都道府県別 歯科医院数ランキングから見る歯科医院の課題

歯科経営, 歯科医

「コンビニよりも多い」と言われる歯科医院の数ですが、現在はどのようになってるのでしょうか?

日本全国の歯科医院数について調べてみました。

 

1、日本全国に歯科医院は何件あるの?

2024年2月に厚生労働省により行われた「医療動態調査」によりますと、全国の歯科診療所66,843件でした。

同時期の全国のコンビニエンスストアの数は57,978店とされており、以前コンビニエンスストアよりも多いようです。

 

1-1 日本全国歯科医院数ランキング

2024年にマップソリューション株式会社が集計・分析した結果から、全国の歯科医院の数を見てみましょう。

 

<ベストランキング>

 

1位 東京都   10,503件

2位 大阪府   5,464件 

3位 神奈川県  4,947件

4位 愛知県   3,690件

5位 埼玉県   3,573件

 

<ワーストランキング>

 

1位 島根県 254件

2位 鳥取県 259件

3位 福井県 292件

4位 高知県 345件

5位 佐賀県 407件

 

ランキング形式にしてみると、都市部では医院件数が多く、地方では少ないことがよく分かりますね。

常勤勤務医数は東京都では15,790人であるのに対して、島根県では338人。

人口1万人あたりの歯科医院数は東京都では7.57件であるのに対し、島根県では3.87件と圧倒的な差がありました。

 

また、全国的に見てまだコンビニエンスストアよりも数の多い歯科医院ですが、実情を見てみますと、前年度よりも歯科医院の数が減少していることが分かりました。

2020年から2024年までの5年間で新たに歯科医院が増件したのは、全国47都道府県のうち滋賀県のみでした。

 

2、歯科医院が減っているのはコロナのせい?

2019では68,500件あった歯科診療所ですが、上記の通り2024年2月には66,843件と5年間の間に1,657件が閉院しています。

2019年のトピックといえば世界的な大混乱となった新型コロナウイルス感染症が記憶に新しいですが、歯科医院においてはその影響はさほど大きくはありませんでした。

 

2020年4月7日に初めて東京や大阪といった大都市に緊急事態宣言が発令され、歯科においても大幅に受診件数が減少しました。

しかしながら、歯科が医科と大きく異なったのは、新型コロナウイルス特別措置法が成立し、医科では減少に転じた2020年3月にあっても歯科の受診件数は前月より増加し、コロナ禍前と同等であったという点です。

社会保険診療報酬支払基金による「統計月報」を確認すると、2020年1月では12,185件であった歯科の診療報酬確定件数ですが、3月には13,232件に増加しています。

その後非常事態宣言が全国的に解除された5月には9,552件と底をつくものの、6月時点では12,033件まで回復していました。

 

では歯科医院件数が減少しているのには、一体何が原因となっているのでしょうか?

 

2-2 高齢化社会に打撃を与えたデジタル化

2021年10月からマイナンバーカード保険証の本格的な運用が始まり、2023年4月には医療機関でのシステムの導入が義務化されました。

政府は2024年末の保険証廃止に向けて、認知と利用促進を強化しているのが現状です。

 

医療機関においてはマイナンバーカード保険証の導入だけでなくオンライン資格確認システム、そして医療DXに向けた電子カルテ導入が求められました。

日本歯科総合研究機構が2020年に日本歯科医師会会員に向けて調査した結果、管理者の年齢は60歳代が最も多く、将来の医院継承について予定なしや不明は約9割を占めています。

そんな中、降り掛かったマイナンバーカード保険証の導入及びオンライン資格確認システムのための設備投資が医療機関の規模に関わらず全国一律に義務付けられました。

これにより、今後の採算が取れないと判断しリタイアを余儀なくされた高齢医師が多く出たようです。

全国保険医団体連合会によると、全国の各地方厚生局に出された保険医療機関の廃止数は2023年3月には医科で724件、歯科で379件で計1103件の届け出がなされており、少なくとも2022年5月以降で最多となりました。

 

3、歯科医師が足りなくなる?

厚生労働省が2年に一度行っている「医師・歯科医師・薬剤師統計」によると、歯科医師の総数は平成30年~令和2年の間では2,535人(2.4%)増加しています。

その一方で、歯科医師数が不足するリスクが懸念されています。

 

今後歯科医師数が減少するであろうと考えられている要因は、主に以下の5つです。

 

①国家試験の合格率・合格者数の低下

歯科医師国家試験の合格率・合格者数は、近年大幅に減少しました。

2001年の合格率が3,125人で90.7%であったのが、2011年には2,400人の71%と低水準になっています。

合格率が低下している下人としては、国による歯科医師国家試験の合格基準の引き上げが影響していると考えられます。

 

②歯科医師数に地域格差が発生

歯科医師数に地域格差があることも、今後の歯科医師不足に影響をおよぼすとされる要因の一つです。

実際に上記で述べたように、歯科医療過疎地域ではすでに歯科医師数の減少が始まっています。

 

③歯科医師の平均年齢の上昇

歯科医師の平均年齢の上昇も深刻な問題です。

2020年12月31日における歯科医師の平均年齢は、52.4歳でした。

また、歯科医師数を年齢階級別に見ると、

 

50歳~59歳が全体の22.8%

60歳~69歳が全体の22.2%

 

となっており、50歳以上の歯科医師が45%を占めています。

 

今後若手の歯科医師が増加しないと、50歳以上の歯科医師が現役を退いた時に歯科医師がガクンと減少してしまうことが予想されます。

 

④歯科医院の半数以上は後継者難

歯科医院の多くが後継者難であることも、歯科医師不足が懸念される一因です。

歯科医院の後継ぎがいない場合、廃院によって歯科医院数が減少し、かかりつけ医として利用していた地域住民が歯科医院を受診できなくなってしまうことも考えられます。

 

⑤超高齢社会による歯科診療への需要拡大

超高齢社会により、今後ますます歯科医院・歯科医師への需要が高まることが予想されます。

要介護状態の高齢者のうち歯科治療が必要な人は64.3%ですが、実際に歯科受診ができているのはそのうちわずか2.4%です。

介護度が高いと歯科医院の受診が難しいことも多く、高齢化が進むにつれて歯科訪問診療への需要が高まっていきます。

しかし、実際に訪問診療を行っている歯科医師は高齢者10万人に対して約40施設と、極めて少ないのが現状です。

訪問診療に対応できる歯科医師が増加しない限り、高齢者に対する適切な歯科疾患の予防や治療がなされなくなってしまいます。

 

まとめ

全国の歯科医院数について調べた事で、明確な地域格差が起こってしまっていることが分かりました。

目の前に迫る超高齢化社会は患者側だけに起こっている事ではありません。

十分な歯科診療を受けられないことは、食事ができないだけでなくQOLの低下、そして全身の健康に悪影響を起こしてしまいます。

患者だけでなく、施術を行う側である医療従事者側においても高齢化問題について考えていくことが求められています。

 

ライター:古家

一覧へ