続・絶対に失敗しないマウスピース矯正33のこと

続・ 絶対に失敗しないMP矯正33の事 抜歯基準

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講師
新渡戸康希
医療法人社団杏壬会 池袋みんなの歯医者さん 矯正歯科・こども歯科
院長

講師紹介 新渡戸康希

  • 新渡戸康希
  • 医療法人社団杏壬会 池袋みんなの歯医者さん 矯正歯科・こども歯科
  • 院長
  • ORTC onlineでは「絶対に失敗しないマウスピース矯正33のこと」を始め動画コンテンツで自身の経験を多くの先生方に共有。インビザラインが日本で導入されて以降、数々のセミナーや勉強会を開催し多くの先生方の学びを後押し。インビザライン治療における、予測実現性を高めるクリンチェック作成を日々追求され、治療技術だけに留まらず、集患・院内体制・経営思考なども伝えることで、これからの歯科医院の在り方についてもアドバイスを行っている。
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こんな方におすすめ

マウスピース矯正(特にインビザライン)を導入している歯科医師
インビザライン治療における抜歯・非抜歯の判断基準について、最新の考え方を学ぶことができます。かつての「遠心移動」「側方拡大」「IPRによるスペース獲得」という考え方が現在では推奨されず顎間ゴム等の補助なしでのマウスピース単独治療には限界があることを理解できます。治療計画立案精度向上や、インビザラインの失敗例とされる「奥歯が咬まない」「歯肉退縮」を回避するための重要な示唆を得られます。

これからマウスピース矯正の導入を検討している歯科医師
マウスピース矯正、特にインビザライン特性と限界正確に把握するために不可欠な情報です。安易な非抜歯治療計画リスクや、セファロ分析に基づいた診断の重要性を再認識できます。ワイヤー矯正との抜歯基準の違いだけでなく、マウスピース矯正特有の考え方変遷を知ることで、導入後の臨床判断を誤らないための基礎知識となります。どのような症例が適応となるかを見極める目を養います

矯正治療の診断・治療計画立案に関わる歯科医師
ワイヤー矯正マウスピース矯正、それぞれの抜歯基準考え方の違いと比較、そして現代におけるマウスピース矯正の抜歯基準のアップデートについて深く理解できます。セファロ分析による前歯(摂取)のポジション評価重要性を再確認し、IPRの目的がスペース獲得から咬合調整へと変化している点を学べます。症例に応じた適切な治療法の選択抜歯・非抜歯の判断における客観的な基準設定に役立ちます

矯正治療を担当する歯科衛生士・歯科技工士
歯科医師がどのような基準で抜歯・非抜歯を判断しているのか、その背景にある理論の変化知ることができます。特にインビザラインにおけるIPR目的変更や、遠心移動側方拡大限界についての知識は、患者への説明歯科医師との連携において重要です。治療のゴール設定アタッチメントのデザインアライナー交換時の注意点など、日々の業務に関連する知識のアップデートにつながります。

最新の矯正歯科治療の動向に関心のある全ての歯科医療従事者
インビザラインという代表的なマウスピース矯正システムにおける治療哲学変化知ることは矯正歯科界全体のトレンドを理解する上で有益です。過去の知見がどのようにアップデートされ臨床現場に反映されているか知る良い機会となります。非抜歯治療がもてはやされた時代から、適応を見極めた上での「積極抜歯」へと舵が切られた背景学ぶことで、今後の矯正治療の方向性を考察する一助となります。

動画の紹介

マウスピース矯正の抜歯基準が変わる!最新のインビザライン治療計画とは
近年、急速に普及が進むマウスピース矯正、特にその代表格であるインビザライン。しかし、その治療計画立案における「抜歯基準」は、登場当初から現在に至るまで、大きな変遷を遂げてきました。この動画では、池袋みんなの歯医者さん院長の二階堂孝先生が、「絶対に失敗しないマウスピース矯正のための抜歯基準」というテーマで、最新の考え方詳細に解説しています。

従来のワイヤー矯正マウスピース矯正抜歯基準の違い
まず、動画ではワイヤー矯正における抜歯基準考え方が復習されます。ワイヤー矯正では、セファロ分析を行い、前歯(摂取)のポジションを確認します。基準値よりも前方に位置していたり、傾斜していたりする場合、後方へ移動させるためのスペース確保が必要となります。しかし、ワイヤー矯正では十分な遠心移動が困難なケースが多く、結果として抜歯選択されることが一般的です。この「セファロ分析に基づき、前歯の位置で抜歯・非抜歯を決定する」という考え方自体は、最終的な前歯の審美性を考慮する上で合理的であると二階堂先生は評価します。
一方、マウスピース矯正が登場した当初は、異なるアプローチが主流でした。セファロ分析で前歯の位置が悪くても、「遠心移動」「側方拡大」「IPR(歯間削合)」といった手段でスペースを確保できるため、非抜歯で対応可能である、という考え方が広まっていたのです。上顎で4mm、下顎で3mmの遠心移動犬歯間で1mm、臼歯部で4~6mmの側方拡大、そしてIPRによるスペース創出…これらを組み合わせれば、抜歯を回避できるという期待感があったのです。

インビザラインにおける「できないこと」の明確化
しかし、長年の臨床経験とデータの蓄積により、状況は大きく変化しました。二階堂先生は、現在のインビザライン治療において「できないこと」明確になってきたと指摘します。

遠心移動限界: 顎間ゴムなどの補助的なメカニクスを用いずにマウスピース単体有意な遠心移動を行うことは、現在では「不可能」というのが主流の考え方です。かつて喧伝されたような数ミリ単位の遠心移動は、現実的ではないことが明らかになりました。
側方拡大限界: 同様に、マウスピース単体での大幅な側方拡大も困難です。近年、インビザライン社自身が小児用の拡大装置(エキスパンダー)開発したことからもアライナーのみでの拡大には限界があることが示唆されています。
IPR目的の変化: IPRは、もはや単なるスペース獲得手段ではありませんインビザライン社が現在重視しているのは、「咬合調整のためのIPR」です。ボルトン分析などに基づき、上下顎の歯のサイズの不調和を整え良好な嵌合を得ることを主目的とすべきであり、安易なスペース獲得目的でのIPRは、咬合の不安定化歯肉退縮といったインビザラインの失敗例につながるリスクがあると警告されています。

現代におけるマウスピース矯正抜歯基準:「積極抜歯」へ
遠心移動も、側方拡大も、スペース獲得目的のIPR実質的に困難となると、残されたスペース獲得手段は「抜歯」しかありません
したがって、現在のマウスピース矯正、特にインビザラインにおける抜歯基準は、セファロ分析を行い、前歯の位置基準値から逸脱している場合、それを改善するためのスペースが必要であれば抜歯第一選択肢となる、というのが二階堂先生の結論です。これは、ある意味でワイヤー矯正の考え方に回帰したとも言えますが、多くの臨床経験と失敗例から学んだ上での進化です。
「スペースがなければ抜歯する」「前歯の位置が悪ければ抜歯する」という「積極抜歯」が、現在のインビザライン治療におけるスタンダードとなりつつあるのです。
この動画は、マウスピース矯正に関わる全ての歯科医療従事者にとって、治療計画根幹に関わる重要な情報を提供しています。過去の常識にとらわれず最新の知見に基づいた適切な診断と治療計画立案を行うために必見の内容と言えるでしょう。

動画内容

【詳細解説】マウスピース矯正における抜歯基準の変遷と最新の考え方:インビザライン治療の成功のために
マウスピース型矯正装置、特にアライン・テクノロジー社インビザラインシステムは、その審美性や利便性から世界中の歯科臨床現場で急速に普及しました。しかし、その治療計画、とりわけ抜歯・非抜歯の判断基準は、導入初期の考え方から現在に至るまで大きな変化を遂げています。本稿では、二階堂孝先生池袋みんなの歯医者さん院長)による解説動画に基づき、マウスピース矯正における抜歯基準の変遷、現在の主流となっている考え方、そしてその背景にある理論的根拠詳細に解説します。

1. 矯正治療における抜歯基準の基礎:ワイヤー矯正の考え方
マウスピース矯正の抜歯基準を理解する上で、まず伝統的なワイヤー矯正における考え方を把握することが重要です。ワイヤー矯正における診断・治療計画立案の根幹をなすのは、セファロ分析(頭部X線規格写真分析)です。

セファロ分析の役割: 患者の頭蓋、顎骨、歯列の位置関係や角度を計測し、骨格的な特徴や歯の傾斜度などを標準値と比較・評価します。これにより、不正咬合の原因が骨格性なのか歯槽性なのか、あるいはその両方なのかを診断します。
前歯(摂取)のポジション評価: ワイヤー矯正の抜歯基準において特に重要視されるのが、前歯(切歯、摂取)の前後的な位置と傾斜角度です。例えば、日本人の標準的な顔貌プロファイルと比較して、上顎前突(出っ歯)や上下顎前突(口元の突出感)が認められる場合、その原因が前歯の前方傾斜歯槽骨自体の前方位置にあるのかをセファロ分析で評価します。
スペース不足と抜歯の判断: セファロ分析の結果、前歯が基準値よりも前方に位置している、あるいは前傾していると判断された場合、理想的な位置(基準値内)まで後方移動させる必要が生じます。しかし、ワイヤー矯正単独では、臼歯部固定源を確保したとしても、大きな遠心移動(歯を後方へ動かすこと)は困難な場合が多いです。特に重度の上顎前突叢生(歯のガタガタ)では、前歯を後退させるために必要なスペースが絶対的に不足します。このような状況下で、無理に非抜歯で治療を進めると、前歯がさらに唇側傾斜したり、歯根歯槽骨から逸脱したりするリスクがあります。そのため、ワイヤー矯正では、前歯を適切な位置に排列するためのスペースを確保する手段として、小臼歯(主に第一小臼歯)を抜歯することが標準的な選択肢となります。
二階堂先生は、この「セファロ分析に基づき、前歯の位置を基準に抜歯を判断する」というワイヤー矯正の考え方は、最終的な顔貌の審美性咬合の安定性を得る上で非常に合理的であり、マウスピース矯正においてもその基本原則は否定されるべきではない、との立場を示しています。

2. マウスピース矯正初期の抜歯基準:「非抜歯」への期待と限界
インビザラインが登場し普及し始めた初期ワイヤー矯正とは異なるアプローチによる「非抜歯治療」の可能性が盛んに議論されました。マウスピース矯正特有のメカニクスにより、従来は困難とされた歯の移動が可能になると考えられたためです。

遠心移動への期待: インビザラインは、歯を連続的に後方へ移動させる「シーケンシャル・ディスタリゼーション」が可能であるとされ、上顎で最大4mm、下顎で最大3mm程度の遠心移動によりスペースを獲得できると期待されました。これにより、小臼歯抜歯回避できる症例が増えると考えられました。
側方拡大への期待: 歯列弓を側方(横方向)へ拡大することでも、スペースを確保できます。マウスピースで歯列全体を覆い、徐々に側方へ力を加えることで、犬歯間幅径で約1mm、臼歯部の幅径(上顎6番間)で4~6mm程度の拡大が可能とされ、これも非抜歯治療を後押しする要因となりました。
IPR (Interproximal Reduction) の活用: IPRは、歯の隣接面(側面)のエナメル質を少量削合し、スペースを作り出す方法です。最大で1歯あたり0.5mm程度まで削合可能とされ、歯列全体で行えば数ミリ単位のスペースを確保できるため、軽度から中程度の叢生前突の改善に有効な手段として、非抜歯治療計画に積極的に組み込まれました
これらの「遠心移動」「側方拡大」「IPR」を組み合わせることで、セファロ分析で前歯の位置が悪くても、抜歯せずに治療できる範囲が広がると考えられ、多くの歯科医師が非抜歯治療に取り組みました。二階堂先生も、過去にはこれらの方法を用いた治療計画を推奨していた時期があったことを認めています。

3. 臨床経験が示す現実:マウスピース矯正の限界とパラダイムシフト
しかし、世界中で膨大な数の症例が蓄積されるにつれ、当初の期待通りにはいかない現実が明らかになってきました。マウスピース矯正、特にインビザライン単独治療には、無視できない限界が存在したのです。

遠心移動の限界: 顎間ゴムインプラントアンカーといった補助装置を併用しない限り、マウスピース単独での予測可能(Predictable)な遠心移動量は非常に限定的であることが、多くの臨床研究や経験則から示されるようになりました。「上顎4mm、下顎3mm」といった数値は、理想的な条件下での最大値、あるいは非現実的な目標値であり、多くのケースで達成困難であることが判明しました。現在では、「インビザライン単独での有意な遠心移動は不可能」という見解が主流となりつつあります。
側方拡大の限界: 歯列弓の拡大についても、歯体移動(歯全体が平行移動すること)ではなく、歯冠の傾斜移動(歯が傾くだけ)にとどまるケースが多いことがわかってきました。特に臼歯部での大きな拡大は、咬合の不安定化歯根の骨からの逸脱リスク高めますアライン・テクノロジー社が近年、インビザライン・ファースト(小児・混合歯列期用)向けに専用の拡大装置Mandibular Advancement FeatureExpansion Appliance)を導入した事実は、アライナー単独での拡大能力の限界を裏付けるものと言えます。
IPRの目的再定義とリスク: IPRに関しても、その目的と適応が見直されています安易なスペース獲得目的でのIPRの多用は、インビザライン治療における二大失敗例とされる「臼歯部開咬(奥歯が噛まない)」と「歯肉退縮(歯茎が下がる)」のリスクを高めることが指摘されています。
臼歯部開咬: IPRによって前歯部や小臼歯部の歯幅が過度に減少すると、上下顎の歯のサイズの調和(ボルトン比)が崩れ、臼歯部で適切な咬合接触が得られなくなることがあります。
歯肉退縮: IPRでスペースを作り、前歯を無理に後退させようとすると、歯根が歯槽骨の唇側や舌側限界を超えて移動し、歯肉退縮や歯根露出を引き起こすリスクがあります。
これらの臨床的なフィードバックとエビデンスに基づき、インビザライン社自身も、IPRの主目的を「スペース獲得」から「咬合調整(Bolton Discrepancyの補正)」へとシフトさせています。つまり、IPRは主に上下顎の歯の大きさの不調和を解消し、良好なインターカスベーション(咬頭嵌合)を得るために、ボルトン分析に基づいて慎重に行うべきであり、叢生解消や前歯後退のための主要なスペース獲得手段として用いるべきではない、という考え方が現在のスタンダードです。

4. 現代のマウスピース矯正における抜歯基準:「積極抜歯」への回帰
遠心移動側方拡大、そしてスペース獲得目的のIPRという、かつてマウスピース矯正の非抜歯治療を支えた3本の柱が、実質的にその有効性を大きく制限されることになりました。その結果、残された有効なスペース獲得手段は、「抜歯」ということになります。
二階堂先生は、この現状を踏まえ、現在のマウスピース矯正(特にインビザライン)における抜歯基準は、以下のように考えるべきだと結論付けています

セファロ分析の重要性: まず、ワイヤー矯正と同様に、セファロ分析を行い、前歯(摂取)の前後的位置や傾斜角度を客観的に評価する
スペース不足の評価: 前歯を理想的な位置に移動させるために必要なスペース量を算出する。
抜歯の第一選択: 必要なスペース量が、限定的なIPR(咬合調整目的)や、補助装置を用いた(実現可能性のある範囲での)遠心移動側方拡大で確保できない場合、小臼歯抜歯第一選択となる。
つまり、「スペースがなければ(あるいは前歯の位置が悪ければ)抜歯積極的に検討する」という「積極抜歯」のアプローチが、現在のエビデンスに基づいたマウスピース矯正のスタンダードとなりつつあるのです。これは、ある意味でワイヤー矯正抜歯基準の考え方に回帰したとも言えますが、数多くの臨床経験、成功例と失敗例の分析を経てたどり着いた、より洗練された基準と言えるでしょう。

5. 結論と臨床への示唆
マウスピース矯正、特にインビザラインにおける抜歯基準は、技術の進歩と臨床データの蓄積により、大きなパラダイムシフトを経験しました。「何でも非抜歯で治せる」という幻想から脱却し、ワイヤー矯正と同様に、セファロ分析に基づいた客観的な診断と、実現可能な歯の移動様式を考慮した上で、必要であれば抜歯を躊躇しない、という考え方が重要になっています
歯科医療従事者は、過去の情報やセミナー内容にとらわれず、常に最新の知見をアップデートし続ける必要があります。安易な非抜歯治療計画咬合の不安定化歯肉退縮治療期間の遅延、そして最終的には患者満足度の低下につながる可能性があります。
本動画で解説されている内容は、マウスピース矯正を行う全ての臨床家が共有すべき重要な知識であり、日々の診断治療計画立案において、患者にとって最善の結果をもたらすための指針となるでしょう。抜歯・非抜歯の判断は、個々の症例の骨格的特徴、歯のサイズ、叢生の程度、患者の希望などを総合的に勘案して行われるべきですが、その根底には、今回解説されたようなエビデンスに基づいた客観的な基準が存在することを忘れてはなりません

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