歯科用エアフローのすべて|原理から臨床応用、導入メリットと注意点まで徹底解説

歯科知識

近年、歯面清掃におけるスタンダードとして定着しつつある「歯科用エアフロー」。その高い清掃力と患者満足度の向上を背景に、多くの歯科医院で導入が進んでいます。本記事では、エアフローの原理から具体的な臨床応用(PMTC、インプラント周囲炎のメインテナンスなど)、最新パウダーの特徴、注意点、禁忌症例までを網羅。導入検討中の方や、さらに活用の幅を広げたい歯科医師・歯科衛生士の方にとって、実践に役立つ内容を詳しく解説します。

エアフローの原理と特徴

エアフローとは何か?

エアフローは、専用のパウダー、水、エアーを同時に噴出することで、歯面や歯周ポケット内のバイオフィルムやステインを除去するシステムです。従来のスケーリングやポリッシングでは届きにくい部位にもアプローチでき、低侵襲で効率的な清掃が可能です。

バイオフィルム除去に有効な理由

バイオフィルムは、細菌が集合して形成する粘着性のある膜で、歯周病や虫歯の原因となります。エアフローは、微細なパウダーを用いて、バイオフィルムを物理的に破壊し、洗浄することで、再付着を防ぎます。特に、歯周ポケット内のバイオフィルム除去には、専用のノズルを使用することで、5mm程度までの深さに対応可能です。従来のラバーカップ+ペーストのPMTCと比べ、時間短縮や術者・患者双方の負担軽減につながります。
 

エアフローの主な臨床応用とは?

 

歯面清掃(ステイン除去・着色汚れ)

コーヒーやタバコによるステイン、プラークの除去に優れています。従来のスケーラーやブラシで対応しにくい小窩裂溝部にもパウダーが届きやすく、短時間での効果的なクリーニングが可能です。

PMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)

エアフローはPMTCの中核を担う手段の一つとして定着しています。歯肉縁上・縁下のバイオフィルムに対して高い清掃効率を持ち、歯周病予防に直結します。

インプラント周囲炎のメインテナンス

インプラント表面はチタンなどの素材でできており、金属製器具での清掃は微細な損傷を招くリスクがあります。エアフローでは、グリシンやエリスリトールなどの低侵襲パウダーを使用することで、インプラント体や上部構造を傷つけずに周囲炎予防が可能です。
 

パウダーの種類と用途の違い

パウダー名粒径(μm)主な成分主な用途
重炭酸ナトリウム約65NaHCO₃頑固なステイン・着色除去
グリシン約25アミノ酸歯周ポケット清掃・インプラントケア
エリスリトール約14糖アルコール歯肉縁下・メインテナンス全般

最新機種では、パウダーの切り替えが容易で、縁上と縁下の両方に対応できる設計となっています。
 

導入のメリットとは?

 

・術者の疲労軽減:ラバーカップやスケーラーでの擦過動作が減り、長時間の施術でも手や肩への負担が少ない。

・患者の快適性向上:音や振動が少なく、嫌悪感が軽減される。

・診療効率アップ:一人あたりの処置時間が短縮され、予約枠の最適化が可能。

・自費診療への活用:エアフローを用いたPMTCやインプラントメインテナンスを、自費診療メニューとして導入可能。
 

使用時の注意点|適切な操作と症例選択が鍵


エアフローは非常に有用ですが、使用には以下のような注意が必要です。

パウダーの選択ミスによる歯面・補綴物の損傷

重炭酸ナトリウムは粒子が粗く、樹脂・セラミック補綴物、露出象牙質への使用には適していません。これらにはグリシンやエリスリトールが推奨されます。歯科衛生士は施術前に補綴物の種類を把握し、パウダーを選択する判断力が求められます。

エアロゾルの拡散による感染リスク

エアフロー施術では微細な水・粉塵が飛散し、診療空間のエアロゾル濃度が一時的に上昇します。必ず以下の対策を講じましょう。
 

①口腔外バキュームの併用

②高性能マスク、アイガードの着用

③十分な換気

④使用後の清拭とユニットの消毒
 

このような対策を徹底することで、安全で感染リスクの少ない施術が可能となります。

 

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禁忌症例と慎重な対応が必要なケース

エアフローは基本的に安全ですが、以下のような症例には注意が必要です。

絶対禁忌

・呼吸器疾患(喘息・COPDなど):エアロゾル吸入が症状を悪化させる可能性があります。

・ナトリウム制限患者(重炭酸ナトリウム使用時):高血圧、心疾患患者などにはエリスリトールを使用するなど配慮が必要です。

慎重対応

・小児や高齢者:誤嚥リスクが高く、術中のポジショニングやバキューム対応が重要です。

・知覚過敏の強い患者:低圧・低温設定で対応するか、施術前に脱感作処置を検討します。

事前の問診とリスク評価、症例に応じた使用条件の調整が求められます。
 

実際の診療現場での活用ポイント

歯科医師の視点

・術前にインプラント部や補綴物の材質を確認し、対応パウダーを衛生士に指示。

・定期検診メニューにエアフローを組み込むことで、メインテナンス来院率が上昇。

歯科衛生士の視点

・パウダーの選択と照射角度、距離(5mm、30〜60度が推奨)を常に意識。

・処置後は患者に水や粉の残留がないか確認し、快適な診療体験を提供。
 

まとめ|エアフローを制して、メインテナンスの質を高めよう

エアフローは、歯科における歯面清掃・メインテナンス技術に革新をもたらしました。その原理や適応、使用方法を正しく理解し、安全性と効果を最大限に引き出すことが重要です。

導入済みの医院は活用範囲を広げ、未導入の医院もこの機会に再検討してみてはいかがでしょうか?エアフローを適切に使いこなすことで、医院の診療の幅を広げるのはもちろん、患者満足度向上と歯周病管理の質の向上につながります。
 

さらに詳しい導入事例や情報は、歯科医療従事者向けプラットフォームORTCでも紹介されています。最新機器の導入や臨床応用について学びたい方はぜひチェックしてみてください。

 

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歯科衛生士ライター 東雲あや

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