令和8年度診療報酬改定|口腔機能管理料1・2と口腔機能実地指導料の算定・運用チェック

歯科経営, 歯科医

令和8年度診療報酬改定は、2026年6月1日に施行されました。施行から約2か月が経過した現在、院内で再確認したいのが、小児・成人の口腔機能管理料1・2の区分、46点で新設された口腔機能実地指導料、施設基準の届出、記録、併算定の運用です。本記事では、2026年8月9日時点で厚生労働省が公表している告示・通知、疑義解釈資料その11までを確認し、院長・歯科医師・歯科衛生士・請求担当者が押さえるべき実務を整理します。

算定の前提は、患者ごとの診断と臨床上の必要性です。
点数だけを基準に対象患者を広げるのではなく、関係学会の診断基準、実際に行った評価・管理・指導、患者への説明、診療録・文書・写真等の記録、必要な施設基準の届出を満たしているかを確認してください。本記事は、個別症例の算定可否を一律に保証するものではありません。

この記事でわかること

  • 小児口腔機能管理料1・2と、成人の口腔機能管理料1・2の区分
  • 口腔機能実地指導料46点の対象、施設基準、研修の経過措置
  • 管理計画、文書提供、写真、診療録などの記録要件
  • 在宅歯科栄養サポートチーム等連携指導料などとの併算定関係
  • 点数差を「そのまま増収・利益」と誤解しないための見方
  • 院内へ定着させるための実務フローと確認指標

なぜ令和8年度改定で口腔機能管理が重視されたのか

令和8・9年度の診療報酬は、2年度平均でプラス3.09%とされました。ただし、この数値は個々の歯科医院の収入が一律に3.09%増えることを意味しません。歯科では、口腔機能に関する管理の評価が見直され、小児・成人の管理料が2区分化されるとともに、歯科衛生士による口腔機能実地指導が独立した評価になりました。

厚生労働省の検討資料に示されたNDBデータでは、2023年5月に、口腔機能発達不全症の傷病名があり歯科疾患管理料のみが算定されたレセプトは130,724件、小児口腔機能管理料が算定されたレセプトは7,031件でした。これはレセプト件数の比較であり、病名がある全症例で直ちに管理料を算定できることを示す数字ではありません。今回の改定は、適切な診断・評価・管理を日常臨床へ組み込みやすくする方向の見直しとして捉える必要があります。

口腔機能管理料1・2と口腔機能実地指導料の違い

項目点数・頻度主な対象区分・算定の要点
小児口腔機能管理料190点
月1回
18歳未満で、関係学会の診断基準により口腔機能発達不全症と診断された患者口腔機能の評価項目に3項目以上該当し、評価に基づく管理計画を作成して継続管理を行う場合
小児口腔機能管理料250点
月1回
18歳未満で、関係学会の診断基準により口腔機能発達不全症と診断された患者口腔機能の評価項目に2項目該当し、評価に基づく管理計画を作成して継続管理を行う場合。検査機器の有無による区分ではない
口腔機能管理料190点
月1回
50歳以上で、歯の喪失・加齢・全身疾患等により、関係学会の診断基準で口腔機能低下症と診断された患者口腔細菌定量検査、咀嚼能力検査、咬合圧検査、口腔粘膜湿潤度検査、舌圧検査のうち、点数表で指定された検査のいずれかを実施して管理する場合
口腔機能管理料250点
月1回
50歳以上で、歯の喪失・加齢・全身疾患等により、関係学会の診断基準で口腔機能低下症と診断された患者口腔機能管理料1の検査実施条件に該当しない患者に、評価に基づく管理計画を作成して継続管理を行う場合。機器がないだけで自動的に算定できるものではない
口腔機能実地指導料46点
月1回
口腔機能の発達不全を有する患者、または口腔機能の低下を来している患者施設基準を届け出た医療機関で、所定の研修を受講した歯科衛生士が歯科医師の指示を受け、実地指導と文書による情報提供を行う場合
令和8年度改定後の主な区分

小児・成人の口腔機能管理料1・2そのものについて、口腔機能実地指導料と同じ施設基準の届出が必要なわけではありません。一方、口腔機能実地指導料46点には施設基準の届出が必要です。また、口腔管理体制強化加算には別の施設基準があります。

院長が確認すべき6つの実務ポイント

1.小児の1・2は「検査機器の有無」ではなく評価項目数で分かれる

原稿で最も重要な訂正点です。小児口腔機能管理料1は評価項目が3項目以上、小児口腔機能管理料2は2項目に該当する患者が対象です。成人の口腔機能管理料1・2と同じく「検査をしたか、しなかったか」で区分すると、誤算定につながります。

2.管理料は病名だけでは算定できない

小児・成人とも、関係学会の診断基準に基づく診断に加え、口腔機能の評価、管理計画の作成、患者等への説明・同意、文書提供、継続的な管理が必要です。提供文書の写しと管理記録は診療録へ添付または所定の方法で保存します。

小児口腔機能管理料では、初回算定日に口腔外または口腔内のカラー写真を撮影し、その後も少なくとも管理料を3回算定するごとに1回以上撮影して、診療録への添付または電子媒体での保存・管理が必要です。

3.口腔機能実地指導料は「歯科衛生士が指導した」だけでは足りない

算定には、主治の歯科医師の具体的な指示、研修を受講した歯科衛生士による実地指導、患者への文書提供が必要です。文書には、指導内容、医療機関名、主治歯科医師名、指導を行った歯科衛生士名を記載します。疑義解釈では、歯科衛生士名を名字のみとすることも認められています。

文書提供は初回時に行い、指導内容が変わったとき、改善が認められないときなど必要に応じて更新し、少なくとも6か月に1回以上行います。歯科医師は歯科衛生士への指示の要点を診療録へ記載し、歯科衛生士は歯科医師への報告と業務記録を作成します。患者へ渡した文書の写しも診療録へ添付します。

4.施設基準の届出と研修の経過措置を分けて理解する

口腔機能実地指導料の施設基準では、所定の研修を受講した歯科衛生士を1名以上配置すること、指導を行う時間帯を定めて歯科用ユニットを確保すること、歯科衛生士の処遇改善に取り組むことなどが求められます。処遇改善の実施は必要ですが、就業規則や賃金規程の改定だけが唯一の方法と定められているわけではありません。実際の取組内容を整理し、届出様式へ正確に記載してください。

2027年5月31日までの経過措置は、研修要件に関する取扱いです。
2027年5月診療分までの届出では、様式17の4に受講歴の代わりに「2027年5月までに受講予定」である旨を記載できます。2027年6月診療分以降も算定を継続する場合は、受講歴を記載して施設基準を再度届け出る必要があります。受講できなくなった場合は、遅滞なく届出を辞退します。

研修は原則として対面ですが、出席状況、研修時間、質疑応答、理解度を確認できるなど所定の条件を満たすオンライン研修も認められます。口腔機能発達不全症と口腔機能低下症を別々の研修で受講した場合も、両方の研修を届出様式へ記載すれば要件に該当します。

5.併算定は「同月不可」と「同日・内容重複時不可」を区別する

関連項目取扱い院内での確認点
C001-7 在宅歯科栄養サポートチーム等連携指導料口腔機能実地指導料を算定している月は算定不可月単位で患者ごとの算定状況を確認する
H001-4 歯科口腔リハビリテーション料3同じ日に口腔機能の指導を行い、指導・訓練内容が重複する場合は口腔機能実地指導料を算定不可実施日と指導内容の重複を記録で確認する
C001 訪問歯科衛生指導料口腔機能実地指導料に係る指導を実際に行った場合は、同日の算定が可能それぞれの算定要件を満たした実施内容と記録を残す
口腔機能実地指導料との主な併算定関係

6.「算定できる」と「算定すべき」を混同しない

制度上の要件を満たせる体制があっても、患者ごとに医学的な必要性がなければ算定対象にはなりません。また、口腔機能実地指導料は、管理料へ自動的に付随する点数ではなく、別の行為・記録・施設基準を満たした場合に評価されます。レセコン上で選択できることだけを根拠に請求しない運用が重要です。

点数差は「純増収」ではなく、同じ条件で比較する

比較単純合計改定前との差
改定前:歯科疾患管理料100点+旧管理料60点160点基準
改定後:歯科疾患管理料90点+管理料1の90点180点プラス20点
改定後:歯科疾患管理料90点+管理料2の50点140点マイナス20点
歯科疾患管理料と口腔機能管理料の単純合計

口腔機能実地指導料46点を管理料2へ単純に加えると186点となり、160点との差は26点です。しかし、この26点をそのまま「純増」と表現するのは適切ではありません。口腔機能実地指導料には、独立した臨床行為、研修、施設基準、文書・記録が必要です。また、改定前の指導加算の算定状況、対象患者の構成、返戻・査定、歯科衛生士の稼働、教育費、機器費なども反映されていません。

診療報酬点数の増減、医院の売上、利益は別の指標です。
院内で試算する場合は、「対象患者数 × 実際の算定率」だけでなく、再評価や文書作成に要する時間、歯科衛生士の人件費、研修費、検査機器費、返戻・査定、患者の自己負担と受療行動まで含めて確認してください。

施行後の院内運用を整える4段階

1 対象患者と現在の運用を棚卸しする

小児・成人の評価、診断、管理計画、写真、文書提供、実地指導、レセプト確認が、現在どこまで実施・記録できているかを確認します。

2 施設基準と研修計画を確定する

口腔機能実地指導料を算定する医院は、届出状況、研修受講歴または受講予定、指導時間、ユニット確保、処遇改善の取組を様式17の4と照合します。

3 記録様式とレセコン確認を標準化する

管理計画書、患者説明文書、写真管理、歯科医師の指示、歯科衛生士の報告・業務記録、併算定チェックを、担当者が変わっても同じ手順で行える形にします。

4 少数症例で運用し、月次監査する

最初から件数目標を追わず、少数症例で記録の抜け、患者説明の理解度、予約時間、返戻・査定を確認し、問題を修正してから対象を広げます。

月次で確認したい指標

  • 口腔機能を評価した患者数と、診断基準を満たした患者数
  • 管理計画の説明・同意・文書提供が完了した割合
  • 小児の初回写真と、3回算定ごとの写真保存の実施率
  • 歯科医師の指示、歯科衛生士の報告・業務記録、文書写しの充足率
  • 併算定チェックで差し止めた件数、返戻・査定の件数と理由
  • 再評価で確認できた機能変化と、管理計画を見直した件数

算定率や点数は補助指標です。先に確認すべきなのは、適切な患者選定、診断、説明、実施、記録が一連の流れとして機能しているかです。

患者・保護者への説明例

「むし歯や歯周病だけでなく、噛む・飲み込む・話すといったお口の機能も確認します。現在の状態を評価し、必要がある場合は、改善や維持のための計画を立てて、ご自宅で行う練習や注意点をご説明します。検査や管理の内容、費用については実施前にご案内します。」

小児では保護者へ成長発達との関係を、高齢患者では本人・家族へ食事や生活機能との関係を説明します。「点数が新設されたから行う」のではなく、患者にとっての臨床的な目的を先に伝えることが重要です。

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よくある質問

Q.検査機器がない医院でも、成人の口腔機能管理料2を算定できますか?

検査機器がないことだけで算定できるわけではありません。口腔機能低下症の診断、評価、管理計画、患者等の同意、文書提供、継続管理などの要件を満たし、口腔機能管理料1の指定検査実施条件に該当しない患者であることを確認します。

Q.小児口腔機能管理料2は、評価項目が2項目以下なら算定できますか?

いいえ。小児口腔機能管理料2は、評価項目に2項目該当する患者が対象です。1項目以下を含む「2項目以下」ではありません。小児口腔機能管理料1は3項目以上です。

Q.2027年5月31日までは、歯科衛生士が研修を受けていなくても問題ありませんか?

研修要件そのものが不要になるわけではありません。2027年5月診療分までの施設基準届出では、様式17の4へ2027年5月までの受講予定を記載できる経過措置です。2027年6月診療分以降も算定するには、受講歴を記載して再届出が必要です。

Q.管理料2と口腔機能実地指導料を算定すれば、改定前より必ず26点増えますか?

必ず増えるわけではありません。点数の単純合計では26点差になりますが、それぞれの臨床上の必要性と算定要件を満たして実際に管理・指導を行う必要があります。改定前の算定状況、患者構成、返戻・査定、人件費や研修費も異なるため、純増収・利益として扱うことはできません。

まとめ

令和8年度改定では、小児・成人の口腔機能管理料が1・2へ再編され、口腔機能実地指導料46点が新設されました。重要なのは、点数を取りに行くことではなく、対象患者の診断、評価、管理計画、患者説明、継続管理、歯科衛生士による指導、記録を院内の標準業務として整えることです。

特に、小児の1・2を検査機器の有無で区分しないこと、口腔機能実地指導料には施設基準の届出が必要であること、2027年5月までの経過措置は研修要件に関する届出上の取扱いであること、併算定の「同月不可」と「同日・内容重複時不可」を分けて確認することが重要です。最終的な算定判断は、厚生労働省の最新の告示・通知・疑義解釈と、管轄の地方厚生局の案内を確認してください。

参考情報・一次資料

情報の最終確認日:2026年8月9日

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