【更新】歯科医院のキャンセル料は取れるのか?厚生労働省の訂正通知と大臣会見から考える現場の課題

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【更新】歯科医院のキャンセル料は取れるのか?
厚生労働省の訂正通知と大臣会見から考える現場の課題

「取れる」と読めた3月27日通知から一転、5月29日に対象が限定された問題を整理

厚生労働省は、令和8年3月27日付通知「『療養の給付と直接関係ないサービス等の取扱いについて』の一部改正について」において、「予約に基づく診察の患者都合によるキャンセル料」を、療養の給付と直接関係ないサービス等の具体例として明記しました。

この文言だけを見ると、予約制で診療を行う歯科医院において、患者都合の直前キャンセルに対してキャンセル料を徴収できるようになった、と受け止められる余地がありました。

しかし、令和8年5月29日に厚生労働省は訂正通知と疑義解釈を公表し、大臣会見でも、対象は「選定療養における予約に基づく診察」に限られること、予約料を取っていない場合は今回の整理に基づくキャンセル料は取れないことを説明しました。

本記事では、一次情報をもとに制度上の結論を整理したうえで、歯科医院の現場がなぜ困るのか、そして本来どのような議論が必要なのかを、ORTC編集部として踏み込んで考えます。

この記事で整理すること

  • 令和8年3月27日通知で何が示されたのか
  • 令和8年5月29日に何が訂正されたのか
  • 歯科医院は通常の予約診療でキャンセル料を取れるのか
  • 「予約制の歯科医院」と「選定療養における予約診察」の違い
  • 大臣会見で示された「予約料を取っていない場合はキャンセル料を取れない」という整理
  • PRIME会員向けに予定していたキャンセル料テンプレート提供の方針変更
  • すでにキャンセル料を導入している医院の実務上の考え方
  • ORTC編集部としての見解
  • 歯科医院が今後取るべき現実的な対応

歯科医院において、直前キャンセルや無断キャンセルは、単なる「予約の空き」ではありません。

予約枠の裏側には、歯科医師、歯科衛生士、チェア、器具、材料、滅菌、技工物、説明時間など、医院側が事前に確保している多くの医療資源があります。

特に歯科診療では、1枠あたりの時間設計が細かく、患者ごとの処置内容に応じて準備も変わります。

そのため、直前キャンセルや無断キャンセルが続けば、医院経営だけでなく、他の患者の受診機会にも影響します。

こうした背景から、キャンセル料を導入したい、あるいはすでに導入している歯科医院が存在すること自体は、現場感覚として決して不自然ではありません。

先に結論

令和8年5月29日時点の厚生労働省の整理では、今回のキャンセル料は「選定療養における予約に基づく診察」を患者都合で診察日の直前にキャンセルした場合に限られます。通常の予約制で診療している歯科医院が、今回の通知だけを根拠にキャンセル料を徴収できる、という理解は適切ではありません。ただし、ORTC編集部としては、事前説明と患者の納得に基づく合理的なキャンセル料まで一律に否定されるような運用は、歯科医院の実態と健全な医院経営を十分に踏まえていない可能性があると考えます。

3月27日通知では「キャンセル料が取れる」と読める余地があった

令和8年3月27日付の厚生労働省通知では、「療養の給付と直接関係ないサービス等」の具体例として、次の項目が追加されました。

3月27日通知で示された文言

予約に基づく診察の患者都合によるキャンセル料

対象は、診察日の直前にキャンセルした場合に限るとされ、診察の予約に当たり、患者都合によるキャンセルの場合には費用徴収がある旨を事前に説明し、同意を得ることが示されていました。

この時点では、「選定療養における」という限定表現はありませんでした。

そのため、一般的な予約制の歯科医院でも、患者都合の直前キャンセルについて、事前説明と同意があればキャンセル料を徴収できるのではないか、という受け止めが生じるのは自然です。

実際、歯科医院の現場では、以前から無断キャンセルや直前キャンセルへの対応に悩む医院が多く、キャンセル料の導入は長年の実務課題でした。

3月27日通知だけを読めば、「患者都合」「診察日の直前」「事前説明」「同意」という条件を満たせば、キャンセル料の徴収が制度上整理されたと理解されても不思議ではありませんでした。

5月29日に大どんでん返し。「選定療養における」が追加された

ところが、令和8年5月29日、厚生労働省は関連通知の一部訂正を公表しました。

訂正後の文言では、「予約に基づく診察の患者都合によるキャンセル料」ではなく、「選定療養における予約に基づく診察の患者都合によるキャンセル料」とされました。

訂正前

予約に基づく診察の患者都合によるキャンセル料

一般的な予約診療にも広く読める表現でした。

訂正後

選定療養における予約に基づく診察の患者都合によるキャンセル料

対象が、選定療養としての予約診察に限定される表現になりました。

この訂正によって、歯科医院の実務上の意味は大きく変わりました。

多くの歯科医院は予約制で診療を行っていますが、それは必ずしも「選定療養における予約に基づく診察」ではありません。

つまり、単に予約制で診療しているだけでは、今回の通知の対象にはならないという整理です。

ここが重要

「予約制の歯科医院」と「選定療養における予約に基づく診察」は同じではありません。多くの歯科医院が日常的に行っている予約管理は、制度上の選定療養としての予約診察とは別に考える必要があります。

疑義解釈でも「選定療養に限る」と明確化された

同日付で公表された疑義解釈資料でも、今回のキャンセル料が選定療養における予約診察に限られることが確認されています。

疑義解釈のポイント

選定療養における「予約に基づく診察」で、診察日の直前に患者都合でキャンセルされた場合に限る

疑義解釈では、「療養の給付と直接関係ないサービスとして『予約に基づく診察の患者都合によるキャンセル料』が追加されたが、これは選定療養における『予約に基づく診察』において、当該診察日の直前に患者都合で予約がキャンセルされた場合に限って、患者から費用の徴収が認められたということか」という問いに対し、「そのとおり」と回答されています。

これにより、少なくとも令和8年5月29日時点の厚生労働省の公式整理としては、通常の予約診療全般を対象にしたキャンセル料ではないことが明確になりました。

大臣会見では「予約料を取っていない場合はキャンセル料は取れない」と説明

令和8年5月29日の大臣会見では、記者から「予約料を取っていない場合はキャンセル料が発生しないということでよいのか」と質問がありました。

これに対して大臣は、選定療養においては、一定の要件を満たした医療機関が地方厚生局に報告することで、予約診察に係る特別の料金、いわゆる予約料を徴収できることを説明しました。

そのうえで、令和8年度診療報酬改定では、選定療養による予約を患者都合により診察日の直前にキャンセルした場合にキャンセル料の徴収を可能とした、と説明しています。

さらに、予約料を取る場合に一定のキャンセルがあった場合はキャンセル料の徴収を可能とする整理であり、予約料を取っていない場合にはキャンセル料は取れない、という趣旨の発言がありました。

大臣会見から読み取れる制度上の結論

  • 今回のキャンセル料は、選定療養としての予約診察が前提
  • 予約料を徴収している医療機関であることが前提
  • 患者都合で診察日の直前にキャンセルされた場合に限る
  • 予約料を取っていない通常の予約診療では、今回の整理に基づくキャンセル料は取れない
  • 3月27日通知の表記は、一般的な診療におけるキャンセル料も認められるように受け止められかねないものだった
  • 厚生労働省は、現場に混乱を生じさせたことについて謝罪している

PRIME会員向けテンプレート提供についてのお詫びと方針変更

ORTCでは、令和8年3月27日付通知を踏まえ、当初、PRIME会員向けに「キャンセル料の院内掲示物」や「患者説明用テンプレート」の提供を予定していました。

これは、歯科医院が患者に対して分かりやすく事前説明を行い、無断キャンセルや直前キャンセルに対するルールを整備しやすくすることを目的としたものです。

しかし、令和8年5月29日の厚生労働省による訂正通知・疑義解釈・大臣会見により、今回のキャンセル料の対象は「選定療養における予約に基づく診察」に限られることが明確化されました。

そのため、通常の予約制診療を行う歯科医院に対して、キャンセル料の徴収を前提としたテンプレートを提供することは、現時点では誤解を招く可能性があると判断しました。

PRIME会員の皆さまへ

当初ご案内していた「キャンセル料徴収を前提とした院内掲示物・患者説明テンプレート」については、今回の厚生労働省の訂正を踏まえ、提供を見合わせることにしました。ご期待いただいていた会員の皆さまには、心よりお詫び申し上げます。

一方で、直前キャンセルや無断キャンセルへの対策が不要になったわけではありません。

むしろ今回の件を受けて、歯科医院には「キャンセル料を取るための掲示物」ではなく、「予約を守っていただくための患者説明」「無断キャンセルを減らすための院内ルール」「予約変更時の連絡方法を明確にする案内文」が必要だと考えています。

ORTCでは今後、制度上の誤解を招かない形で、歯科医院が患者さんに予約ルールを丁寧に伝えるための資料や文例の整備を検討していきます。

ORTC編集部としての判断

今回、ORTCが重視したのは、会員医院に誤った制度理解を広げないことです。歯科医院の健全な予約管理は重要ですが、厚生労働省の訂正後に、通常診療でもキャンセル料を徴収できるかのようなテンプレートを提供することは適切ではないと判断しました。

歯科医院にとって何が問題なのか

今回の問題は、単に「通知の文言が訂正された」というだけではありません。

歯科医院の現場では、予約を守ってもらうことが診療品質、スタッフ配置、医院経営、他の患者の受診機会に直結しています。

にもかかわらず、3月27日通知ではキャンセル料を認める方向に読める表現が示され、5月29日に「やはり選定療養に限る」と訂正されました。

これは、現場の医院にとっては判断を揺さぶる大きな変更です。

現場の課題 1

予約枠は医院の重要な医療資源である

歯科医院では、患者ごとに時間、スタッフ、チェア、器具、材料を確保します。直前キャンセルは、単に患者が来なかったという話ではなく、確保した医療資源が使われなくなる問題です。

現場の課題 2

他の患者の受診機会にも影響する

直前キャンセルがあると、本来その時間に診療を受けられたかもしれない別の患者の機会も失われます。これは医院経営だけでなく、患者側の公平性にも関わる問題です。

現場の課題 3

すでにキャンセル料を運用している医院もある

3月27日通知以前から、事前説明を行い、患者の納得を得たうえで、無断キャンセルや直前キャンセルに対するキャンセル料を設定しているクリニックはあります。こうした実務のすべてを、単純に不適切と見るのは現場感覚とずれがあります。

現場の課題 4

制度の説明が揺れると、医院と患者の信頼関係にも影響する

国の通知をもとに運用準備を進めた医院が、その後の訂正で方針変更を迫られると、患者説明、院内掲示、予約システム、スタッフ対応を再度見直す必要が生じます。

ORTC編集部の見解:今回の整理は、現場実態への理解が十分とは言いにくい

ここからは、一次情報を踏まえたORTC編集部としての見解です。

厚生労働省が、今回のキャンセル料を「選定療養における予約診察」に限定した制度上の整理は、通知・疑義解釈・大臣会見を読む限り明確です。

したがって、歯科医院が今回の通知だけを根拠に、通常の保険診療の予約キャンセル料を一律に導入することは慎重に考える必要があります。

しかし一方で、歯科医院の現場実態を考えると、「予約料を取っていないならキャンセル料も取れない」という説明だけで問題が解決するわけではありません。

なぜなら、多くの歯科医院では、予約料を別途徴収していなくても、患者ごとに診療枠を確保し、その時間に合わせて人員・設備・材料を準備しているからです。

ORTC編集部としては、患者に十分な事前説明を行い、患者が納得したうえで、社会的に妥当な範囲のキャンセル料を設定すること自体は、健全なクリニック経営の一部として議論されるべきテーマだと考えます。

もちろん、キャンセル料は患者へのペナルティとして乱用されるべきものではありません。

高額なキャンセル料、不明確な徴収条件、事前説明のない請求、患者都合といえない事情への一律請求は、患者との信頼関係を損ない、トラブルにつながります。

しかし、事前に明確なルールを示し、患者が理解・同意したうえで、無断キャンセルや直前キャンセルによる医院側の実損・機会損失を一定範囲で考慮する運用まで否定されると、予約診療を支える現場が苦しくなります。

ORTC編集部が問題提起したいこと

  • 予約料を取っていない医院でも、予約枠には明確な医療資源が投入されている
  • 直前キャンセル・無断キャンセルは、医院経営だけでなく他の患者の受診機会にも影響する
  • 事前説明と患者の納得に基づく合理的なキャンセル料まで否定的に扱うのは、現場実態とずれる可能性がある
  • 国の通知表現が一度広く読める形で出され、その後訂正されたことは、現場の混乱を招いた
  • 今後は、通常の予約診療における直前キャンセル・無断キャンセル対策について、より実態に即した整理が必要である

ただし、歯科医院が今すぐ通常診療でキャンセル料を請求するのは慎重に

ORTC編集部として現場側の問題意識を示す一方で、実務上は慎重な対応が必要です。

5月29日の訂正通知と疑義解釈により、今回の厚生労働省通知を根拠にできるキャンセル料は、選定療養における予約診察に限られることが明確になっています。

そのため、通常の予約診療について、今回の通知を根拠に「厚労省が認めたのでキャンセル料を取れます」と説明するのは避けるべきです。

実務上の注意点

  • 「厚労省が通常診療のキャンセル料を認めた」とは書かない
  • 「保険診療でも一律にキャンセル料が取れる」とは説明しない
  • 選定療養としての予約診察と、一般的な予約制診療を混同しない
  • 患者に対して、制度上の根拠を過大に説明しない
  • 導入・継続を検討する場合は、地方厚生局、顧問弁護士、医療法務に詳しい専門家に確認する

では、歯科医院はキャンセル対策として何をすべきか

今回の訂正により、通常の歯科医院がすぐにキャンセル料を導入できる、という状況ではなくなりました。

しかし、キャンセル対策を諦める必要はありません。

むしろ、キャンセル料だけに頼らず、予約ルール、患者説明、リマインド、予約システム、スタッフ対応を整えることが重要です。

対応 1

予約変更の連絡期限を明文化する

「変更・キャンセルは前日までにご連絡ください」など、患者に分かりやすいルールを提示します。法律論より先に、患者が守りやすい行動基準を作ることが重要です。

対応 2

無断キャンセルが与える影響を丁寧に説明する

「医院が困るから」だけでなく、「その時間に治療を受けたい他の患者さんの機会にも関わる」という視点で伝えると、患者の理解を得やすくなります。

対応 3

LINE・SMS・予約システムでリマインドを行う

無断キャンセルの一部は、単純な忘れによって発生します。予約前日のLINEやSMS通知、予約確認メールなどを仕組み化するだけでも、一定の改善が期待できます。

対応 4

繰り返し無断キャンセルがある場合の予約制限を決める

何度も無断キャンセルが続く患者については、次回以降の予約方法を制限する、当日予約のみとするなど、医院としての対応方針を明文化することも検討できます。

対応 5

スタッフ説明を統一する

受付スタッフ、歯科衛生士、歯科医師で説明が異なると、患者トラブルにつながります。予約時、初診時、キャンセル時の説明文を統一しておくことが重要です。

ここが実践ポイント

今回の訂正後、多くの歯科医院にとって現実的なのは、「キャンセル料を請求すること」ではなく、「キャンセルが起きにくい仕組み」と「繰り返し無断キャンセルがある場合の院内ルール」を整えることです。

すでにキャンセル料を導入している医院はどう考えるべきか

すでにキャンセル料を設定している歯科医院は、今回の訂正を踏まえて、自院の運用を再点検する必要があります。

重要なのは、「これまで取っていたから大丈夫」と考えないことです。

今回の厚生労働省の整理は、少なくとも診療報酬制度上の通知としては、選定療養における予約診察に限定されています。

一方で、民法上の合意、自由診療領域、医院独自のキャンセルポリシーなど、別の観点で検討が必要な場合もあります。

そのため、既存のキャンセル料運用については、制度通知だけでなく、患者説明、同意取得、金額の妥当性、対象範囲、領収証・会計処理、トラブル時の対応まで含めて見直すことをおすすめします。

既存運用の確認項目

  • キャンセル料の対象となる診療内容を明確にしているか
  • 「直前キャンセル」「無断キャンセル」の定義が明確か
  • 患者に事前説明を行っているか
  • 患者の同意を確認しているか
  • 金額が社会的に見て妥当か
  • やむを得ない事情への例外規定があるか
  • 自由診療と保険診療で運用を分けているか
  • 地方厚生局や専門家に確認すべき内容が残っていないか

歯科医院が誤解してはいけないポイント

誤解 1

保険診療でも一律にキャンセル料が取れる

5月29日の訂正後、今回の通知を根拠に通常の保険診療の予約キャンセル料を一律に徴収できる、という理解は適切ではありません。

誤解 2

予約制なら選定療養の予約診察に該当する

通常の予約制と、選定療養における予約診察は別です。地方厚生局への報告や予約料の徴収など、制度上の整理を確認する必要があります。

誤解 3

院内掲示をすれば自由に請求できる

院内掲示は重要ですが、それだけで十分ではありません。制度上の対象、事前説明、同意、金額の妥当性、領収証の扱いなどを確認する必要があります。

誤解 4

今回の訂正で、キャンセル対策そのものができなくなった

キャンセル料の制度上の扱いと、キャンセル対策は別です。予約ルール、リマインド、患者説明、繰り返し無断キャンセルへの対応など、医院が整備できることは多くあります。

この記事の結論

令和8年3月27日通知では、「予約に基づく診察の患者都合によるキャンセル料」が、療養の給付と直接関係ないサービス等の具体例として明記されました。

しかし、令和8年5月29日の訂正通知と疑義解釈により、対象は「選定療養における予約に基づく診察」に限られることが明確化されました。

さらに大臣会見では、予約料を取っていない場合には、今回の整理に基づくキャンセル料は取れないという趣旨の説明がされています。

歯科医院が押さえるべき結論

  • 3月27日通知は、通常の予約診療にも広く読める表現だった
  • 5月29日に「選定療養における」が追加され、対象が限定された
  • 疑義解釈でも、対象は選定療養における予約診察に限ると確認された
  • 予約料を取っていない通常の予約診療では、今回の通知を根拠にキャンセル料を取れるとはいえない
  • 当初予定していたPRIME会員向けのキャンセル料テンプレート提供は見合わせる
  • 一方で、直前キャンセル・無断キャンセルが歯科医院の医療資源と経営に与える影響は大きい
  • 今後は、現場実態に即したキャンセル対策の議論が必要である
  • 医院としては、まず予約ルール、患者説明、リマインド、スタッフ対応を整備すべきである

ORTC編集部としては、今回の厚生労働省の訂正により、制度上の対象が明確になったこと自体は重要だと考えます。

しかし、歯科医院の予約診療の実態を踏まえれば、事前説明と患者の納得に基づく合理的なキャンセル料まで、制度上の整理からこぼれ落ちてしまうことには課題が残ります。

キャンセル料は、患者に対する罰則ではありません。

本来は、予約診療の価値を守り、他の患者の受診機会を守り、医院が安定して医療を提供し続けるためのルール設計の一部として議論されるべきテーマです。

FAQ

歯科医院はキャンセル料を取れるようになったのですか?

今回の厚生労働省の整理では、対象は「選定療養における予約に基づく診察」に限られます。通常の予約制診療で一律にキャンセル料を取れるようになった、という理解は適切ではありません。

予約料を取っていない医院でもキャンセル料を取れますか?

大臣会見では、予約料を取っていない場合には、今回の整理に基づくキャンセル料は取れないという趣旨の説明がされています。通常の予約診療で導入を検討する場合は、別途、法務・制度面の確認が必要です。

選定療養における予約診察とは何ですか?

一定の要件を満たした医療機関が地方厚生局に報告することで、予約診察に係る特別の料金、いわゆる予約料を徴収できる仕組みです。単に予約制で診療していることとは異なります。

PRIME会員向けのキャンセル料テンプレートは提供されますか?

当初は提供を予定していましたが、5月29日の訂正通知・疑義解釈・大臣会見を踏まえ、キャンセル料徴収を前提としたテンプレートの提供は見合わせます。今後は、制度上の誤解を招かない形で、予約ルールや無断キャンセル対策を患者に伝える文例の整備を検討します。

すでにキャンセル料を導入している医院はどうすべきですか?

対象診療、事前説明、患者同意、金額の妥当性、例外規定、自由診療と保険診療の区分、会計処理を再点検することをおすすめします。必要に応じて地方厚生局や医療法務に詳しい専門家へ確認してください。

キャンセル料以外にできる対策はありますか?

予約変更の連絡期限を明文化する、LINE・SMSでリマインドする、無断キャンセルが他の患者に与える影響を説明する、繰り返し無断キャンセルがある場合の予約ルールを決めるなど、実務上できる対策は多くあります。

ORTCとしてはキャンセル料に賛成ですか?

ORTC編集部としては、患者への十分な事前説明と納得があり、社会的に妥当な範囲であれば、キャンセル料は健全なクリニック経営の一部として議論されるべきだと考えます。ただし、制度上の根拠を誤って説明したり、患者への罰則として乱用したりすることには慎重であるべきです。

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エビデンス・出典

  1. 厚生労働省「『療養の給付と直接関係ないサービス等の取扱いについて』の一部改正について」令和8年3月27日 保医発0327第7号
    3月27日時点では、「予約に基づく診察の患者都合によるキャンセル料」が、療養の給付と直接関係ないサービス等の具体例として明記されています。
    https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001681828.pdf
  2. 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定関連通知及び官報掲載事項の一部訂正について」令和8年5月29日
    5月29日の訂正により、「予約に基づく診察の患者都合によるキャンセル料」は「選定療養における予約に基づく診察の患者都合によるキャンセル料」と修正されています。
    https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001705942.pdf
  3. 厚生労働省「療養の給付と直接関係ないサービス等の取扱いに関する疑義解釈資料の送付について」令和8年5月29日
    疑義解釈では、今回のキャンセル料が、選定療養における「予約に基づく診察」において、診察日の直前に患者都合でキャンセルされた場合に限ることが確認されています。
    https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001706045.pdf
  4. 厚生労働省「上野大臣会見概要」令和8年5月29日
    大臣会見では、予約料を取る場合に一定のキャンセルがあった場合はキャンセル料の徴収を可能とする整理であり、予約料を取っていない場合にはキャンセル料は取れない旨が説明されています。
    https://www.mhlw.go.jp/stf/kaiken/daijin/0000194708_00933.html

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