この春に歯科衛生士学校をご卒業され、晴れて歯科衛生士となられた皆さん、おめでとうございます。
令和6年の歯科衛生士国家試験の合格者数は7,346名とのことでした。
早い方では去年の夏休みの頃から就職活動を進めておられたかと思いますが、まだこれからじっくり自分に合った職場を探していくという方もおられることでしょう。
国家資格を得た今、この4月からは学生ではなく社会人として、プロの歯科衛生士の仲間入りです!
歯科衛生としてだけでなく初めての職場、初めての社会人生活に対して不安な気持ちもあるかと思いますが、この記事を読んでぜひ春からの新生活に対して具体的にどんな準備をしていけば良いかを考え、スムーズなスタートを切るための準備をしていきましょう。
この記事で分かること
1、最低限ここだけは!知識・技術の再確認
2、先輩DHが伝授!「これだけは準備しておいて!」リスト
3、失敗しない!社会人としての基本マナー&心構え
1、最低限ここだけは!知識・技術の再確認

①学校で学んだことを再確認しておきましょう!
歯科衛生士学校ではもちろん国家資格を取得することを目標として勉強をしています。学生生活で学んできたことは全て歯科衛生士となった時に必要な知識ではありますが、その全てを再確認!というのはなかなか難しいですよね。
そこで、ここでは優先的に確認しておくべき内容についてお伝えします
まずはやはり歯科予防処置論、歯科保健指導論、歯科診療補助論は必ず押さえておきましょう!
これらは歯科衛生士の3大業務と呼ばれており、毎日の診療業務に必須の内容となります。
教科書を確認するのも良いですが、年度ごとに受けてきた試験問題をもう一度解いて確認するのが効率が良いかと思います。
試験問題を解いてみて間違った部分は当時のノートや教科書を確認し、知識を深めておきましょう。
②専門分野の内容についての知識を深めておきましょう!
歯科衛生士は歯周病のプロです。
歯周病についての内容ももちろん押さえておきましょう。
歯周病のメカニズムはもちろん、解剖学からの観点、歯周組織についてや歯周病のリスクファクターについても知識を深めておくことが求められます。
これらは実際に患者さんに対して説明や指導を行う時に最低限必要な内容となります。
「わかっている」ことと「説明できる」ことは内容が異なってきますが、基礎的なことを押さえておく事はとても重要です。
また、自分の就職先の専門分野についても確認しておきましょう。
例えば小児歯科に力を入れている歯科医院なら小児歯科学を、外科に力を入れている歯科医院なら器具の名称や術式について復習しておきましょう。
③実習で学んだ手技について確認しましょう!
スケーリングやプロービングはもちろん、ライティングやバキュームテクニックもとても大切です
新人として職場に入る事で学べることはたくさんありますが、基礎が出来ていなければ間違ったやり方をしてしまったり、つまずいてしまいます。
手技はもちろん、チェアの高さやポジショニングもとても大切です。これらは自分の体を大切に扱うことに直結するので、軽視せずに確認しておきましょう。
実際に、私はポジショニングについて自己流でやってしまったが故に姿勢が悪く肩こりしやすくなってしまったり、SRPで力を入れることが難しくなってしまいました。
皆さんはぜひ私の失敗を生かして、入職までに学校で学んだ手技についても再度確認して下さい。
今まで学んだことを復習し最低限の基礎知識を再確認しておくことで、院長先生や先輩歯科衛生士に具体的な質問もしやすくなります。
あれこれと質問することは良いことではありますが、社会人は学生ではありません。
病院実習の時のように「お客さん」として扱われるのではなく、「チームの一員」となれるよう、自分から学びを深めていくことが大切です。
そのためにも、学校で学んできた基礎知識はしっかりと自分のものにしておきましょう。
指導する側からしても基礎知識があるかないかでは話し方が変わってきます。
例えば、「レンツロ」「第二象牙質」「歯髄膜炎」などの歯科に関わる名称が分からないところから話をし始めるのと、その言葉の意味について教えるところから話を始めるのとでは訳が違いますよね。
新生活を迎えるにあたり慣れないことばかりで大変だと思いますが、事前知識として今まで学校で学んできた基礎知識について理解をしておけば少しでも疑問が少なくなると思います。
これからの自分のために、ぜひ振り返りの時間を作って下さいね。
2、先輩DHが伝授!「これだけは準備しておいて!」リスト
職場によっては入職前に用意しておくものをリストアップして渡してくださる所もありますが、最低限これだけは持っておいて!というものについてまとめておきます。
1)これだけは必ず持っておこう!<持ち物編>

①筆記用具
昨今電子カルテ化が進んできてはいますが、筆記具は自分用にメモを取ったり、院内での連絡メモや指示書の記入などで活躍するため一番大切な持ち物です。
中でも、黒、赤、青の三色が1つになったペンがあると便利だと思います。
社会人ですからキャラクターものは避けて、シンプルなものを選ぶのが良いでしょう。
ポケットから落ちることのないようクリップ式のボールペンを選ぶのもポイントです。
また、フリクションペンは自分用のメモにはよいですが、高温になると消えてしまう性質があり公的な文書には使えないので避けましょう。
職場によっては緑色など内容によって色で書き分けをされていたり、マーカーで線を引いたり、定規で線を引くなどの規定もあるため、初日に必ず確認して下さいね。
②メモ帳
メモ帳はノートタイプではなく、リングタイプのものが書きやすくて便利です。
メモは、聞いたことをすぐメモするためのものと、習ったことをまとめておく清書用とを分けておくのがオススメです。
日々たくさんのことを学んで知っていくこととなるため、メモは必須です!
走り書きのメモでは後から見づらく必要な時に見返すのも難しくなってしまうので、ぜひまとめたノートを別で持って下さいね。
2)これだけは必ず確認しておこう!<SNS編>
就職先のHPやSNSは必ず事前に確認しておきましょう。
医院から患者さんへ向けたメッセージはもちろん、院長先生はじめスタッフの情報などにも目を通しておきましょう。
また、SNSやブログなど医院の中の様子が見て取れるものも確認しておけば、入職後について具体的に考えやすくなります。
医院が掲げる理念や特徴を知っておくことで、自分が目指すべき歯科衛生士像をイメージしやすくなるのでぜひ確認しておきましょう。
3)知っておくと便利!<リアル口コミ編>
ここからは実際に現場で人気な持ち物について載せていきます。
現場で働く歯科衛生士たちが実際に白衣のポケットに入れているもの…それは、リップクリーム、目薬、ハンドクリームです。
マスクやグローブをしていることもあり、想像以上に乾燥します。
職場によっては個人ロッカーに行く暇もない!ということも多いので、すぐに使えるようリップクリーム、目薬、ハンドクリームをポケットに入れていることが多いです。
マスクの中は匂いがこもりやすいので、好きな香りのリップクリームを使うと気分転換にもなります。
反対に、ハンドクリームは無香のものを選びましょう。これは患者さんへの配慮です。
私たちの手元の匂いは患者さんにダイレクトに伝わるため、匂いのキツイものは避けのておくのがマナーです。
国家資格を取得して晴れて歯科衛生士になったとしても、学びの道はこれからです。
歯科材料メーカーが打ち出している情報サイトや、歯科専門誌のHPなどには情報がたくさん載っていますので、ぜひ日頃からチェックしてみてくださいね。
ライオン株式会社 Lサポ:https://418yobou.jp/tag/interview/
GC 友の会;http://www.gcdental.co.jp/tomo/
Dent wave:https://www.dentwave.com
デンタルダイヤモンド社:https://dental-diamond.jp/pages/
3、失敗しない!社会人としての基本マナー&心構え
1)必ず守って!社会人のマナー
「人は見た目が9割」とい言葉を聞いたことはありますか?
人は誰かを評価するとき、相手の外見や態度、言葉遣いなど多くの情報を無意識のうちに判断材料としています。
この言葉からも分かるように、自分自身の身なりや言動を整えることは社会人のマナーとして必須となります。
では、その内容について深掘りしていきましょう。
①自分から笑顔で挨拶しよう
挨拶は人との関係を築く中での第一歩となりますし、「人とのコミュニケーションは挨拶に始まり、挨拶で終わる」と言われるほど大切なものです。
ただ「おはようございます」と言うだけでなく、笑顔を意識する、目を合わせる、高いトーンの声を出す、などを意識することで相手への伝わり方は全く異なります。
自分から挨拶をすることでオープンマインドであることが相手にも伝わりますので、職場の中だけでなく患者さんに対しても明るく挨拶をしていきましょう。
②時間厳守
歯科衛生士学校を卒業し、国家取得をして入職すればその日から学生ではなく一人の社会人です。
学生気分が抜けずにあわや寝坊…なんてことのないよう気をつけましょう!
歯科医院では一人の患者さんの予約時間が決まっています。初めはなかなか難しいかと思いますが、予約時間を超過してしまうことは次の患者さんへ迷惑をかけることになってしまうため、時間を意識して診療に当たりましょう。
また、提出物についても気を付けましょう。
年末調整やレポートなど、締め切りが決められているものは必ず締め切りまでに提出できるようしっかりと計画的に動いてくださいね。
万一遅れてしまうような時には早めに報告するように努め、自己判断せずその後の指示を仰ぎましょう。
②清潔感のある身だしなみ
歯科衛生士は医療人です。医療に関わる人の身だしなみが汚いと、患者さんは不安に思ってしまいます。
まして「お口をキレイにしよう」と思って来院したのに、髪型がボサボサで白衣も汚れている歯科衛生士さんには自分の大切な口を触ってほしくないですよね。
髪はヘアオイルやヘアピンなどを使ってキレイにまとめ、ロングヘアであれば肩にかからないよう結い上げるようにしましょう。
爪が長かったり、爪の中に汚れが入っているなども不潔です。
グローブが破れてしまうなど自分の安全性が下がる原因にもなりますので、爪やすりで整えておきましょう。
③丁寧な言葉遣い

歯科医院には0歳児から90代の高齢者までと幅広い年代の方が来院されます。
丁寧な言葉遣いはもちろんのこと、年代によって言い方や言い回しにも意識を向けてみてくださいね。
また、語尾が長い話し方は幼く、聴く人によっては「バカにされている」と感じる場合もあります。
自分の話し方について不安な場合には、周りの方にどのように聞こえるかなどアドバイスをもらってみましょう。
2)謙虚な姿勢を心掛けよう
学生は学校に対してお金を払うことで学びを深める、いわゆる「支払う側」ですが、社会人は働くことで会社から給金をもらう「雇用される側」です。
新卒として入社するのはもちろん事実ではありますが、「教えてもらって当たり前」と言う態度で居られるのは学生までです。
職場の先輩達は新入社員を育てるためにいるのではなく、既にそれぞれが持っている仕事があります。
自ら進んで学ぶ姿勢、教えてもらう姿勢を示しましょう。
例えば、
「教えられた内容は必ずその場でメモを取る」
「支持されたことはその後どうなったか報告する」
「教えてもらう前には『今質問してもいいですか?』と相手の状況を確認する」
などです。
謙虚な姿勢を心掛け、相手も自分も心地よい環境を築けるよう意識しましょう。
④ホウレンソウを守る

ホウレンソウという言葉を知っていますか?これは「報告、連絡、相談」の3つの言葉の頭を取った言葉です。
指示を受けた内容に対して、その後どうなったか必ず報告しましょう。
例えば、「患者さんをチェアーまで導入して」と指示された場合、導入が完了したら報告をしましょう。
導入するまでに気づいたことや、患者さんから言われた内容などがあればそれらも報告・連絡を行います。
もし導入までに何か分からないことがあったり、アクシデントが起こった場合には必ず相談しましょう。
困ったことや失敗したことがあった場合には「報告、連絡、相談」することが重要です。
聞かれる前に自分から進んで「報告、連絡、相談」することで、相手から信用される社会人になりましょう。
ここで、エピソードを1つ。
歯科衛生士として働く中で、特に歯科医院に勤めると患者さんからの電話を受けるという業務があります。
普段から電話自体苦手でできるだけメールやネット予約を使っている、という方も多いのではないでしょうか。
そうでなくとも、家族や友人とは電話で話すことはあっても、全く知らない人、しかも「顧客(患者さん)」という立場の方と電話で話すことに社会人になる前から慣れている、という人はあまりいないと思います。
例に漏れず、私も電話はなんとなく億劫で、他に選択肢があるのなら電話はあまり利用しない人間でした。
社会人になり、歯科衛生士として働く中で受付の業務も行い、電話に出る練習を何度かした頃のことでした。
患者さんから明日の予約について変更してほしいとの連絡がありました。
お名前をお聞きして、予約を変更し、電話を切ったところまでは良かったのですが…その時、私はその方のお名前をフルネームで確認せず、苗字だけ聞いて終わってしまったのです。
予約の時間にはたまたま同じ苗字の方がおられて、どちらの方なのか分からない!となってしまったのでした。
少し慣れてきた頃にうっかりミスは起こりやすいものです。
ぜひ私の失敗談を参考にして、足りないことや間違いはないか落ち着いて考えてみてくださいね。
<終わりに>
社会人一年目は右も左も分からず、不安なことも多いかと思います。
慣れない環境で質問するのもなかなか困ってしまうと思いますが、自分の成長のためにも分からないことはそのままにせず、必ず先輩に確認しましょう。
教育担当を行う側からしても、質問されることは勉強に繋がります。
どう伝えれば相手に分かりやすく教えられるか、まだ分からないところはないか?など、聞き出すことはとても難しいことです。
自ら迷っている部分、不安な部分を発信することで先輩とコミュニケーションを取ることにも繋がるので、相手からの指示を待つのではなく積極的に働きかけてみてくださいね。
院長先生からしても、新卒一年目に求めることは「完璧な人材」ではないとよく聞きます。
それよりも「相手と関わろうとする姿勢」「学ぼうとする姿勢」などが新卒一年目には評価されます。
ぜひ積極的にコミュニケーションを取って学ぶことで立派な歯科衛生士となれるよう、頑張っていきましょう!
<この記事のまとめ>
・入職する前に学生時代の基礎知識について振り返っておこう!
・新生活を送るにあたり必要な持ち物を確認しておこう!
・社会人としてのマナーや身だしなみについて確認しよう!
今回は「入職前」にポイントを置いてお話してきました。
次回は「入職直後の業務をスムーズに覚えるコツ」について解説します。
<引用>
公益社団法人 日本歯科衛生士会:https://www.jdha.or.jp/aboutdh/shiken.html
歯科衛生士ライター:古家
歯科医療の現場で役立つ実践的な知識を届けるORTC

ORTCは「笑顔の役に立つ」を理念に、歯科界の知識を共有する場を目指しています。歯科医療の現場で役立つ最新の知識と技術を提供することで、臨床と経営の両面からクリニックの成長を支援します。最先端の技術解説や経営戦略に特化した情報を集約し、歯科医療の現場での成果を最大化。自己成長を追求するためのコンテンツをぜひご活用ください。
無料会員登録
無料動画の視聴、有料動画のレンタルが可能です。歯科業界についてのオンライン・オフラインセミナーへの参加が可能となります。
ORTCPRIME
今なら77%OFFの月額 2970円で、 ORTC内のすべての動画を見放題に。臨床の現場に役立つ最新の技術解説や、歯科医院経営の成功戦略を網羅した特別コンテンツをご利用いただけます。 歯科業界の方へ効率的に知識を深めていただける内容です。
ORTC動画一覧
ORTCセミナー一覧
まずは無料会員登録
こちらのリンクより会員登録ページへお進みください。
会員登録はこちら
ORTCPRIMEへのアップグレードも簡単!
登録後は「マイページ」から、ORTCPRIMEにいつでもアップグレード可能です。