歯科ボンディング完全ガイド|種類・治療方法・コストを徹底解説

歯科知識

審美性や機能性を追求する現代の歯科治療において、ボンディングは欠かせない技術の1つです。特に、MI(ミニマルインターベンション)の理念とともに注目され、多くの症例で活用されています。
すでに開業されている歯科医師やこれから開業を目指す先生に向けて、ボンディングの種類や臨床での具体的な活用法、経営面でのコスト管理について解説します。

ボンディングとは

ボンディングとは、歯科用接着剤(主にレジン系)を用いて歯面と修復材料を強固に接着させる治療方法のことです。コンポジットレジンによる歯の修復やラミネートベニア装着の際に頻繁に使用されます。歯質を最小限に削ることで、患者の負担を軽減しつつ審美的にも機能的にも優れた修復を実現できるため、現代の歯科治療で広く支持されています。さらに、接着技術の進化により、耐久性や術後の快適性も向上しています。

特徴とメリット

ボンディングを使用することによって

・歯を削る量が少ない治療ができる(MI治療)

歯を極力削らず、健全な歯質を最大限保存できます。

・審美性に優れる(CR修復)

歯の色に合わせた修復ができるため、自然な仕上がりになります。

・治療時間が短い

1回の通院で治療が完了するケースが多いです。

・術後の不快感や知覚過敏が少ない

最新の接着技術で術後のトラブルが軽減されています。

ボンディングの歴史

ボンディング技術は1950年代から研究開発が始まり、初期にはエナメル質への接着が主流でした。当初は接着力が低く、臨床応用には限界がありましたが、その後の材料科学の発展により接着性能は大幅に向上。特に1990年代以降、象牙質への接着性が改善され、用途も広がりました。
2000年代以降は、ユニバーサル型ボンディング剤という新しいタイプも登場しました。ユニバーサル型は、エッチングの有無を自由に選べる柔軟性を備えており、一つの製品で多様な症例に対応できることから、現代の歯科治療で非常に重宝されている存在です。これにより、臨床の現場での材料管理が容易になり、歯科医院の経営面でも効率化が進みました。
こうしたボンディング技術の長年の進化を通じて、現代では歯を最小限に削る治療(MI治療)が可能となり、患者の負担軽減と審美性の向上を同時に実現しています。現在もボンディング技術は日々進化を続けており、歯科治療の重要な柱として位置づけられています。

ボンディング剤の種類と用途

現在使用されているボンディング剤は主に3種類に分類され、それぞれ特性が異なります。

①3ステップ

3ステップ型のボンディング剤は、「エッチング(酸処理)」「プライマー(下地処理)」「ボンディング剤(接着剤の塗布)」の3つの工程を別々に行う方法です。一般的に「エッチ&リンス型」とも呼ばれています。

この方法では、まずリン酸などの酸を用いてエナメル質や象牙質を酸処理し、水洗を行います(エッチング)。次に、象牙質にプライマーを塗布して下地処理を行い、最後にボンディング剤を塗布し、光で硬化させます。

3ステップ型は、エナメル質・象牙質への接着強度が非常に高く、特に前歯部の審美修復や精密修復など、確実で強固な接着が求められる場面で有利です。ただし、工程が多く手間がかかるため、操作には熟練が求められます。

代表的製品例:

スコッチボンドマルチパーパス(3M ESPE)

オプチボンドFL(カー)

勤めていた際に、使用する頻度は少なかったで、工程などを覚えるのは大変でした。いろいろな歯科医院で勤務していますが、3ステップのボンディングを使用している歯科医院は少なかったです。

②2ステップ

2ステップ型のボンディング剤は、工程を2つに簡略化したタイプで、以下の2種類があります。
 

【酸処理+プライマー】

酸処理とプライマー処理を1つの工程で行い、その後にボンディング剤を塗布するタイプです。酸処理とプライマーの工程が同時に行われるため操作性が高く、診療効率も向上します。象牙質に対する接着性が良好で、術後の知覚過敏症が起きにくい特徴があります。
代表的製品例:

クリアフィルメガボンド2(クラレノリタケ)

オプチボンドXTR(カー)
 

【プライマー+ボンディング】

最初にエッチング(水洗を伴う)を行い、その後にプライマーとボンディング剤を一度に塗布する方法です。エナメル質への接着性が良く、適度な強度と操作性を兼ね備えています。
代表的製品例(エッチ&リンス簡略型):

シングルボンドプラス(3M)
デントクラフトDボンド(YOSHIDA)
 

2ステップ型はバランスの良い接着性能を持ち、一般臨床において広く使用されています。臨床の中でも、脱離しやすそうな部分のCRや歯ぎしりをする患者に使用している印象が強くあります。
 

③ 1ステップ(オールインワン型・ユニバーサル型)

1ステップ型のボンディング剤は、酸処理・プライマー・ボンディング剤のすべてが1つにまとめられ、1回の塗布で完了するタイプです。「オールインワン型」または「ユニバーサル型」とも呼ばれます。

操作性が非常に高く、診療時間の短縮と効率化に大きく貢献します。一方、3ステップ型と比較すると接着強度や耐久性がやや低下する傾向があるため、症例選択が重要です。しかし、近年では接着性能が大幅に改善されており、多くの症例で信頼して使用されています。

ユニバーサル型は特にエッチングを併用することもでき、症例に応じて接着方法を自由に選べる柔軟性が特徴です。審美性が求められるケースから一般的な修復まで、幅広い治療で活躍しています。

代表的製品例:

スコッチボンド ユニバーサル(3M ESPE)

G-プレミオボンド(GC)

1ステップは、勤務先のすべての歯科医院で使用しされていました。工程が少なく治療時間や準備物も減るため、無駄がないなと感じます。スタッフからすると「簡単」で助かる代物です。

ボンディングの治療方法と具体的な手順

ボンディング治療の一般的な流れを詳しく説明します。

診査・診断

適応症例の確認と患者の希望や期待を十分に把握します。視診・触診、レントゲン撮影などを行い、正確な診断をします。

前処置

歯面を丁寧にクリーニングし、必要に応じて微細な表面調整を行います。清潔な状態を保つことが接着成功の鍵です。

酸処理(エッチング)

2,3ステップのボンディングの場合、適切な濃度の酸を塗布し、歯質を処理後に塗布します。この工程が、接着性能に大きく影響するので注意は必要です。

ボンディング剤塗布・光硬化

ボンディング剤を薄く均一に塗布し、光照射を行い完全に硬化させます。照射器の性能や照射時間にも注意が必要です。

コンポジットレジン充填・形態修正

患者の咬合状況や審美的要求に応じてレジンを充填し、理想的な形態を形成します。充填時には気泡が入らないよう細心の注意を払います。

最終研磨・仕上げ

表面を滑らかに仕上げるため、丁寧に研磨を行います。適切な研磨で汚れの付着を防ぎ、治療効果の持続性を高めます。

ボンディングのコストと材料費用

ボンディング剤のコストは種類やブランドによって異なります。

・3ステップ:材料単価は安いですが、3つの薬剤が必要となり、工程が多いです。
・2ステップ:コスト・操作性のバランスが良いです。
・1ステップ:材料単価は3ステップや2ステップに比べると高いですが、時短になり汎用性が高いです。

1回の材料費用を比較していくと
・3ステップ:100円前後
・2ステップ:150円前後
・1ステップ:200円前後
となります。(メーカーによって、材料価格が変わりますので、ご了承ください。)

自由診療の場合、治療に使用する材料のメリットを患者に説明し、価格設定に反映することが可能となります。

コスト面も経営する上で考えていかないといけない部分です。CR治療は、歯科医院でも回数の多い治療になってきます。より良い材料も大事かもしれませんが、CRとボンディングの相性が良いものを選んでいくと良いかもしれません。

保険診療と自由診療の活用法
 

ボンディング治療は保険診療でも適用されますが、高い審美性や耐久性を求める場合には自由診療が推奨されます。

  • 保険診療:虫歯治療や簡易修復(約800円〜3,000円/歯)
  • 自由診療:審美性を重視する症例(約5,000円〜20,000円/歯)

患者のニーズに応じた提案を行うことで、医院経営の収益向上に繋がります。
「費用対効果」「審美性」「長期的にみた耐久性」などを考慮して、材料も選択していくべきです。

ボンディング導入時の注意点

ボンディングを導入する際は、以下の点に注意し選択をしていきましょう。

 

診療方針に合った製品を選択


歯科医院ごとに診療スタイルや主な症例、患者層が異なるため、自院の診療方針に最適なボンディング剤を選ぶことが重要になります。

審美性を重視した前歯部修復が多い場合
→エナメル質への接着性に優れた「3ステップ」

一般診療(奥歯の修復やう蝕処置)が中心の場合
→象牙質に対する接着力が安定しており、操作性も高い「2ステップ」

効率を重視し、多様な症例に対応したい場合
→症例ごとに柔軟な使い分けが可能な「1ステップ」

このように、医院が目指す診療レベルやニーズをよく分析し、製品特性を十分理解した上で選択を行うことが重要です。

 

スタッフ教育の徹底と手順の標準化

ボンディング治療の成功は、材料や技術だけでなくスタッフ全員の理解度や技術習熟度に左右されます。

・研修やメーカー主催のセミナーにスタッフを積極的に参加させる
製品ごとの特性、使用方法、トラブル時の対処法などを習得しておくと良いでしょう。

・手順をマニュアル化し院内共有
特に「エッチング時間」「水洗時間」「ボンディング剤の塗布方法」「光照射の距離と時間」などを統一し、作業ミスを防ぐための手段です。

・定期的な院内勉強会の開催
技術の向上、トラブル事例の共有など、スタッフ間の認識を揃え、治療の質を一定に保つことができます。
 

在庫と消費期限の厳格な管理

ボンディング剤は消耗品であり、保管方法や消費期限を守らなければ接着強度が著しく低下し、トラブルにつながります。期限内に使い切れるように仕組みを整えておきましょう。

・消費期限を一覧表にして管理
定期的にスタッフが確認し、期限が近い製品から優先的に使用します。在庫の管理棚や冷蔵庫の中など、分かりやすいように整理整頓しておくべきです。

・適切な保管環境を維持
ボンディング剤は直射日光や高温多湿に弱いため、冷暗所などメーカー推奨の条件下で保管します。チェアーサイドの棚に入れていて、ボンディング剤の液が変色したり、液の性質が変わっていたりしないような管理方法にします。

・定期的な棚卸し・発注計画の徹底
不要な在庫を抱え込まず、常に新鮮な状態で使用できるよう、注文や消費の管理を行いましょう。
 

まとめ

ボンディングは幅広い治療に応用できる重要な技術です。適切な材料選択、保険診療と自由診療のバランス活用、スタッフへの継続的な教育を行い、患者満足度を高めつつ安定した医院経営を目指しましょう。
歯科衛生士として、定期的な勉強会など最新の情報を取り入れる環境があることはとてもありがたいです。自分で、情報収集ができない小なのともあり、セミナー情報の提供やセミナー参加への補助などがあると、より向上心高く仕事ができると思います。

歯科衛生士ライター:原田


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