歯科スプリントの基礎知識|種類・用途・作成のポイントを徹底解説

歯科知識

スプリントは、顎関節症やブラキシズムの治療のイメージがありますが、咬合調整やスポーツガードとしても広く活用されています。
社会人チームなどでスポーツしている方に聞いてみると、スプリント使用していない場合も多いなと感じています。スポーツによっては、歯牙破折や脱臼のリスクもあり、スポーツ選手ではないから大丈夫という問題ではありません。
スプリントは、患者の口腔内を守り、健康を維持するための重要なツールになります。必要な患者にスプリントのことをお伝えし、正しく使用していけるように歯科医院で体制を整えていくべきではないでしょうか?特に、開業している先生方は、スプリントの適用範囲や保険請求のポイントなどを理解し、患者満足度を高めることが重要です。
本記事では、歯科スプリントの基本から臨床現場での活用方法、作成方法、経営面での活用まで詳しく解説をしていきます。
 

スプリントの定義と役割



歯科スプリントとは、顎関節症やブラキシズム(歯ぎしり・食いしばり)などの治療に使用される口腔内装置のことです。患者の咬合を安定させ、筋肉や顎関節への負担を軽減する役割があります。また、歯の磨耗や咬合力による歯の動揺などを防ぐためにスプリントを用い、適切に使用することで患者の歯の寿命を伸ばすことに繋がります。
 

メリット

・非侵襲的な治療法であり、患者の負担が少ない。

・咬合の安定化による長期的な口腔健康の維持。

・矯正治療や補綴治療の補助として活用可能。
・外傷など、歯を守る役割がある。
 

デメリット

・長期間の使用によりスプリントが変形・摩耗する。定期的にチェックを行い、作り替えも必要とする。

・誤った装着方法では症状が悪化する可能性がある。

・患者のコンプライアンス(装着遵守)が必要となる。使用しなければ、治療にならない。
 

スプリントの適用範囲について


歯科のスプリントの適用範囲は広く、以下のようなケースで活用されます。
・顎関節症(TMD)の治療
・ブラキシズム(歯ぎしり・食いしばり)の抑制
・スポーツガード
・スリープスプリント
・歯の移動防止(矯正後の保定も含む)
スプリントは、保険適用でも作成できるのですが、症状や使用目的によって保険適用外になりますので、注意しておきましょう。
 

顎関節症治療


顎関節症の症状緩和を目的としており、顎の位置を安定させ、筋の緊張を和らげるために使用していきます。
 

ブラキシズム(歯ぎしり・食いしばり)の抑制


歯ぎしりによる歯の磨耗や破折など歯を守る目的で使用します。他にも、歯ぎしり・食いしばりによる顎の痛みを軽減させる目的もあります。
 

スポーツガード



ラグビーやボクシング、最近ではサッカーや野球をしている方もし始めています。スポーツ時の衝撃緩和を目的としており、歯の損傷防止のため使用されます。
スポーツガードは、保険適用外となります。また、スポーツによって、色の指定があることもあり、歯科医院で対応できるのか問診をしておきましょう。
 

スリープスプリント(睡眠時無呼吸症候群)



無呼吸にならないよう軌道を確保することが目的で、睡眠時に呼吸しやすいような顎の位置でスプリントを固定をします。
これは、医師からの診断書、治療依頼書があった場合、保険適用で作成できます。患者が作成したいからといって、歯科医院で勝手に保険内で作成することはできません。
 

歯の移動防止(矯正後の保定も含む)



矯正治療後の後戻り防止や補綴治療時の一時的な歯の固定を目的に使用されます。
 

スプリントの種類


顎関節症、ブラキシズム(歯ぎしり・食いしばり)のスプリントには種類があり、患者の症状によって選択をしていきます。

1)前歯接触型
前歯が当たり、奥歯がかみ合わない状態になります。開口筋の緊張が強く、噛みしめなどで生じる過緊張を緩和させる目的があります。
前歯だけしか当たらないため、長期の使用は難しく、また、前歯が動揺している場合は使用が難しいです。
2)全歯列接触型
全ての歯に均等に当たるようにスプリントを調整します。一般的に使用されているスプリントで、スタビライゼーションとも言います。
筋肉や顎関節の負担を軽減させることができ、顎の位置を安定スァせることができます。
3)下顎前方整位型
下顎を前に誘導する誘導板がついたスプリントになります。顎関節に音が鳴る場合に使用されることが多いです。
誘導板がついていることもあり、長期で使用するとかみ合わせに影響が出る場合もあります。長期で使用せず、短期の治療用に使用していきます。
 

スプリントの院内作成と調整のポイント


スプリントの作製工程

1)診断・適応判断:患者の症状を評価し、適切なスプリントの種類を決定。

2)印象採得:精密な型取りを行い、患者に合ったカスタムメイドのスプリントを作成。作成するスプリントで必要な部分をチャックしておきます。患者が何度も印象採得されなくていいように、模型にした際に歯頸部から何mmくらい必要なのか、院内で共有をしておきましょう。
最近では、アルジネートではなく、スキャナーで印象する場合もあるので、患者負担は軽減されてきています。

3)製作・調整:咬合調整を施し、最適な適合状態を確保。
患者が、何のためにスプリントを作成したのかを確認し、患者に合わせて製作・調整を行っていきます。
・前歯や臼歯に厚みをもたせたいのか
・かみ合わせの位置を合わせる
・スプリントシートの固さや厚みの決定
などは、技工する時点で決めておきたいことです。
セット時に、かみ合わせの調整を行います。調整後は、研磨をし、スプリントにざらつき感が残らないようにしておきましょう。
 

4)装着指導:患者に正しい使用方法やケア方法を指導。
清潔に保てない場合、歯肉や粘膜などに炎症が出ることもあります。口腔の健康維持のためのスプリント使用が、その他の悪影響になるなんてこともあります。そうならないようにしっかりと直接指導を行い、説明書などお家でも患者が確認できるように渡しておくのが無難です。
 

まとめ


歯科スプリントは、多くの歯科疾患の予防と治療において重要な役割を果たします。
・デジタル技術の活用:CAD/CAM技術を導入し、精度の高いスプリント作成を行う。

・院内ラボの活用:外注せずに院内で製作できる体制を整えると、コスト削減につながる。

・患者教育を徹底:装着・清掃指導を強化し、トラブルを未然に防ぐ。
最新の技術を活用し、効率的な運用を目指すことで、より質の高い治療を提供できるでしょう。

スプリントをした方がいいかどうかや患者へ説明するのは歯科医師よりも歯科衛生士の方が多いような気が致します。開業医の先生方にとって、患者満足度を向上させるためには、適切なスプリントの選択と管理が欠かせません。そのためのスタッフへの周知や教育も必要だと感じています。


歯科衛生士ライター:原田
 

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