歯科リーマー完全ガイド|種類・使い方・選び方・コストまで徹底解説

歯科知識

根管治療に欠かせない基本器具「リーマー」です。歯内療法での感染除去・根管拡大には必須の存在ですが、ファイルとの違いを正確に理解している歯科医師は意外と少なくありません。近年はニッケルチタン製のリーマーも普及し、選び方や使用方法も進化しています。適切に使いこなすことで、治療の精度が上がり、医療事故リスクも軽減できます。
この記事では、リーマーの基礎から選定ポイント、コスト管理、保険請求のコツまで、開業医目線で実践的に解説します。

リーマーとは?
 

リーマーとは、根管治療において歯髄や感染物質を取り除き、根管内の拡大・形成を行う歯科用器具の1つです。針状で細長く、らせん状の刃が付いており、回転運動により根管内を削っていきます。
リーマーの歴史は意外にも古く、19世紀末にはその原型が登場しています。当時から改良を重ね、現在ではステンレス製からニッケルチタン(Ni-Ti)製まで材質も多様化してきています。特に、最近のNi-Ti製リーマーは柔軟性が高く、湾曲した根管でも破折リスクが低いため、歯内療法の成功率を高めています。
一方、混同されやすいのが「ファイル」という器具です。リーマーが回転運動を主とするのに対して、ファイルは往復運動を主体とし、根管内の感染物質や壊死組織をかき出す役割を担います。つまり、リーマーは根管の拡大・形成、ファイルは洗浄・除去という明確な違いがあり、症例や目的に応じて使い分けが必要です。

用途・特徴


リーマーの主な役割は、根管を整え、その後の根管充填を円滑に行うための準備をすることです。湾曲根管や難症例においては、Ni-Ti製リーマーが優れた成果を発揮しています。材質によって特徴が異なるため、用途に応じて選ぶ必要があります。
ステンレス製のリーマーは硬度が高く、比較的低コストで入手可能です。直線的な根管に適しており、耐久性も高いため一般的な症例に広く使用されています。しかし柔軟性に欠けるため、湾曲根管には不向きで、根管内での破折のリスクが高まるというデメリットがあります。
ニッケルチタン(Ni-Ti)製のリーマーは非常に高い柔軟性を持ち、複雑な湾曲根管にも容易に対応可能です。根管内での破折リスクを大幅に低減できるため、近年では多くの歯科医院で主流となっています。ただし、コストが高く、使用や管理に注意が必要なため、コスト面を考慮した運用が求められます。
最近では手動だけでなくエンジン駆動式のリーマーも普及し、効率的かつ精度の高い根管治療を実現できます。

選び方・使用時の注意点

リーマーの選定には症例に合わせた基準があります。直線的な根管の場合はステンレス製で十分対応できますが、湾曲根管や難症例の場合はNi-Ti製リーマーが推奨されます。また、感染根管や再治療の場合はファイルを併用し、感染物質を確実に除去することが重要です。
リーマーはサイズ(#10〜#40など)やテーパー(先端に向けての直径の変化率)も重要であり、症例ごとに適切に選ぶ必要があります。間違った選択は破折などのトラブルを招く恐れがありますので、選択は慎重にしていきましょう。
また、使用時の注意点として、無理な力を加えないことが破折防止に不可欠です。仮に、治療中にリーマーが根管内で破折した場合、その後の治療が大変になります。破折したリーマーを除去できないなんてことが起こるなんて、考えたくないですよね。使用回数や使用時間の管理を徹底し、消耗した器具は早めに交換するよう努めていきます。衛生管理としては、超音波洗浄と高圧蒸気滅菌を必ず行い、最近では使い捨て製品も視野に入れることで安全性を高めています。

コスト・保険請求のポイント

リーマーの仕入れコストは材質によって大きく異なります。ステンレス製の場合は1本200〜400円程度ですが、Ni-Ti製の場合は1本1,000〜2,000円以上と高額です。使い捨てタイプも市場に出回っており、衛生面での安心感が高まる反面、ランニングコストは上昇します。
在庫管理のポイントは、症例ごとにサイズや材質を的確に管理し、ロット番号や使用期限などの管理も徹底することで無駄な在庫を抑えられます。Ni-Ti製は、使い捨てとして運用することで衛生管理が容易になりますが、コストとバランスを考えて運用方針を決めることが大事です。
保険診療においてリーマー単体での保険加算はなく「感染根管処置」や「抜髄処置」などの点数に含まれています。そのため、歯科医院のコストになる反面、患者へ高い医療提供をすることができます。

ですが、臨床現場で、先生方が「根治だけだと数百円だよ。これじゃコストの方が高くつくよね」と嘆いているのを聞いたことがあります。どのようにしたら、歯科医院のコストと高い医療提供のバランスをとるために、以下のような選択もしていきましょう。

①「Ni-Tiロータリーファイル加算」(150点)を必ず取ることです。
2024年の診療報酬改定で新設された「Ni-Tiロータリーファイル加算」(150点)は算定していますか?
条件としては、Ni-Ti製ファイルをエンジン駆動で使用することになります。必ずカルテ記載&患者への説明を徹底し加算を逃さないようにしていきます。

 

②「歯科疾患管理料(P管理)」(110点)をセットで算定していくようにするのも良いでしょう。根管治療時に患者教育(口腔衛生指導・再発予防指導)を行い、歯科疾患管理料を算定します。

治療終了後にも継続的に管理を行うと定期的に110点算定可能です。→治療後のメンテナンスへの誘導にも繋がりますので、患者への説明をし、一緒に行っていくことをオススメします。

③保険点数ではないですが、患者に必要性があれば自費補綴物を選択してもらうように、最終補綴物のカウンセリングを行っていくのも1つの選択肢だと思います。トータルの治療コストとしてみると良いのではないでしょうか。

 『単に低い点数を嘆くのではなく、工夫して最大限に活用する』のが経営的なポイントになっていくと思います。

まとめ

リーマーは根管治療の成功を左右する重要な器具です。適切な選定と管理を徹底し、衛生面や破折リスクを考慮することで患者満足度や治療成功率の向上につながります。開業医の先生方はコストと品質のバランスを見極め、適切な運用を行うことが成功への鍵です。
新規開業時には、最低限ステンレス製リーマー(手用)、Ni-Tiリーマー(エンジン用)、根管拡大用ファイルやゲーツドリルを準備しましょう。さらに、器具の衛生管理に必要な超音波洗浄器や高圧蒸気滅菌器も欠かせません。難症例を考えるとNi-Ti製を導入しておくことが推奨されます。
歯科衛生士目線からすると、歯科衛生士が使用しない器具の管理上の基準がよく分からない場合もあり、リーマーだけでなくファイルなどもですが、どのくらいで消耗するのか、どの状態になったら使用できない(治療が難しい)のかが、正直分かりません。基準を決めていただいたり、どのような状態で管理してほしいのかを明確にしていただけると歯科衛生士やクリーンスタッフなども働きやすくなると思います。
また、トラブル防止のためには定期的にスタッフ教育を実施し、破折リスクや衛生管理に対するリテラシーを高めることで患者からの信頼も高くなっていくのではないでしょうか。

歯科衛生士ライター:原田

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