令和8年度診療報酬改定|歯科の点数変更・物価対応料・口腔機能管理・医科歯科連携を一次資料で解説

歯科経営

令和8年度診療報酬改定・歯科

令和8年度診療報酬改定で歯科はどう変わるのか|初診料・再診料・歯科物価対応料・口腔機能管理・医科歯科連携を一次資料で解説

令和8年度診療報酬改定では、歯科初診料・歯科再診料の引き上げ、歯科物価対応料の新設、歯科疾患管理料の見直し、口腔機能管理料の再編、光学印象の評価引き上げ、医科連携訪問加算の新設など、歯科医院の診療・算定・経営に直結する変更が行われています。

更新日:2026年7月6日/確認資料:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」、中医協資料、告示・通知、疑義解釈資料

この記事の結論:
今回の歯科改定は、単純な「点数アップ」ではありません。歯科初診料・再診料・物価対応料で基本部分を薄く底上げしながら、評価の重心は「継続管理」「口腔機能」「デジタル化」「医科歯科連携」へ移っています。つまり、従来通りの疾患管理だけでなく、口腔機能評価、在宅・病院連携、デジタル印象、技工士連携まで含めた診療体制を整える医院ほど、制度の方向性に合いやすくなります。

令和8年度診療報酬改定とは何か

令和8年度診療報酬改定は、物価高騰、人件費上昇、医療DX、2040年を見据えた医療提供体制、かかりつけ機能の強化などを背景に行われた改定です。歯科領域では、物価・賃上げへの対応に加え、口腔機能管理、医科歯科連携、在宅歯科医療、デジタル技術の活用が重要な論点になっています。

厚生労働省の公表資料では、令和7年12月9日の基本方針、令和7年12月24日の大臣折衝、令和8年1月14日の中医協への諮問、令和8年2月13日の中医協答申を経て、令和8年度改定の内容が示されています。その後、告示・通知・施設基準・疑義解釈が順次公表されているため、歯科医院側は「答申資料だけ」で判断せず、必ず最新の通知と疑義解釈まで確認する必要があります。

重要ポイント:
診療報酬改定は、点数表の数字だけで完結しません。実際の算定可否は、告示、通知、施設基準、届出様式、疑義解釈によって決まります。特に今回の歯科改定では、医科歯科連携、口腔機能管理、歯科技工士連携、ベースアップ評価料など、施設基準や院内体制に関わる項目が多いため、早めの運用確認が必要です。

歯科の主要改定点一覧|点数変更と医院への影響

項目現行改定後差分歯科医院への影響
歯科初診料267点272点+5点物件費高騰を踏まえた基本診療料の引き上げ。患者負担への影響は小さいが、医院全体では件数に応じて効く。
歯科再診料58点59点+1点再診件数の多い医院では積み上がるが、経営インパクトは限定的。
歯科外来物価対応料なし初診時3点、再診時等1点
令和9年6月以降は初診時6点、再診時等2点
新設物価上昇への段階的対応。初診・再診に付随するため、算定漏れ防止が重要。
歯科疾患管理料100点90点-10点点数は下がるが、継続管理の必要性説明が明確化。説明・同意・管理計画の質がより重要になる。
小児口腔機能管理料60点1:90点、2:50点再編対象範囲が広がる。小児の口腔機能発達不全症への評価・説明・管理体制が重要。
口腔機能管理料60点1:90点、2:50点再編口腔機能低下症への対応が細分化。検査・評価・管理計画の標準化が必要。
光学印象100点150点+50点CAD/CAM冠・CAD/CAMインレーを対象に評価が拡大。口腔内スキャナー導入医院に追い風。
医科連携訪問加算なし500点新設歯科標榜のない病院等との連携が評価対象に。依頼方法・連絡体制・掲示・ウェブ掲載など体制整備が必要。

※診療報酬は原則として1点=10円で評価されます。ただし、患者の窓口負担は保険の自己負担割合により異なります。実際の算定可否は最新の告示・通知・疑義解釈・施設基準を確認してください。

1. 歯科初診料272点・歯科再診料59点|基本診療料は小幅に引き上げ

令和8年度改定では、物価高騰による医療機関の物件費負担を踏まえ、歯科初診料は267点から272点へ、歯科再診料は58点から59点へ引き上げられました。これは大きな収益改善というよりも、物価高・人件費上昇に対する最低限の補正に近い位置づけです。

一方で、初診料・再診料の引き上げだけでは、材料費、光熱費、外注費、採用コスト、スタッフ賃上げを十分に吸収できるとは限りません。そのため、歯科医院経営としては、基本診療料の上昇を過大評価せず、口腔機能管理、デジタル化、医科歯科連携など、評価が厚くなった領域に対応できる体制を整えることが重要です。

2. 歯科物価対応料の新設|令和8年と令和9年で段階的に引き上げ

今回の改定で新設された歯科外来物価対応料は、令和8年度の初診時3点、再診時等1点から始まり、令和9年6月以降は初診時6点、再診時等2点に引き上げられる設計です。

これは、物価上昇への対応を基本診療料そのものにすべて織り込むのではなく、初診・再診等に併せて算定可能な加算として設計したものです。歯科医院側の実務では、レセコン設定、算定タイミング、患者説明、院内掲示との整合性を確認しておく必要があります。

実務上の注意:
物価対応料は点数が小さいため、現場では軽視されがちです。しかし、初診・再診に付随する項目は件数が多く、算定漏れが積み重なると年間では無視できません。制度導入時は、受付・会計・レセプト確認のオペレーションに落とし込むことが重要です。

3. 歯科疾患管理料は100点から90点へ|ただし「管理の質」はより重要に

歯科疾患管理料は100点から90点に引き下げられました。一見すると、かかりつけ歯科医機能や継続管理を重視する政策方向と矛盾して見えます。

令和8年度診療報酬改定における歯科疾患管理料の見直し

しかし、今回の改定では単なる減点ではなく、継続的な口腔管理の必要性を患者に説明することが明確化されています。つまり、歯科疾患管理料は「点数が下がった項目」ではなく、「説明・同意・管理計画・継続管理の質が問われる項目」と捉えるべきです。

歯科医院側では、管理計画のテンプレート、患者説明の標準化、メンテナンス移行時の説明文、再発防止・重症化予防の記録方法を見直す必要があります。特に、患者に対して「なぜ継続管理が必要なのか」を説明できる体制が、今後の算定と医療品質の両面で重要になります。

4. 小児口腔機能管理料・口腔機能管理料の再編|機能評価への流れが強まる

小児口腔機能管理料と口腔機能管理料は、いずれも1と2に再編されました。小児口腔機能管理料は、評価項目に3項目以上該当する患者を対象とする「1」が90点、2項目に該当する患者を対象とする「2」が50点です。口腔機能管理料も同様に、検査や評価の状況に応じて1と2に分かれます。

小児口腔機能管理料と口腔機能管理料の評価引き上げと対象拡大

ここで重要なのは、歯科医療の評価軸が「むし歯・歯周病の処置」だけでなく、「口腔機能の獲得・維持・回復」へ広がっていることです。小児では口腔機能発達不全症、高齢者では口腔機能低下症への対応が、今後ますます歯科医院の提供価値として問われます。

小児で確認したいこと

口唇閉鎖、咀嚼、嚥下、発音、食べ方、口呼吸、保護者説明、管理計画の作成などを、診療導線として整備できているか。

高齢者で確認したいこと

咀嚼能力、咬合圧、舌圧、口腔乾燥、口腔細菌、栄養状態、摂食嚥下リスクなどを評価し、継続管理へつなげられているか。

5. 光学印象150点へ|歯科治療のデジタル化は明確に評価拡大

歯科治療のデジタル化では、光学印象が100点から150点へ引き上げられました。さらに、CAD/CAMインレーだけでなく、CAD/CAM冠も対象となる方向で評価が拡大しています。

これは、口腔内スキャナー、CAD/CAM、デジタル技工、歯科技工士との連携を含めた診療フローを、制度として後押しする改定です。すでにデジタル印象採得装置を導入している医院にとっては、投資回収の見通しが立てやすくなります。

ただし、デジタル機器を導入すれば自動的に収益性が上がるわけではありません。適応症例、補綴設計、技工所との連携、スタッフ教育、患者説明、再製リスク管理まで含めて運用できるかが重要です。

6. 医科連携訪問加算500点|病院との連携体制が歯科の新しい評価軸に

医科歯科連携では、歯科標榜のない病院等からの依頼に基づき、入院患者に歯科訪問診療を行った場合の評価として、医科連携訪問加算500点が新設されました。

入院患者の口腔管理における医科歯科連携の推進

算定には、連携する医療機関からの依頼、依頼文書の写しの診療録添付、入院中の口腔管理や退院後の受診に関する情報共有などが求められます。さらに、連携体制の構築、依頼方法・連絡方法の取り決め、院内掲示、ウェブサイト掲載など、施設基準に関わる要件も示されています。

これは、歯科医院が「地域の外来診療所」にとどまらず、病院の治療課題を口腔から支える連携先として評価される流れです。地域の病院、介護施設、在宅医療チームとの関係構築が、今後の歯科医院経営における重要な資産になります。

医院経営への示唆:
医科連携訪問加算は、単発の点数というより、病院連携モデルを作れる医院にとっての入口です。病院側が「どの歯科医院に依頼すればよいか」を判断しやすいように、対応可能範囲、連絡方法、訪問可能エリア、担当者、ウェブ掲載を整えることが重要です。

7. 改定率を見ると、歯科医院の物価対応は十分とは言い切れない

令和8年度改定全体では、診療報酬全体が2年度平均でプラス3.09%と説明されています。ただし、その内訳には賃上げ分、物価対応分、経営環境悪化への対応分、効率化分などが含まれます。

物価対応分については、施設類型ごとの費用関係データに基づいて配分され、歯科診療所への配分は0.02%と説明されています。さらに、令和6年度改定以降の経営環境悪化への緊急対応分では、歯科診療所への配分は0.01%とされています。

つまり、改定率がプラスであることと、個々の歯科医院の経営が十分に改善することは別問題です。材料費、人件費、採用費、光熱費、外注費、設備投資負担が続く中で、医院側は「制度で上がった点数」を確認するだけでなく、診療構成・自費率・メンテナンス移行率・キャンセル率・スタッフ生産性まで見直す必要があります。

歯科医院が今すぐ確認すべき実務チェックリスト

1. レセコン・算定設定

歯科外来物価対応料、初診料・再診料、光学印象、口腔機能管理料、医科連携訪問加算などが正しく設定されているか確認する。

2. 説明・同意・管理計画

歯科疾患管理料、口腔機能管理料、小児口腔機能管理料について、患者説明と管理計画の記録が標準化されているか確認する。

3. 口腔機能評価の導線

小児・高齢者の口腔機能評価を誰が、いつ、どの検査で、どのように記録するかを決める。

4. 医科歯科連携体制

病院・医科診療所との連携先、依頼方法、連絡先、掲示、ウェブ掲載、文書管理の運用を整備する。

5. デジタル印象・技工連携

口腔内スキャナー、CAD/CAM、技工所連携、症例選択、スタッフ教育を一体で見直す。

6. ベースアップ評価料

賃上げ関連の届出、対象職種、賃金改善計画、実績確認を事務・労務管理と連動させる。

結論|令和8年度改定は「点数表」ではなく「診療体制」の改定である

令和8年度診療報酬改定における歯科の本質は、初診料・再診料の小幅な引き上げだけではありません。歯科疾患管理料は下がる一方で、口腔機能管理、デジタル化、医科歯科連携、物価対応、賃上げ対応へ評価が再配分されています。

したがって、歯科医院が取るべき対応は、「点数が上がった・下がった」を確認するだけでは不十分です。患者説明、継続管理、検査体制、病院連携、デジタル技工、スタッフ教育、届出管理まで含めて、医院の診療体制を制度の方向性に合わせて再設計する必要があります。

今回の改定は、歯科医院にとって負担もあります。しかし、見方を変えれば、口腔機能・医科歯科連携・デジタル化に本気で取り組む医院が、地域医療の中でより明確に評価される転換点でもあります。

ORTCで、診療報酬改定・施設基準・口腔機能管理を継続的に学ぶ

診療報酬改定は、告示を読んで終わりではありません。実際の臨床、説明、記録、施設基準、算定運用に落とし込むことで初めて医院の力になります。ORTCでは、歯科医院が制度改定に対応し、臨床と経営の両面を強化するための学習コンテンツを提供しています。

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FAQ|令和8年度診療報酬改定・歯科でよくある質問

令和8年度診療報酬改定で、歯科初診料はいくらになりますか?

歯科初診料は267点から272点へ引き上げられます。地域歯科診療支援病院歯科初診料は291点から296点へ引き上げられます。

歯科再診料はいくらになりますか?

歯科再診料は58点から59点へ引き上げられます。地域歯科診療支援病院歯科再診料は75点から76点へ引き上げられます。

歯科物価対応料とは何ですか?

物価高騰への段階的対応として新設された加算です。歯科外来では、令和8年度は初診時3点、再診時等1点、令和9年6月以降は初診時6点、再診時等2点とされています。

歯科疾患管理料は下がるのですか?

はい。歯科疾患管理料は100点から90点へ見直されます。ただし、継続的管理の必要性を患者に説明することが明確化されており、説明・同意・管理計画・記録の重要性はむしろ高まっています。

口腔機能管理料はどう変わりますか?

口腔機能管理料は1と2に再編され、口腔機能管理料1は90点、口腔機能管理料2は50点となります。小児口腔機能管理料も同様に1と2へ再編されます。

医科連携訪問加算とは何ですか?

歯科標榜のない病院等からの依頼に基づき、入院患者に対して歯科訪問診療を行った場合に評価される新設加算です。点数は500点です。連携体制、依頼方法、文書管理、掲示、ウェブ掲載などの確認が必要です。

光学印象は何点になりますか?

光学印象は100点から150点へ引き上げられます。CAD/CAM冠またはCAD/CAMインレーの製作に関するデジタル印象採得が評価されます。

主な参照資料

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