歯科衛生士の賃金引き上げと医院経営戦略

歯科知識, 歯科衛生士

歯科衛生士の確保は全国的に厳しさを増し、採用・定着のカギとして「賃金」の重要性がこれまで以上に高まっています。若手衛生士を中心に医院選びの基準が給与条件へと移行するなか、単純に給与だけを引き上げる競争は経営を圧迫し、長期的な安定にはつながりません。ここでは賃金引き上げの現状と背景を整理し、医院の採用力を高めながら経営を持続させるための戦略を提示します。

歯科衛生士を取り巻く現状と賃金の背景

歯科衛生士は慢性的な人材不足が続いており、求人倍率は依然として高水準です。

新卒から経験者まで幅広く引く手あまたの状況が、賃金上昇や待遇改善の圧力となっています。

ここでは、市場価値が高まる背景と地域別の給与相場を整理します。
 

歯科衛生士の市場価値が高まる理由

歯科衛生士の有資格者数は増加傾向が鈍化し、人口減少により就業者数の伸びも頭打ちとなっています。

一方で、高齢化に伴う予防歯科やメンテナンス需要は増大。結果として求人倍率は3倍を超える水準(賃金構造基本統計調査)となり、若手衛生士は給与・条件を比較して就職先を選ぶ傾向が強まっています。

 

全国・地域別の給与相場と実例

全国平均では歯科衛生士の月給は※約29万6,200円となっております。しかし東京や大阪など都市部は30万円超も珍しくなく、地方でも地域差が見られます。

新卒給与も年々上昇しており、看護師と比較しても「予防医療の専門職」として安定した水準を維持しています。

医院側は「自院の給与が相場に対してどの位置にあるか」を定期的に把握することが不可欠です。
 

政府統計ポータルサイト参照

https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003426315

単純な賃金競争の限界と差別化戦略

賃金を引き上げれば一時的に採用は有利になりますが、他院も同様に上げれば優位性は失われます。

給与だけで人材を確保する戦略には限界があり、「働きがい」や「学び」など多面的な魅力づくりが重要です。
 

給与以外で歯科衛生士に選ばれる医院づくり

キャリア支援(認定資格の取得補助、専門分野の育成)、OJTや院内研修、勉強会などの教育制度がある医院は、

若手から「ここで成長できる」という評価を受けやすくなります。

また時短勤務やシフト柔軟化、オンライン研修の導入など、ライフステージに合わせた働き方の提案も効果的です。
 

賃金+αの総合的な人材戦略

給与体系に加えて「やりがい」「評価」「学び」を組み合わせることで、長期定着率が向上します。

例えば成果連動型の給与制度や役割給を導入し、貢献度に応じて評価する仕組みはモチベーション維持に有効です。

相場を意識しつつも“プラス1”の魅力を提供することが、他院との差別化につながります。
 

経営視点での賃金引き上げの考え方

給与アップは人材確保の有効手段ですが、医院収益とのバランスを欠くと経営を圧迫します。

持続可能な賃金引き上げには、人件費率や診療単価の見直しを伴う計画が必要です。
 

人件費率と医院収益のバランス

一般的に歯科医院の人件費率は20〜25%前後が目安とされます。

賃金を上げる際には診療単価や稼働効率の改善とセットで検討し、シミュレーションを行うことで無理のない計画が立てられます。

(※具体的な算出方法や改善事例はORTC経営セミナーで紹介)
 

スタッフに「評価されている」と感じてもらえる給与設計

定期昇給制度や役割給は、スタッフに安心感と成長意欲を与えます。

年齢・勤続年数別の賃金目安(賃金構造基本統計調査)を参考に、自院の給与テーブルを見直すことで、

「評価されている」という実感をスタッフに届けられます。
 

賃金引き上げの実務ステップ

最後に、実際に給与を引き上げるためのプロセスを整理します。

「現状把握→計画→導入・運用」という3段階で進めることで、経営負担を抑えつつ着実に改善できます。
 

現状給与の把握

まずは自院の給与明細を集計し、地域別・職位別の相場と比較します。

東京・札幌・群馬・宮城などエリアごとの差を把握することで、改善余地や優先度が明確になります。
 

引き上げ計画の策定

目標賃金と人件費率を勘案し、複数の昇給シナリオを作成します。

キャリアパスに連動した昇給プランを設定することで、スタッフに長期的なビジョンを示すことができます。

教育制度や柔軟な働き方と組み合わせれば、費用対効果も高まります。
 

導入・運用と効果測定

引き上げ後は定着率や採用応募数の変化をモニタリングし、定期評価と給与改定を連動させます。

ORTCセミナーや経営事例を参考に改善サイクルを回すことで、持続可能な賃金戦略が実現します。

 

歯科衛生士が採用出来て・辞めずに成長! 人事評価事例大公開セミナー

 

 

 

 

Q&A

Q1:歯科衛生士の賃金を引き上げるべき理由は何ですか?

A1:全国的に歯科衛生士の有資格者数は頭打ちで、求人倍率は高止まりしています。若手を中心に給与や働き方を比較して医院を選ぶ傾向が強く、賃金引き上げは優秀な人材の採用・定着に直結します。単なる待遇改善ではなく、キャリア支援や教育制度と組み合わせることでより効果的です。

Q2:地域別の給与相場はどのくらいですか?

A2:令和5年の賃金構造基本統計調査によれば、歯科衛生士の全国平均の月収(所定内給与額・月額)はおおよそ 29万6,200円 と報じられています。

政府統計ポータルサイト参照:賃金構造基本統計調査1 一般_職種(小分類)DB | 統計表・グラフ表示 | 政府統計の総合窓口

この水準から概算すると、税・社会保険料などを控除した手取り額はおよそ 20万〜22万円程度 に落ち着くケースが多いと想定されます。

歯科衛生士の給与は、地域(都市部・地方)や人材需給のバランス、診療所数などによって差があります。

実際、ジョブメドレー公式サイトによると以下のような月収ランキングが出ております。



厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」より作成されたジョブメドレー独自の調査

 

https://job-medley.com/tips/detail/30398/

歯科衛生士の給料は安い?平均年収・月収・賞与を都道府県別、職場別に解説 より引用

Q3:賃金を単純に上げるだけで定着率は上がりますか?

A3:単純な賃金競争だけでは限界があります。歯科衛生士は給与だけでなく、キャリア支援、教育制度なども重視しています。

Q4:賃金引き上げを経営的にどう位置づければよいですか?

A4:賃金引き上げはコストですが、人材確保と定着による診療効率や売上向上の投資と考えることが重要です。人件費率の目安を意識し、診療単価や稼働効率とのバランスを取りながら段階的に実施すると無理のない運用が可能です。

Q5:給与設計で「スタッフに評価されている」と感じてもらうにはどうすればよいですか?

A5:定期昇給や成果連動型給与、役割給の導入などが有効です。また、地域別の給与相場や職位別の目安を踏まえたうえで、スタッフ一人ひとりに透明性のある給与体系を提示すると安心感が生まれます。教育制度やキャリアパスと連動させると、モチベーション向上にもつながります。

まとめ

歯科衛生士の給与は今後も上昇傾向が続くと予想されます。

「相場に見合った賃金」+「成長機会」+「ワークライフバランスを大切にした働き方」をバランス良く設計することで、

採用力と定着率を両立した医院経営が可能になります。


歯科衛生士ライター 西
 


【参考URL】構成作成・記事執筆で参考にしたURLを記載する

 

・「ジョブメドレー歯科衛生士の給料は安い?平均年収・月収・賞与を都道府県別、職場別に解説」

 

・厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」より作成

 

https://job-medley.com/tips/detail/30398/

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