歯科クリニックのスタッフには「歯科衛生士」と「歯科助手」という仕事があります。
どちらも歯科診療に欠かせない大切な役割を持ち、診療中には歯科医師の治療を補助していますが、それぞれの違いについては知らない方も多いのではないでしょうか?
今回はそんな歯科衛生士と歯科助手の違いについてご紹介します。
1、歯科衛生士と歯科助手の違い 「資格の有無」

1ー① 歯科衛生士
歯科衛生士とは、国家資格を持つ歯科医療業務を行う専門職です。
歯科衛生士になるためには、専門学校もしくは養成校に通い、必要なカリキュラムを修了し、国家試験に合格する必要があります。
歯科衛生士の学校は、文部科学大臣の指定した歯科衛生士学校(大学や短期大学)か、都道府県知事の指定した歯科衛生士養成所(専門学校)に分類されます。
どの都道府県にも歯科衛生士学校・養成校が一校以上あり、専門学校の中には社会人などが学べる夜間部を持つ学校もあります。
養成所での就業年数は3~4年で、入学資格は高校を卒業していることや同程度以上の学力が認められた場合に得られます。
歯科衛生士学校のカリキュラムは国家資格を取得するための教育を行うため、学ばなくてはならない内容が各学校共通して定められています。
教育内容は、「基礎分野」「専門基礎分野」「専門分野」の3つに分けられており、医療従事者として卒業後に医療現場で活躍できるよう様々なことを学びます。
- 基礎分野
- 専門基礎分野
- 人体(歯・口腔を除く)の構造と機能
- 歯・口腔の構造と機能
- 疾病の成り立ち及び回復過程の促進
- 歯・口腔の健康と予防に関わる人間と社会の仕組み
- 専門分野
- 歯科衛生士概論
- 臨床歯科医学
- 歯科予防処置論
- 歯科保健指導論
- 歯科診療補助論
- 臨地実習
卒業するためには93単位(2,570時間以上)が必要であり、そのうち歯科医院や病院などの医療機関、高齢者施設などでの臨床実習が20単位(900時間)となっています。
令和6年の歯科衛生士国家試験の受験者数は7,950名で、合格率は92.4%でした。
厚生労働省によると、令和4年度の全国の就業歯科衛生士数は145,183人で、前年度よりも2,423人の微増となりました。

歯科衛生士といえば女性、と思う方も多いかもしれませんが男性の歯科衛生士も存在します。
2015年に歯科衛生士法に記載されていた歯科衛生士の定義が変更されて、これまでに使われていた「女子」という表記が「者」に改正されました。
歯科衛生士の男性の割合は全体の0.4%と非常に低いものの、令和2年3月の段階で、男性の歯科衛生士は国内に38人いるとされています。
1ー② 歯科助手
歯科助手とは、歯科医院において歯科医師や歯科衛生士をアシストする職種のことです。
英語ではDental Assistantと訳されることから、DAと呼ばれることもあります。
歯科助手には特に必要な資格はありません。
歯科助手資格認定制度などの民間資格はありますが、必須の資格ではないため未経験でも挑戦することができます。
この国家資格のあるなしによって、歯科衛生士と歯科助手それぞれの業務内容が大きく異なってきます。
2、歯科衛生士と歯科助手の違い 「仕事内容の違い」

歯科衛生士と歯科助手の違いの2つ目は、「仕事内容の違い」です。
それぞれの仕事内容の違いから、歯科衛生士は医療業務従事者、歯科助手は一般事務職に区分されます。
歯科衛生士は患者さんの口腔内に触れて医療行為(歯科衛生士法第2条に基づく歯科医療業務)に携わることができますが、歯科助手は国家資格を持たない職業のため医療行為を行うことはできません。
具体的に言うと、歯科衛生士や歯科医師は患者さんのお口の中に触れることができますが、歯科助手は患者さんのお口の中に触れることはできないのです。
では、それぞれの業務内容について詳しく見ていきましょう。
2ー①歯科衛生士の仕事内容
歯科衛生士の主な仕事は「医療行為」です。
特に重要な業務は「3大業務」と呼ばれており、「歯科予防処置」「歯科診療補助」「歯科保健指導」の3つです。
⑴歯科予防処置
歯科予防処置とは、虫歯や歯周病などの歯科疾患を予防するための処置を言います。
歯を強くし再石灰化を促進する「フッ素塗布」、歯石の除去を目的とした「スケーリング」、歯ブラシでは落ちない汚れや着色を専用の機械を使って落とす「PMTC(機械的歯面清掃)」、歯の溝を特殊な材料で埋めることで虫歯を防ぐ効果のある「シーラント」などがあります。
⑵歯科診療補助
歯科診療補助は歯科医師の診療の補助を行うことで、患者さんの治療に必要な器具を用意したり、診療中の歯科医師のサポートを行います。
さらに歯科医師の指示のもとで一部の処置を行うこともあります。
⑶歯科保健指導
歯科保健指導は、患者さんへ行う歯磨き指導のことです。正しい歯磨きの方法や生活指導を行うことで、患者さんが自分の歯の健康を維持できるようにアドバイスします。
幼稚園や小学校へ訪問して指導を行う場合もあります。
診療所や歯科医院での仕事が主ですが、最近では高齢化社会の影響もあり訪問歯科の需要も高まっています。
歯科医師と同伴または歯科衛生士単独で患者さんの自宅や高齢者施設へ赴き、歯周病の治療や口腔ケア、リハビリ、入れ歯の修理といった業務を行います。
2ー②歯科助手の業務内容
歯科助手の主な仕事は「非医療行為」です。
前述した通り、歯科助手には資格がないため患者さんの口の中に触れることはできません。
医療行為に当たる業務を行うと、指示をした歯科医師だけでなく実際にその業務を行った歯科助手も刑事罰を科される可能性があります。
歯科助手の違法行為は「知らなかったから」といって許される問題ではありません。
歯科助手が行うと違法にあたる具体的な業務内容は、以下の通りです。
・患者さんの口腔内への直接的な歯ブラシ指導
・フッ素塗布
・レントゲン撮影
・スケーリング(歯垢や歯石の除去)
・咬合採得(噛み合わせをとる)
・印象採得(印象材で歯型をとる)
・歯に詰め物をする
・歯を削る
・抜歯
・麻酔など注射を打つ
レントゲン撮影は、医師、歯科医師、診療放射線技師のみが行える行為です。従って、歯科助手だけでなく、歯科衛生士や看護士もレントゲン撮影を行うことはできません。
また、歯科助手は印象材を使用して歯型をとることはできませんが、印象材を練ることは可能です。
歯科助手の主な業務内容は、「受付」「診療介助」「備品管理」「事務業務」であり、幅広く歯科診療を支える役割となっています。
歯科医院によっては患者さんへのダイレクトメールの作成や、レセプト作成業務も歯科助手が行うこともあります。
このように、歯科助手は医療行為に当たらない範囲での業務を行い、歯科医師・歯科衛生士をサポートしています。
3、歯科衛生士が行なってはいけないことは?

歯科衛生士も国家資格を持っているからといって、歯科医療に関わることを全て行えるわけではありません。
歯科衛生士が行なってはいけないことは、基本的に歯科医師が行う業務範囲になります。
⑴絶対的歯科医行為
歯科衛生士が行なってはいけないことは、絶対的歯科医行為に該当する行為です。絶対的歯科医行為とは、歯科医しか行えない業務内容になります。
絶対的歯科医行為にあたる具体的な業務内容は、以下の通りです。
・歯や神経を抜く行為
・歯に詰め物を詰める行為
・歯を削る行為
・被せ物をかぶせる行為
⑵相対的歯科医行為で歯科医師の監視下にない行為
・歯の表面に麻酔薬を塗る行為
・歯石の除去
・ホワイトニング
・歯の矯正ワイヤーの交換や装着
これらは歯科医師の監視下にいれば行える業務となっています。
歯科医師の監視下以外でこの行為を行うと法律違反となるため、相対的歯科医行為を行う場合には歯科医師の指導の下で作業を行わなければなりません。
今回は歯科衛生士と歯科助手の違いについてご紹介しました。
それぞれの違いだけでなく、行なってはいけない医療行為についても知ることで法に触れることのないよう気をつけていきましょう。
<参考文献>
日本歯科衛生士会:https://www.jdha.or.jp/aboutdh/shugyo.html
https://www.jdha.or.jp/aboutdh/shiken.html
厚生労働省:https://www.mhlw.go.jp/content/10804000/001364284.pdf
一般社団法人 全国歯科衛生士教育協議会:
https://www.kokuhoken.or.jp/zen-eiky/publicity/file/core_curriculum_2022.pdf
歯科衛生士ライター:古家
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