歯周病は多くの日本人成人が罹患しているとされる、国民病ともいえる疾患です。進行すると歯の喪失や全身疾患との関連も指摘されており、早期かつ的確な治療が求められます。
こうした中、注目を集めているのが「ブルーラジカルP-01」。世界初の光触媒技術を応用した歯周病治療器であり、2024年に日本で製品化されました。
1.東北大学発の革新:17年の研究が実を結ぶ
「ブルーラジカルP-01」は、東北大学大学院歯学研究科の菅野太郎教授が2006年から取り組んできた研究成果に基づいています。
当初、補綴学を専門としていた菅野教授は、歯科医療の成功には感染除去と患者の行動変容が不可欠であるとの結論に至り、歯周病治療の革新に挑戦しました。
この取り組みは、活性酸素研究の第一人者である河野雅弘教授との連携により、光触媒技術を応用したラジカル殺菌治療器の開発へと発展しました。
・低侵襲・高効率で新たな歯周病治療 ラジカル殺菌治療器が社会実装へ
・患者行動変容アプリ「ペリミル」と連動する新規歯周病治療器「ブルーラジカルP-01」が社会実装へ Luke株式会社と東北大学の産学連携プロジェクト
・ブルーラジカルP-01で進化する歯周病治療:藤尾歯科医院の新たな取り組み より引用
研究開始から17年を経て、2023年7月に医療機器製造販売の承認を取得し、2024年1月から販売が開始されました。この間、東北大学の産学連携推進機構(CRIETO)の支援を受け、歯科領域では前例の少ない治験を成功裏に実施し、社会実装への道を切り開きました。
2.光触媒の力で治療効果と安全性を両立

「ブルーラジカルP-01」は、青色光と過酸化水素水、酸化チタンを用いた光触媒反応により、OHラジカルを発生させることが特徴です。このOHラジカルが歯周ポケット内の細菌やバイオフィルムを強力に分解・殺菌。従来のスケーリングやルートプレーニングだけでは除去しきれない深部の病原性微生物に対して、非侵襲的かつ選択的にアプローチできます 。
3.従来の歯周病治療と異なる点

ブルーラジカルP-01は、従来の歯周病治療と大きく異なる新しい治療法として注目されています。これまでの歯周病治療は、主にスケーリングやルートプレーニングなどの機械的な方法で歯垢や歯石を取り除くことが中心でした。場合によっては外科的処置や抗生物質の投与も必要とされ、患者への身体的・精神的負担が大きいという課題がありました。
一方、ブルーラジカルP-01は、光感受性物質と青色LEDを用いた光力学療法を基盤にしており、殺菌力に優れるだけでなく、周囲の健康な組織への影響を最小限に抑えることができます。この非侵襲的なアプローチにより、痛みや腫れなどの副作用が少なく、回復も早いとされています。また、従来の治療法では届きにくかった歯周ポケットの奥深くまで作用し、原因菌を的確に除去することが可能です。
このように、ブルーラジカルP-01は、従来法の欠点を補いながら、より安全で効果的な歯周病治療を実現する画期的な技術です。
4.臨床導入のメリット

この治療器はコンパクトな設計で、一般的なユニットに簡単に設置可能。レーザー機器のような煩雑な取り扱いや保護対策も不要で、スタッフへのトレーニング負担も最小限に抑えられます。さらに、患者への侵襲が少なく、治療時の痛みや出血が軽減されるため、患者満足度の向上にも寄与します。
5.患者行動変容アプリ「ペリミル」との連携
「ブルーラジカルP-01」は、患者の口腔ケアの習慣化を促すアプリ「ペリミル」と連携しています。このアプリは、治療情報や経過を可視化し、歯磨き指導やタイマー機能を通じて、患者の行動変容を支援します。これにより、治療後のプラークコントロールの維持が期待され、再発防止に寄与します。
6.ブルーラジカルP-01導入を検討する医療機関へのポイント

ブルーラジカルP-01の導入を検討する医療機関にとって重要なのは、技術面だけでなく、運用体制やスタッフ教育、患者説明の準備を含めたトータルな視点です。
まず機器の設置については、コンパクトな設計が施されており、通常の歯科用ユニットに容易に組み込むことができます。高額な設備工事や大規模なスペースの確保が不要なため、一般歯科医院でも無理なく導入可能です。使用時においても、レーザーのような特別な保護装置を必要としない点は、日常診療における運用のしやすさにつながります。
導入に際しては、操作方法や症例選定に関する知識を習得するための初期研修が推奨されます。製造・販売元や提携大学によるトレーニングが提供されており、臨床現場でのスムーズな立ち上げに寄与します。また、スタッフ全体で治療の目的や効果、患者対応時の注意点を共有することが重要です。とくに自由診療であることから、受付・説明担当者も治療の概要や費用構造を把握している必要があります。
さらに、院内の導入体制を整備する際は、「診療方針としてどのようなケースに使用するのか」「他の治療法との使い分けはどうするか」といった方針の明確化がカギになります。患者にとって安心できる環境を構築するためにも、治療選択の一環として公平な判断材料を提示することが求められます。
7.患者が安心して選べるための情報提供の工夫

ブルーラジカルP-01は自由診療であるため、保険診療との違いや費用、治療効果、注意点を患者が十分に理解し、自らの意思で選択できるような情報提供が不可欠です。ここで重要になるのが、インフォームド・コンセントを支えるための工夫です。
例えば、視覚的にわかりやすいパンフレットや図解資料を活用することで、患者の理解度を高めることができます。歯周病の進行メカニズム、従来の治療法との違い、ブルーラジカルP-01がどのように作用するかなどをイラスト付きで示すことで、不安や誤解の防止に繋がります。
説明の際には、治療の適応とされないケースや、他の治療法を優先する場合があることも率直に伝えることが大切です。また、「一度で治る」「誰にでも効果がある」といった過度な表現は誇大広告に該当するおそれがあるため避け、科学的根拠に基づいた説明に徹する必要があります。
また、費用についても、明細書や治療プランと併せて説明し、患者が納得したうえで治療に進めるよう配慮します。金額だけでなく、必要な回数、追加費用が発生する可能性、再発時の対応など、あらかじめ説明することで、後々のトラブルを防止できます。
患者が治療後も安心して通院を続けられるよう、治療後の経過観察やメンテナンス体制、必要に応じての再評価スケジュールなどを提示し、信頼関係の構築を目指すことも重要です。
このように、患者の不安を軽減し、納得のうえで治療を受けてもらうための情報提供は、ブルーラジカルP-01に限らず、現代の歯科医療における重要な役割を果たします。
まとめ|今後の展望:歯科医療の枠を超えて
菅野教授は、「ブルーラジカルP-01」の技術を応用し、インプラント周囲炎やカリエスの治療に対応する第2弾の開発を進めています。さらに、歯周病治療における菌血症のリスク軽減効果の検証や、青色可視光を照射できる歯ブラシの製品化、さらにはペットの歯周病治療への応用など、他領域への展開も視野に入れています。
このように、「ブルーラジカルP-01」は、東北大学の長年にわたる研究と産学連携の成果として誕生し、歯周病治療の新たな選択肢を提供しています。
そして、歯科医師や衛生士にとって、患者満足度の向上と差別化を図る有力なツールとなり得るでしょう。
導入にあたっては、医療法の広告規制や患者説明の徹底を踏まえ、誠実かつ適切な情報提供が不可欠です。
今後のさらなる技術革新と応用範囲の拡大により、歯科医療の未来を切り拓く存在となることが期待されます。
歯科衛生士ライター 西
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