こんな方におすすめ
歯科医院向けのセミナー配信サイト「ORTC online」では歯科医療従事者が専門的な知識と技術を習得することを目的に、さまざまなな診療科目のセミナーや動画配信を行っております。
今回ご紹介するのは、日本矯正歯科学会認定インビザラインダイヤモンドプロバイダーの宮島悠旗講師です。
今回のセミナー動画は、以下のことが学べます。
?追加アライナー時に見るポイント
?追加アライナー時のクリンチェックの確認の仕方
?部位からわかる予測診断
今回の内容は、追加アライナーの段階から見たクリンチェックの確認方法です。
戻ってきたクリンチェックに対し、どのような診断をしていくのか?
それぞれ部位ごとに、宮島講師が丁寧に解説していきます。
現状の把握とゴール設定を明確にする
まず、追加アライナー時の現状と初診時の状態を重ね合わせて見ていきましょう。
【現状と初診時の見比べ】
?オーバージェットが比較的大きい
?上顎44番を抜歯している
?左下7番は初診時にカリエスによって保存不可となり抜歯済
ここまで現状を把握したあと、次はゴール設定を確認します。
【ゴール】
?大臼歯は2級仕上げで犬歯1級にもっていく
このゴールに従い、次は現時点におけるクリンチェックの動きを部位ごとに見ていきましょう。
上顎右側のクリンチェック
【上顎右側】
?臼歯部、犬歯、前歯ともに、全体の遠心移動が見られる
上顎右側のクリンチェックを見ていくと、最終位置は一見問題なく見えますが、その過程にやや問題が確認できました。
というのも、歯牙移動表で確認するとわかるのですが、現実的ではない動きが確認できるからです。
近遠心の移動の欄に注目すると、右上臼歯部に1ミリほどの遠心移動が入っています。
それに加えて、右上犬歯と前歯にも同じく遠心移動が入っていることから、このままでは全体が遠心移動してしまうことは確実です。
さらにステージングからでも、全体が遠心移動していることが確認できます。
矯正医の観点からすると、このような歯の動きは現実的にはありえません。
遠心移動する場合は、最初に臼歯を移動させてから犬歯→前歯のように段階を踏む必要があります。
これは、顎間ゴムを使用する場合でも全体の遠心移動ができないことになっているため、これらを鑑みても歯の動かし方を変更する必要が生じるのです。
では、どのように動かすべきか。
残念ながら3Dコントロール上で移動はできない仕様になっています。
そのため最終位置を決めてからコメントに記入したあとは、インビザライン社で対応していただくようにしましょう。
上顎左側のクリンチェック
【上顎左側】
?近心移動だが、アンギュレーションでは遠心移動
?大臼歯に大きな挺出移動あり
上顎左側では近心移動になっていますが、アンギュレーションだと遠心移動になっていることがわかります。
遠心傾斜でアップライトをすることで近心傾斜を改善しようとしていますが、結果的に近心移動になってしまうという矛盾が生まれてしまいました。
もちろん、この動きも現実的な動きではありません。
歯牙移動表でも、上顎大臼歯に大きな挺出移動が確認できます。
ですが、大臼歯の挺出移動は基本的に顎間ゴムを使用しないとボタンカットを入れている歯牙以外は挺出移動ができません。
そのため、大臼歯の挺出移動も実際にはありえない動きとなり、こちらも現実的な動きに変更する必要が生じます。
下顎のクリンチェック
【下顎】
?スピーカーブと臼歯の近心傾斜が見られる
?ディープバイトあり
下顎には、スピーカーブと臼歯の近心傾斜、さらにディープバイトが残っていることが確認できます。
クリンチェックでは、スピーカーブとディープバイトを同時に並べる予定です。
動かし方については、臼歯を挺出させて前歯を圧下させる方法を採用しています。
●スピーカーブと臼歯の近心傾斜
まずスピーカーブでは、右下6番は近心傾斜ですが遠心の高さは変わっていないため、クリンチェックの動きでもさほど問題はありません。
(ただし、顎間ゴムを使用する必要あり)
近心傾斜を遠心にアップライトさせるためには、ボタンカットを近心側につける必要があります。
2級ゴムの場合、遠心にボタンカットがつく場合が散見されるため、事前に確認しておきたいポイントです。
●ディープバイト
犬歯と前歯の圧下に関しては、クリンチェックの動きを見ても同時に圧下していることがうかがえます。
ステージングパネルでも同樣です。
ですが、インビザラインでは下顎3?3番を圧下させたい場合、犬歯と前歯の動きを分ける必要が出てきます。
なぜなら、力が足りないからです。
そのため、2?2番を圧下させてから犬歯に移行する順番が望ましいでしょう。
まとめ
今回は、追加アライナー時に見るクリンチェックの確認の仕方について説明いたしました。
正しく歯を移動させるためには、部位ごとにクリンチェックを見直していく必要があります。
そのためにも、歯の動きだけでなく歯牙移動表の数値と見比べたり重ね合わせたりすることで、ゴールのイメージがより明確になるでしょう。