を評価に組み込むことで、
再生療法や根分割(ヘミセクション等)の適応、あるいは抜歯のタイミングをより精密に決定できるようになります。
垂直性骨吸収は必ずしも「進行」を意味しない
レントゲン上で楔状に見える垂直性骨吸収は、
未治療で放置された場合には歯の喪失リスクを最大で約70%(重度の場合)まで高めます。
しかし、適切な歯周基本治療が行われ、炎症がコントロールされた状態であれば、
水平性骨吸収部位と比較しても再発や進行の頻度は変わらないという研究結果もあります。
これは、骨の形態そのものよりも、その部位が「清潔に保たれているか」が重要であることを示しています。
プラークコントロールと「歯槽硬線(白線)」の意義
関野先生自らのリサーチ結果によれば、垂直性骨吸収の有無よりも、
プラーク付着の有無の方が予後に5倍以上の影響を与えることが判明しました。
また、レントゲン上で骨の縁に「歯槽硬線(硬線、Lamina dura)」と呼ばれる
白い線が確認できる場合、それは組織が安定している強力なサインとなります。
結論として、動的治療後に垂直性骨吸収が残存したとしても、プロビング深さが浅く、
BOPがなく、良好なプラークコントロールが維持されていれば、必ずしも外科的切除や再生療法を急ぐ必要はありません。
患者様個別のリスクを見極め、伴走するSPTこそが最大の武器となります。