動画の紹介
今回の講義内容は、クリンチェックをつくるうえで新渡戸講師がどんなことを考えているか、またどのような視点から治療計画を立てているかについて掘り下げていく内容になります。
予測実現性を高めるためのクリンチェック作成及び、アライナー枚数を減らす方法を中心として、最後までご覧ください。
動画内容
症例概要について
この症例は重度の上顎前突を伴う不正咬合です。
上顎前歯が下顎前歯を大きく覆い被さり、下の歯が見えないほどの深い被蓋になっています。
また上顎前歯は舌側に強く傾斜しており、おそらく患者の強い口唇圧が原因と考えられます。
上下顎正中は左側にずれており、下顎歯列弓の形態もいびつで調和が取れていません。
プロファイル
新渡戸歯科医師(以下:新渡戸先生)の見解は以下のとおりです。
・下の歯が見えないくらい上顎が覆い被さってる
・前歯舌側傾斜している
・唇の力が強い
・正中が左側にズレている
・下顎歯列弓がいびつ
これらのプロファイルに基づいて以下で詳しく見ていきましょう。
矯正の診断ができれば、クリンチェックは簡単にできる
矯正治療において正確な診断を行うことが重要であり、診断さえしっかりできていればクリンチェックを用いた治療計画の立案は比較的容易です。
抜歯が必要な症例では、どの歯を抜くかは決まっておらず、ケースバイケースで総合的に判断する必要があります。
矯正治療では可逆的な処置から始めることが大原則です。
歯を抜いてしまうと二度と元には戻りません。
そのため、安易な抜歯は避けるべきです。
抜歯を選択する場合も、必要以上のスペースを作ってオーバートリートメントにならないよう注意が必要になります。
警戒すべきはリセッション
この症例では、4本抜歯を検討する歯科医師の方もいるかもしれません。しかしながら、15mmものスペースは必要ないでしょう。
下顎前歯の唇側傾斜が強いため、リセッションが起こる可能性が高いです。
したがって、下顎前歯の移動には細心の注意が必要となります。
一方、上顎では近心移動の予測実現性が低いと考えられるため、無理な移動は避けるべきです。特に上顎7番は移動させない方が良いでしょう。
抜歯を選択した際のスペースの閉鎖は、段階的に行うことが大切です。
一気にスペースを閉じるのではなく、まずはスペースの半分程度を閉じ、その後必要に応じて追加的に閉じていくというように、ファースト、セカンド、サードと順を追ってスペースを管理していきます。また、不要な歯の回転は避けるべきです。
臼歯部の叢生はIPRで解消することを検討しても良いかもしれません。
しかし、前歯部の舌側傾斜が強いことを考慮すると、抜歯が必要になるケースも十分考えられます。
インビザライン矯正は抜歯の検討に悩む歯科医師の方は多いですが、新渡戸先生の講義を聞く限り最終手段ととらえていいと感じています。
クリンチェックの調整テクニック
マウスピース矯正治療において、歯の移動の予測実現性を高めることは非常に重要です。
何をしたいかを明確にしてクリンチェックをしましょう。
まず忘れてはいけないのは、トラブルになりそうなクリンチェックは行わないことです。
ひとことで容易に「治す」と言って契約すると患者様とトラブルになりかねません。
治療のゴールを明確にし、どんな治療をするかを念頭に置きましょう。
現実的な治療計画を患者様と共有することを忘れないでください。
予測通りに歯が動かなければ、治療期間が延びたり、望ましくない結果につながったりする恐れがあります。
クリンチェックの段階で、いくつかの工夫を施すことで、予測実現性を向上させることができます。
アライナーの枚数を増やし過ぎない
まず、アライナーの枚数を必要以上に多くしないことが大切です。
枚数が多くなればなるほど、予測実現性は下がる傾向にあります。
そのため、なるべく30枚以内に抑えることを目指します。
26枚や14枚といった枚数設定が理想的でしょう。
歯の移動量を適切にコントロールすることも重要です。
1ステージあたりの移動量が大きすぎると、予測通りの動きが得られない可能性が高くなります。
特に、前歯の過度な唇側傾斜は、歯肉退縮のリスクを高めます。
症例に応じて、IPRを活用したり、ストリッピングを施したりするなどして、移動量を適切に調整します。
アタッチメントと予測実現性
また、アタッチメントの設置も予測実現性に影響を与えます。
第一小臼歯を抜歯した症例では、適切な位置にアタッチメントを付与することで、望ましい歯の移動を促すことができます。
アタッチメントの効果的な使用は、アンカレッジの確保にも役立ちます。
抜歯スペースの閉鎖は、段階的に行うことが賢明です。
抜歯部のスペースを一気に閉じようとすると、隣在歯が傾斜してしまったり、意図しない回転が生じたりする恐れがあります。
そこで、スペースの半分程度を閉じるところから始め、徐々に閉じていくというアプローチが有効です。
歯の移動の予測実現性を評価するためには、定期的なモニタリングが欠かせません。
2ヶ月に1回程度の頻度で患者を来院していただき、歯の動きをチェックします。
半年に1回は口腔内スキャンを行い、新しいアライナーを追加するのも良いでしょう。
こまめなフォローアップによって、治療の軌道修正を図ることができますので欠かさないようにしてくださいね。
まとめ
最後に、包括的な診断に基づいて治療計画を立てることが何より大切です。
そのためには、十分な時間をかけて資料を分析し、綿密な調査を行う必要があります。
歯科矯正治療に関する知識を深めるためのスタディグループへの参加もおすすめです。
予測実現性の高いマウスピース矯正治療を行うには、クリンチェックの段階で細やかな調整を施すことが重要になります。
アライナーの枚数、歯の移動量、アタッチメントの設置、スペース閉鎖のタイミングなど、さまざまな点に配慮しましょう。
加えて、定期的なモニタリングを怠らず、包括的な診断に基づいて治療計画を立てることが求められます。
ここまでが新渡戸先生のクリンチェック公開で得られた学びになります。
ぜひ臨床の場で生かして下されば幸いです。
ORTConlineでは日頃の診療で他の人には聞けない悩みを解決するため、様々なテーマを取り扱っています。
1本15分程度で構成しているので、ぜひ隙間時間にスキルアップしてみませんか?
ここまでお読みくださりありがとうございました。
動画の方も是非ご視聴ください!