「Per(ペル)」という略語は、歯科でよく使われる専門用語ですが、意外とその詳細や臨床上の取り扱いについて理解があいまいなこともあります。本記事では「Per=根尖性歯周炎」の基礎知識から、歯周炎との違い、再発予防に役立つ「ペリソルブ療法」までを詳しく解説します。歯科医師・歯科衛生士に向けた、実践で使える情報を網羅しました。
根尖性歯周炎(Per)とは?|定義と原因を押さえる
根尖性歯周炎とは、歯髄が感染あるいは壊死し、歯根の先端(根尖)に炎症が及んだ状態を指します。感染は根管内から根尖孔を通じて歯槽骨に波及し、周囲の歯槽骨を破壊します。

主な原因は、以下のとおりです。
・う蝕による歯髄感染
・外傷による歯髄壊死
・根管治療の不備や再感染
・歯内-歯周病変
歯周炎と根尖性歯周炎の違いとは?

混同されがちな「歯周炎」と「根尖性歯周炎」ですが、発生メカニズムや症状、治療法において明確な違いがあります。以下の表にまとめました。
項目 | 根尖性歯周炎(Per) | 歯周炎 |
---|
原因 | 歯髄の感染や壊死により、根尖部に炎症が波及 | プラークや歯石の蓄積による慢性的な炎症 |
主な症状 | 咬合痛、打診痛、瘻孔形成、根尖部の透過像 | 歯肉の腫脹、出血、歯周ポケットの形成 |
診断方法 | 歯髄診断、X線検査、CBCTなど | プロービング、X線検査、歯周組織の評価 |
治療法 | 根管治療、再根管治療、外科的歯根端切除術など | スケーリング・ルートプレーニング、歯周外科手術 |
歯髄の状態 | 感染または壊死していることが多い | 生存していることが多い |
根尖性歯周炎の診断と治療

根尖性歯周炎の診断と基本的な治療の流れは以下のとおりです。
診断
打診痛・咬合痛の確認
歯髄診断(冷診・電気診)
画像診断(デンタルX線・CBCT)
標準的な治療の流れ
①感染源除去:根管内の壊死組織・感染歯質の除去
②根管洗浄:次亜塩素酸ナトリウム・EDTAなどを用いる
③根管拡大:ニッケルチタンファイルなどを使用
④根管充填:ガッタパーチャ+シーラー
⑤補綴処置:支台築造とクラウン装着
難治症例では、再根管治療や歯根端切除術(apicoectomy)が選択されます。
歯科衛生士が果たす役割

歯科衛生士は、Per治療において以下のような重要な役割を担います。
術前対応:患者への治療説明、不安軽減
術中対応:ラバーダム設置補助、器具準備
術後対応:補綴後の清掃指導、メンテナンス中の評価
再発予防:プラークコントロール、SRPの実施
ペリソルブ療法とは?|非外科的歯周治療への新たな選択肢

重度の歯周病患者への新しい選択肢として、ペリソルブ療法があります。
ペリソルブとは
ペリソルブ(PERISOLV®)は、スウェーデンで開発された歯周病原性バイオフィルムを効率的に除去するための化学的支援療法です。薬剤は、クロルヘキシジンと天然由来の酵素を含んだジェルで構成され、歯石を軟化させながら殺菌作用を発揮します。
病変部に塗布することで、歯石・バイオフィルムを軟化させ、スケーリングが容易になるため便利です。
治療手順
①ペリソルブの混和(直前にジェルとリキッドを混合)
②ポケット内に塗布
③30秒待機し、軟化作用を発現
④SRP(スケーリングとルートプレーニング)を実施
※必要に応じて反復
適応症例
・中等度以上の歯周炎
・高齢者や外科手術が難しい患者
・インプラント周囲炎の管理
メリットと注意点
メリット | 注意点・デメリット |
---|
スケーリングがしやすくなる | 混和は直前に行う必要がある |
痛みが少ない | 自費治療のため費用負担がある |
炎症部位を選択的に作用 | 効果には個人差がある |
健全組織への影響が少ない | 一部の症例では従来の治療の併用が必要 |
臨床応用|Per治療にペリソルブを併用するケース

近年、慢性化した根尖性歯周炎や歯内-歯周病変において、歯周管理の一環としてペリソルブ療法を併用するケースが増えています。歯周組織の炎症を抑えることで、根管治療の成功率を高めることができるためです。
まとめ|歯科医療者としての臨床力を高めるために
「Per=根尖性歯周炎」は、歯内疾患の中核をなす重要な病態です。
歯周炎との違いを正しく理解し、治療計画を立てることが再発予防の鍵となります。
ペリソルブ療法は、非外科的アプローチとして有効で、患者満足度も高い方法です。
歯科衛生士も含めたチームでの治療・予防体制が求められています。
日々の診療で「Per」のサインを見逃さず、科学的根拠に基づいた治療を提供するために、最新の知識と技術のアップデートを怠らないようにしましょう。
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歯科衛生士ライター 東雲あや
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