
「これって保険で算定できたっけ?」「初診料、もう一回取れる?」
日々の診療で何気なく耳にするこのような会話。
歯科医院の現場では、歯科保険点数の理解が欠かせません。
特にスケーリングやブラッシング指導、再評価など、歯科衛生士が直接関わる場面が多い処置については、正しい保険算定の知識が患者さんのためにも、医院経営のためにも重要です。
この記事では、歯科衛生士としての実体験も交えながら、現場でよく検索されるワードをもとに「歯科保険点数」について実践的に解説します。
1.スケーリング(歯石除去)の保険点数
スケーリングは歯周基本治療の中核をなす処置です。保険上は「歯石除去」と算定され、「初回」に関しては歯周基本検査(初診時)の算定が必要です。
・歯石除去(スケーリング):40点/顎
※1顎ずつ算定可能。上下で2回に分けて処置することも多い。
算定の前提
スケーリングの算定には、歯周基本検査(初回)の実施が必要であり、カルテ・レセプトにも明記する必要があります。
現場経験より
「前回来院から3ヶ月以上空いていたから、また算定できる?」と疑問に思ったことがあります。実際には、3ヶ月以上空いた場合は再評価や再度の検査が必要なケースもあり、保険請求上も注意が必要でした。
2.ブラッシング指導と再評価の落とし穴
歯科衛生士の王道:歯科衛生実地指導(ブラッシング指導)
患者さんへのTBI(トゥースブラッシングインストラクション)は、「歯科衛生実地指導」として保険算定可能です。
・歯科衛生士実地指導:80点(同一患者)
・月1回まで算定可能
よくあるミス
「毎回TBIしているのに、算定できない」
これは、月1回までという制限を見逃しているためです。
TBIの内容や使用教材(染め出し剤など)をカルテに明記することで、指導の実施が明確になり、請求もスムーズになります。
現場の工夫
私は、毎回患者さんを見る前にカルテを遡って確認をしていました。そうすることで、算定漏れがないか、算定が重複していないかを見直すことができます。
3.初診料と再診料のポイント整理
初診料(歯科):267点(令和6年時点)
・初診料の算定には6ヶ月ルールがあります。
前回来院から6ヶ月以上空いた場合は初診料が再度算定可能です。
再診料:58点
再診料は「継続的な治療」を前提としているため、処置や投薬がない場合は算定不可となることもあります。
よくある現場の疑問
「定期検診だけの場合は再診料取れるの?」
答えは「YES」。ただし、スケーリングや検査、指導が伴うことが前提です。
4.再評価(歯周基本治療後)の算定
歯周基本治療を行なった後には、再評価が必要です。再評価は「検査点数」であり、歯周病治療計画の見直しや次の処置(SRPなど)につなげる役割があります。
※SRPの算定前には必須
SRP(ルートプレーニング)の算定
※算定は1日最大4歯まで、6回制限あり
同一部位における期間制限
・期間の目安:同一部位においてSRPをサイド実施する際、歯周組織の回復や再感染予防の観点から、過度な再加入を避けるためのルールです。
現場経験より
実際にSRPは術者も時間かかりますが、そのぶんの保険点数もきちんと確保されています。再評価を省いてしまうと、そもそも算定できないので注意です。
5.クリニック全体で保険点数を意識するには!?

歯科衛生士が率先して保険点数を把握するメリット
・経営視点:算定漏れを防ぎ、適正な収益を確保
・患者視点:説明責任を果たし、信頼感アップ!
・スタッフ関連:算定時期を共有してミスを減らす
実際の体験
レセプトの返戻をスタッフ全員で共有し、保険点数やカルテに対しての意識が高まり、ミスを減らすことができました。
6.よく検索される「点数表」や「令和改定」のチェックも忘れずに
歯科衛生士・歯科医師がよく検索するのが「歯科 保険点数 令和6年 改定」や「スケーリング 点数表」「初診料 条件」などです。
厚生労働省の告示や社保支払基金、レセプトオンラインの情報をこまめにチェックして、最新版にアップデートしておくことが大切です。
7.訪問歯科での保険点数と歯科衛生士の役割
近年、訪問歯科の需要が高まる中で、歯科衛生士の現場でも訪問先での保険点数の知識が求められるようになってきました。とくに施設や在宅での口腔ケア、TBI、SPTなど、外来とは異なるルールや注意点が多く存在します。
訪問歯科衛生指導料(20分以上、月4回まで)
1人:362点 2人以上9人以下:326点 左記以外:295点
在宅療養中の患者におけるスケーリング
在宅でも歯石除去やTBIを行う場合は、外来と同様にスケーリング(40点/顎)やTBI(80点)が算定されます。ただし、訪問診療料や指導料と一緒に請求する際は、一部制限があるため注意が必要です。
8.予防処置に関する保険算定:フッ素塗布やシーラント(FS)
小児患者への処置や、定期管理型の歯科医院では、予防処置関連の保険算定の理解も非常に重要です。
フッ素塗布(予防処置)
・う蝕多発傾向者の乳歯・萌出期の永久歯:110点
・初期の根面う蝕:80点
・エナメル質初期う蝕:100点
シーラント(FS)
・1歯につき複合レジン系の場合:145点(歯種や状態により異なる)
・対象歯は萌出直後の第1大臼歯、第2大臼歯
注意点として、処置する歯に咬合面のカリエスの兆候がないこと=予防目的である必要があります。すでに虫歯がある歯にシーラント処置をすると、保険請求に疑義が生じることも。
9.歯科衛生士が「点数」を知ることの意義
一見、事務的に思える「点数」の話ですが、私たち歯科衛生士がそれを理解することで、「予防の価値」を数字で示す力になります。
「患者さんにとって必要な処置を、正しく算定する」
これは単なる請求業務ではなく、患者さんへの信頼を生む医療の一部です。
そして、保険点数を知ることで、「この処置は必要か?」「どのタイミングで何をすべきか?」という判断力がつき、チーム医療の一員として存在感も高まると感じています。
10.保険点数の理解が「信頼」と提案力に繋がる
「歯科衛生士は点数を知らなくてもいい」と思われがちな医院も、まだ少なくありません。
しかし実際は、点数の知識があることで、歯科衛生士の発言力や提案力が格段にアップします。
例えば、SPT対象患者さんを再評価の段階からリストアップしたり、処置の間隔が保険上のルールから外れていないかを確認したりすることで、医院の利益を守ると同時に、患者さんへの正しい医療提供にもつながっています。
院長との信頼関係にも直結する
院長先生がレセプトを確認した際に、「この処置、算定できてる?」「この加算、今月入れられるよね?」といった話題が出ることはよくあります。そんな時、「〇〇さんは今月SPT算定済みです」「TBIは3ヶ月空いているので次回可能です」と、即答できる歯科衛生士はとても重宝されます。
実際に、私が勤めていたクリニックでも、点数に詳しいスタッフは大切な存在として認識されていました。
11.新人教育の一環としての点数共有

最近では、新人歯科衛生士の教育の一環として、点数の基礎知識をマニュアル化している医院も増えています。マニュアルは紙媒体、デジタル媒体とクリニックによって様々です。
みんなで学び合うスタイルの歯科衛生士同士の勉強会も有効ですね!
12.患者説明と保険点数のつながり
実は、保険点数を知っていることは、患者説明にも深みが出ます。
「今回は再評価します。歯周治療がひと段落したかをチェックして、次に進める状態か確認します」「次回からはSPTといって、定期的なケアで再発を防ぐ段階に入ります」
このように説明できることで、患者さんも「やらされている治療」ではなく、「必要なケア」として受け止めてくれます。
伝える力が、患者さんの継続力につながる
「保険点数=ただの制度」ではなく、治療の進行を可視化するためのツールとして使えるのが理想です。
まとめ
保険点数の理解は、歯科衛生士にとって「診療の質と経営のバランスをとる」ために欠かせない知識です。算定条件をきちんと理解し、スタッフ間で情報を共有することで、患者さんにとっても安心・納得の診療が提供できます。
ただ処置するだけでなく、「なぜこの処置が必要で、どんな価値があるのか」を言葉にして伝えられる歯科衛生士でありたい。そう思いながら、今日もカルテを確認し、次の患者さんを迎えています。
最後に
この記事を読んでくださった歯科衛生士や歯科医師のみなさんにとって、保険点数の知識が「ただのルール」から「現場で使える武器」になることを願っています。
患者さん第一に考えつつも、適切な報酬を得て、長く安定して働ける環境をつくるために、保険点数の理解は、歯科衛生士の未来を守る大事なスキルです。
歯科衛生士ライター:大久保
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