歯科治療におけるペーパーポイントの活用と最新動向

歯科知識

根管治療をはじめとする歯科診療において、ペーパーポイントは欠かせない重要な器具です。
この小さな吸収性コーンは、根管内の湿気や分泌物を効果的に取り除き、治療の成功率を大きく左右します。

この記事では、歯科医療従事者の皆様を対象に、ペーパーポイントの基本から応用、最新の動向に至るまで、包括的に解説します。

歯科におけるペーパーポイントの基本的役割と重要性


ペーパーポイントの基本的役割と重要性は2点あります。

その2点は以下のとおりです。


・ペーパーポイントとは

・根管治療における重要性
 

それぞれ詳しく解説していきます。

歯科|ペーパーポイントとは

ペーパーポイントは、高度に吸収性のある圧縮紙(通常は高品質の漂白木材パルプ)で作られた円錐形の器具です。
根管治療において根管内の乾燥や薬剤の塗布に使用され、治療の精度と成功率に直接影響を与えます。

歯科治療における根管治療の重要性

根管治療の成否は、根管内を適切に乾燥させ、完全に封鎖することにかかっています。
ペーパーポイントは以下の理由から非常に重要です。

微細な水分の除去

根管充填前に根管内の水分を完全に除去することによって、シーラーの接着性を高める。

薬剤の塗布

根管内への消毒剤や薬剤の運搬・塗布が可能になる。

根管内の状態確認

引き抜いたペーパーポイントの状態を観察することで、根管内の出血や浸出の有無の確認ができる。

診断補助

細菌培養検査やPCR検査のためのサンプル採取に使用できる。

適切なペーパーポイントの使用は、根管充填の質を向上させ、治療後の合併症リスクを削減することが可能です。

ペーパーポイントの種類と選び方


ペーパーポイントの種類と選び方において重要なことは、サイズと材質、基準値になります。
以下では、3点に着目して解説していきますので参考にしてください。

サイズとテーパー

ペーパーポイントは様々なサイズとテーパー(先細の度合い)で提供されています。
以下一覧でまとめているのでご参考ください。

 ISO規格サイズ

 適応する根管

特徴

15-25

狭小根管

前歯・小臼歯の細い根管に使用

30-40

中等度根管

多くの大臼歯根管に使用

45-60

広い根管

高齢者や広い根管に使用

70-140

非常に広い根管

未完成根歯や根尖切除後など特殊状況で使用

並行して、テーパーは以下のような選択ができます。

・標準テーパー(.02)
・増大テーパー(.04/.06など)
・カスタムテーパー

標準テーパーは従来の根管形成に対応し、増大テーパーはNiTiロータリーファイルなど現代的な根管形成対応が可能です。
また、カスタムテーパーは、特殊な根管形状に対応するために設計されており臨機応変に対応し治療を進めることができます。

歯科治療での吸収性と材質

ペーパーポイントには、吸収性の異なる様々な種類があります。

・標準吸収性
・高吸収性
・超高吸収性

標準吸収性は一般的な使用に適しており、高吸収性は湿潤した根管に効果をもたらします。
超高吸収性は難しい症例や出血を伴う根管治療に有効とされており、臨床の場で多く使用されます。

材質においても選択肢は、以下のとおりです。

・セルロース製
・シルク繊維強化
・クロルヘキシジン含浸

セルロース製はもっとも一般的に使用される材質で、経済的にも扱いやすいタイプです。
シルク繊維強化は、強度が高く折れにくいことが特徴の材質で、多くの歯科医院で採用されています。

また、クロルヘキシジン含浸は抗菌作用が付加された特殊タイプです。

歯科治療においての選択基準

最後にペーパーポイントの適切な選択基準です。

①根管形成に使用した最終ファイルサイズに合わせる
②根管の湿潤度に応じた吸収性を選択する
③根管の形状に合わせたテーパーの選択をする

根管形成に使用したファイルサイズに合わせるには、根管と同じサイズ、またはわずかに小さめのサイズを選択しましょう。
根管の湿潤度に応じた吸収性の判断は、出血や浸出液がある場合、高吸収性のものを使用するようにしてください。
根管の形状に合わせたテーパーの選択は、根管形成で使用したファイルと同じテーパーのペーパーポイントを使用します。

歯科治療で使用する適切な使用方法とテクニック


次の項では、適切なペーパーポイントの使用方法とテクニックをご紹介します。

基本的な手順から高度なテクニックまで触れていますので、覚えておくとよいでしょう。

基本的な使用手順

以下では、基本的な手順を解説しています。

準備: ラバーダム防湿下で無菌的に取り扱う
サイズ選択: 最終形成ファイルと同じサイズを選択
挿入: ペーパーポイントを根管長まで静かに挿入
待機: 5-10秒間待機して水分を吸収させる
除去: 慎重に引き抜き、状態を確認

ペーパーポイントを慎重に引き抜き、状態を確認する際、 ペーパーポイントが乾いた状態で出てくるまでひたすらこの工程を繰り返します。

高度なテクニック

高度なテクニックとしては、以下の用法があります。こちらは覚えておくと診療の幅が広がるのでぜひご参考にしてください。

 段階的乾燥法

①大きめのサイズから始め、徐々に小さいサイズへ
②まず根管上部の水分を除去し、次に深部へ進む
③最後に適切なサイズで完全乾燥を確認

 

 サイドベントニードル併用法

①サイドベントニードルで根管を軽く吸引
②その後ペーパーポイントで残りの水分を除去
③乾燥時間の短縮と効率化が可能

 

 薬剤塗布テクニック

 

① ペーパーポイントに適量の薬剤を浸透
②根管内に一定時間留置
③均一な薬剤分布を確保

 

高度なテクニックを覚え実践する前に、まずは基本のテクニックを身につけましょう。

ペーパーポイント使用上の注意点とトラブルシューティング


ペーパーポイントの使用上の注意点は知っておいて損はありません。事前に回避できるからです。
具体的にトラブルとして多い、トラブルシューティングとその対策をまとめていますので、目を通しておきましょう。

よくある問題と対策

以下によくある問題と、その対策方法を記載しています。
ぜひ参考にし、覚えておきましょう。

問題

対策

ペーパーポイントの破折

①挿入前に湾曲をチェック
②強い力をかけない
③シルク繊維強化タイプを使用

不十分な乾燥

①より多くのペーパーポイントを使用
②高吸収性タイプに変更
③サイドベントニードルを併用

過剰挿入

①ストッパーを使用
②作業長を正確に測定
③慎重に挿入

交差感染

①厳格な無菌操作
②使いまわしを絶対避ける
③未使用品は密閉保管

特殊な症例への対応

以下では、特殊な症例への対応をまとめておきます。

持続的な出血がある場合

① 一時的に止血剤(塩化アルミニウム含有製剤など)を適用
②超高吸収性ペーパーポイントを使用
③必要に応じて治療を延期

 

 湾曲根管での使用

①事前にペーパーポイントを根管形状に合わせて湾曲させる
②細めのサイズを選択
③慎重に操作し、無理な力をかけない

 未完成根への対応

①特大サイズのペーパーポイントを使用
②低濃度の消毒剤のみを使用
③再生療法を考慮

 

最新のペーパーポイントに関する動向


近年のペーパーポイントは技術的進歩を遂げています。
ナノテクノロジー応用製品、カラーコード化、抗菌成分含浸、バイオセラミック対応、生分解性向上などの革新が見られます。

これにより吸収性と強度が両立され、サイズの識別が容易になりました。

クロルヘキシジンや銀ナノ粒子の含有により抗菌性が向上し、バイオセラミックシーラーとの相性を考慮した設計になっています。

また、根管治療のアプローチ変化に伴い、ペーパーポイントの使用法も進化しています。
単回使用の標準化、デジタル根管治療への対応、最小侵襲治療との統合、ワンビジット治療の増加が特徴です。

感染管理の徹底と共に、3Dプリント技術を用いたカスタムペーパーポイントが普及しています。

マイクロエンドドンティクスに適した精密設計と、効率的な乾燥プロトコルの重要性が高まっています。
これらの変化により、臨床がよりスピーディーかつ的確に行えるようになりました。

医院経営の視点|効率的な使用とコスト管理について


ペーパーポイントの在庫管理を最適化するためには、実際の使用パターンに基づいた在庫調整が重要です。
適切な発注サイクルを設定し、期限切れや過剰在庫を防ぎましょう。
一般的に使用頻度の高いサイズ(#25-35)を多めに確保することで、効率的な在庫管理ができます。

効率的な使用戦略としては、診療プロトコルを標準化して無駄な使用を減らすことが大切です。
スタッフへの適切な選択と使用法の教育を徹底し、ディスペンサーを活用して汚染リスクを減らし取り出しを効率化しましょう。

コスト削減のためには、頻用サイズは大容量パックでの大量購入割引を活用します。
処置の重要度に応じて、重要処置には高品質製品、通常使用には標準品を使い分けるのが効果的です。

また、チェアごとの使用量を定期的に評価し、品質を維持しながらコストパフォーマンスの高い製品を選定することで、総合的なコスト管理が実現できます。

臨床現場でのベストプラクティス


以下では、実際の医療現場でのベストなプラクティスを記載しています。

・チームアプローチ

・質の向上と標準化

・患者教育への活用

上記3点です。

それぞれみていきましょう。

チームアプローチ

・歯科衛生士との連携
・アシスタントとのコミュニケーション
・スタッフ教育 

質の向上と標準化

・使用プロトコルの文書化
・チェックリストの活用
・定期的な技術評価

 

患者教育への活用

・治療説明ツールとしての活用
・治療の重要性理解の促進
・治療への参加意識の向上

歯科医院におけるペーパーポイント活用では、歯科衛生士との連携による効率的なワークフロー構築と、アシスタントとの明確なコミュニケーションが重要です。
質の向上には使用プロトコルの文書化やチェックリストの活用、定期的な技術評価が効果的です。

また、ペーパーポイントは患者教育ツールとしても活用でき、根管治療の説明や適切な乾燥・消毒の重要性を視覚的に示すことで、患者の治療参加意識と質の高い治療への理解を促進できます。

スタッフ教育を通じて定期的なトレーニングと最新情報を共有することも不可欠です。

まとめ

ペーパーポイントは、その小ささに反して根管治療の成功に大きな影響を与える重要な器具です。
適切なサイズ選択、使用テクニック、最新情報の把握により、治療の質を向上させることができます。
また、効率的な使用と適切な在庫管理は、医院経営の視点からも重要です。

日々の臨床で、このシンプルながら重要な器具の潜在能力を最大限に引き出し、患者様により良い治療を提供するための一助となれば幸いです。

参考文献

  1. 日本歯内療法学会. (2022). 『根管治療の臨床ガイドライン 第3版』
  2. Cohen, S., & Hargreaves, K. M. (2021). Cohen's Pathways of the Pulp, 12th Edition.
  3. 須田英明, 興地隆史監修. (2023). 『エンドドンティクス21 改訂第5版』
  4. Journal of Endodontics. (2023). Special Issue: Advances in Root Canal Drying Techniques.
  5. 日本歯科医師会. (2024). 『感染対策マニュアル 改訂版』

     

編集・執筆

歯科専門ライター 萩原 すう

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