歯科医師の年収が低い理由と改善策について

コラム

歯科医師は医療従事者として高い専門性を持ちながらも、その年収が比較的低いという問題があります。この記事では、その理由と年収を改善するための策について考えていきましょう。

 

1.歯科医師の年収が低い理由

①競争の激化

歯科医師の数は年々増加しており、市場における競争が激化しています。開業医の数も増え、患者数を確保することが難しくなっています。この競争激化により、歯科医師の平均年収が低下していると言われています。

 

②保険料の低さ

歯科医療は保険が適用されるケースが多いため、その保険料の設定によっても年収は大きく変わってきます。しかし、現在の保険料は十分な報酬を得るには不十分であり、歯科医師の収入が低く抑えられています。

 

③医療費の削減

政府や保険会社などが行う医療費の削減策が、歯科医療にも及びます。これによって治療費が引き下げられ、歯科医師の収入も減少しているのです。

 

④経営スキルの不足

多くの歯科医師は開業し、自ら経営を行うことが多いですが、経営スキルやビジネス知識に乏しい場合があります。効率的な経営ができず、経費の削減や収益の最大化が困難となり、結果的に収入が低くなることがあります。

 

⑤勤務時間の制約

歯科医師は一般的に忙しく労働時間が長いですが、労働時間の制約も年収の低さに影響しています。診療時間が限られているため、短時間で効率的に診療を行う必要があり、診療日数や患者数を増やすことが難しい場合もあります。

 

⑥新しい技術・治療法への対応

歯科医療は常に進化しており、新しい技術や治療法が登場します。これに対応するためには学習やスキルアップが必要ですが、時間や費用の制約からなかなか追いつけないこともあります。これにより、競争力が低下し、収入も低くなる可能性があります。 

 

2.医科と歯科の大きな違いー保険点数-

現在の保険点数で比べると、医科の初診料は288点、再診料は73点ですが、一方で歯科の初診料は251点(87%)で再診料は51点(69.5%)と評価が低いです。

 

歯科診療では、一人の患者にかける時間は診療内容によりますが、通常は30分程度必要です。診療時間を8時間とすると、1日に診られる患者数は16人から20人程度になります。厚生労働省の20161125日の第3回歯科医師の資質向上等に関する検討会で提示された「歯科診療所に従事する歯科医師11日当たりの患者数」の資料によれば、14.1人から17.4人となっています。

 

これに対して医科では、「診療所経営の教科書第2版(日本医事新報社)」で厚生労働省の「社会医療診療行為統計(2015年)」および「医療施設調査(2014年)」を用いて計算したものが紹介されていますが、1日当たりの患者数は36人から43人で、平均すると40人です。また、7時間の診療時間で1人当たりの平均診療時間は10.5分となっています。医科の診療科目や診療内容により異なることもありますが、これでは収入格差が出るのも当然と言えます。

 

参考:埼玉県保険医協会HP

 

そのため、歯科医療の経済的価値を高めるためには、患者に対してその重要性や予防の重要性を啓蒙することが重要です。また、歯科医療の保険制度の見直しや公的な支援策の充実も必要です。これにより、患者の意識が高まり、歯科医師の収入が向上する可能性があります。

 

 

3.年収向上のための改善策

歯科医師の年収を向上させるためには、以下の改善策があります。

 

① 副業の活用

上記のような理由から、歯科医師の年収が低い現状を改善するためには、副業の活用が考えられます。副業によって、追加の収入源を確保し、生活を安定させることができます。例えば、学校や企業での講演やセミナーの講師、専門誌での執筆活動など、専門知識を生かした活動を行うことができます。

 

②個別療法の提供

個別療法とは、保険が適用されない特定の治療方法やサービスを提供することです。例えば、審美歯科やインプラント治療などが該当します。保険外の治療であるため、その分の費用を高く設定することで、歯科医師の収入を向上させることができます。

 

③勉強会や研究活動の参加

さらなる専門性の向上を図るために、勉強会や研究活動に積極的に参加することも重要です。これによって、他の歯科医師との交流や最新の技術や知識を学ぶことができます。それによって、患者への提供する価値を高め、それに応じた報酬を得ることができます。

 

④専門性の高い分野への特化

競争が激しい一般的な歯科医療から、特定の分野に特化することで差別化を図ることができます。例えば、矯正歯科やインプラントなど、需要の高い分野に注力することで、専門性を高め、高額な診療料を設定することができます。

 

まとめ

今回は歯科医師の年収が低い理由と、改善策について説明しました。

特に歯科は、医科と違い緊急性がないと一般の方には思われがちですが、歯科の大切さを実感してもらい、リコールの患者さまを増やしていくことも私たちの収入を上げるために必要だと日々実感しております。

 

歯科衛生士ライター 西山

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