歯科医院において「人材の定着」と「自費診療の強化」は、いまや両輪とも言える重要課題です。なかでも、歯科衛生士のスキルアップ支援や活躍の場を広げることは、医院全体の生産性向上や患者満足度の向上につながります。
その中で注目されているのがMFT(口腔筋機能療法)です。従来の歯周ケアや予防指導にとどまらず、口腔育成・舌癖改善・小児矯正支援など、自費分野にも直結する新しい分野として歯科衛生士の専門性を広げています。
本記事では、歯科衛生士がMFTを学ぶと、どんな診療導線がつくれるのか、MFTを導入する際の注意点など、育成投資の視点で徹底解説します。
1.MFTとは?歯科衛生士が担える新しい「療法」
MFT(Myofunctional Therapy/口腔筋機能療法)とは、舌・口唇・頬などの筋肉のバランスを整えるトレーニングです。
目的は、正しい呼吸・咀嚼・嚥下・発音などの口腔機能を回復・獲得させること。もともと、矯正歯科や小児治療の補助療法として活用されていましたが、近年では以下のような分野にも広がっています。
・小児の口腔育成(口呼吸・開咬・舌突出など)
・成人の舌癖改善・睡眠時無呼吸対策
・矯正治療後の後戻り防止
・高齢者の口腔リハビリテーション
このMFTは、歯科衛生士が中心となって行える療法であり、歯科医院にとって新たな自費診療の柱になる可能性を秘めています。
2.歯科衛生士とMFTが歯科医院にもたらす3つの価値
実際にMFTに取り組んでいる歯科衛生士としての経験も交えながら、3つの価値をご紹介します。
①矯正・口腔育成のサポート領域が広がる
MFTは、舌や口の機能を整えることで、小児矯正や予防矯正の効果を高める補完療法として有効です。
舌癖や口呼吸のある患者に対しては、矯正器具だけでは治療効果が安定しません。そこでMFTが介入することで、本来の機能改善=再発防止につながり、矯正治療の質が格段に上がります。
実際にMFTに取り組んでいる歯科衛生士として、私の経験も少しご紹介します。矯正治療を「ただ待つ」のではなく、その間に口腔機能の改善に取り組むことで、患者さん自身も「今できることがある」と安心され、実際に矯正治療後の「後戻り防止」においても、MFTによる口腔機能の定着は非常に効果的であり、長期的な治療成果の維持に寄与しています。
また、保険では対応が難しい指導やトレーニング内容を、自費のMFTプログラムとして体系化・継続的に実施することで、患者さんの満足度や通院継続率向上にもつながりました。
②歯科衛生士への「教育投資」が医院の財産になる
MFTの特徴は、継続的なフォローが前提の療法であることです。患者との長期的な関係性を築けるため、歯科衛生士が主導で診療を設計できる環境が整います。
つまりMFTは、歯科衛生士のキャリアの中に「自分にしかできない専門分野」をつくる教育投資にもなるのです。
③自費診療の単価・継続率が上がる
MFTによって診療導線を設計することで、以下のような自費化の流れが自然に生まれます。
・初診時にMFTスクリーニング(カウンセリング料として自費化)
・舌癖・口呼吸などの課題に対し、月額制でのMFT継続指導
・成果に応じて、小児矯正・マウスピース矯正へ移行
このように、「指導→機能改善→治療提案→継続フォロー」という高単価かつ継続性のある診療モデルが可能になります。
3.どんな資格がある?MFTの認定制度・セミナー比較
現在、日本におけるMFTの資格は国家資格ではなく、民間認定制度が中心です。以下に、代表的な団体とセミナー内容を紹介します。
最新情報をお探しの方は「MFT歯科衛生士セミナー2025」などで再検索すると、各団体の開催スケジュールが見つかります。
4.経営メリット:資格取得支援は投資効果があるか?
結論から言えば、MFT資格取得支援は医院の収益性・人材の定着の両面で投資に値する施策です。
・自費診療の平均単価アップ
・歯科衛生士のモチベーション・離職率改善
・ブランディング強化
5.注意点:資格を取っただけで終わらせないためには?
MFT導入を成功させるために最も大切なのは、学んだことを院内で活用できる仕組みを整えることです。
・初診時のスクリーニング設計
・MFTカウンセリングの説明ツール整備
・院内チームでの症例共有・フィードバック体制
・院長のコミットメントと医院方針への落とし込み
この仕組みがないまま資格取得だけを支援しても、実際の診療で生かされず、学び損になるケースも多いので注意が必要です。

まとめ
MFTは未来の歯科衛生士を育てる教育資産です。予防・管理・再発防止の中心に口腔機能がある今、MFTの知識と技術をもった歯科衛生士は、間違いなくこれからの医院経営のカギとなります。
歯科医院の未来を支えるチームの中で、歯科衛生士が口腔機能のプロとして活躍する時代はもう始まっています。
・機能回復から予防・矯正へとつながる診療設計
・歯科衛生士が輝く専門領域の確立
・自費単価と定着率の向上
これらをすべて両立できるのが、MFTと歯科衛生士の専門性の融合です。MFTは単なる口のトレーニングではなく、歯科衛生士が関わることで「生活習慣」「食べ方」「呼吸」「姿勢」などトータルに見直すアプローチが可能になり、歯科医院の中で「治す」から「育てる」へと視点を変える役割を担うことができるでしょう。
矯正の補助や後戻り防止だけでなく、通院継続・自費導入など経営面にも好影響を与えます。歯科衛生士がMFTを担うことで、歯科医院全体の価値も、患者の未来も、大きく変わります。
よくある質問
Q.MFTはどんな患者さんに必要ですか?
A.主に、口呼吸・舌癖・開咬・低位舌・構音障害・歯列不正などがある患者さんに有効です。成長期の子どもはもちろん、成人の方にも適応されることがあります。
Q.歯科衛生士でもMFT指導できますか?
A.はい、歯科医師の指示のもと、歯科衛生士もMFTを指導できます。特に近年は、歯科衛生士がMFTの専門知識を持ち、医院内で重要な役割を担うケースが増えています。
Q.MFTを導入するメリットはなんですか?
A.MFTの導入は、以下のような多くのメリットをもたらします。
・矯正治療のスムーズな進行と後戻り防止
・小児期からの口腔機能育成によるトラブル予防
・歯科医院の専門性・差別化
・歯科衛生士の役割拡大とやりがい向上

歯科衛生士ライター:大久保
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