歯科医院の医療広告チェックを仕組み化する5ステップ|第6版を踏まえた院内運用

歯科経営

歯科医院のWeb広告をチェックリストと承認フローで管理するイメージ

医療広告の確認を「公開直前の思い出し作業」にしない

厚生労働省は2026年3月30日、「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)」を公表しました。第6版では、自由診療に関する限定解除要件を満たしていない事例に加え、SNS・動画における広告事例が拡充されています。

歯科医院のWebサイトやSNSを見直すとき、禁止表現を一つずつ探すだけでは十分ではありません。ページ追加、料金改定、症例写真の更新、スタッフによる投稿、制作会社の修正が重なるほど、確認漏れは表現そのものよりも運用の隙間から生まれます。

院長が押さえるべきポイントは、誰が、何を、どの根拠資料で、いつ確認し、誰が公開を承認するかを決めることです。本記事では、医療広告等ガイドラインと第6版の事例解説書を踏まえ、歯科医院で継続運用しやすい5ステップに整理します。個別表現の適法性を断定するものではないため、判断に迷う場合は所管自治体または医療広告に詳しい専門家へ確認してください。

この記事の結論

  • Webサイト、LP、SNS、動画、予約サイトなどを広告台帳にまとめる
  • 作成、事実確認、公開承認の役割を分ける
  • 症例写真、体験談、比較表現、自由診療、SNS・動画を重点確認する
  • 料金・診療内容・人員・制度資料が変わったときに再点検し、修正履歴を残す

なぜ医療広告は「一度直せば終わり」ではないのか

医療機関のWebサイト等は、患者が受診先を選ぶ判断材料であり、一定の要件を満たす表示は医療広告規制の対象になります。確認対象はページ本文だけではありません。バナー、LP、SNSのプロフィール・投稿・返信、動画のタイトル・概要欄、予約サイトの医院紹介など、患者が一連の情報として受け取る範囲まで視野に入れる必要があります。

第6版では、SNSはプロフィール、投稿、返信の組み合わせ、動画サイトはプロフィール、動画、タイトル、概要欄の組み合わせによって広告内容が構成される例が示されています。必要な情報を別ページへのリンクだけに委ねるのではなく、媒体の特性を踏まえて一体的かつ一覧性を持って示せているかが重要です。

「制作会社が確認しているはず」「担当スタッフが分かっているはず」と責任を曖昧にすると、古い料金、現在は行っていない治療、説明不足の症例写真、禁止される最上級表現が残りやすくなります。医療広告への対応は、個人の記憶ではなく、医院の更新手順として設計する必要があります。

ステップ1 広告媒体と掲載内容を台帳化する

最初に、医院が管理または掲載を依頼している情報発信の場所を一覧にします。公式サイトだけでなく、広告用LP、検索広告、SNS、動画チャンネル、予約ポータル、外部プロフィール、院内掲示から転用したPDFなども対象候補です。

管理項目記録する内容
媒体・URL公式サイト、LP、SNS、動画、予約サイト、広告管理画面
掲載内容診療案内、料金、症例写真、医師紹介、キャンペーン、口コミ等
担当者・権限作成者、事実確認者、承認者、更新作業者、外部制作会社
更新・確認状況最終更新日、最終確認日、次回確認日、公開・保留・修正中
根拠資料厚生労働省資料、院内料金表、治療説明書、診療実績の集計資料等

台帳の目的は管理項目を増やすことではなく、確認対象の抜けをなくすことです。まずは「媒体・URL」「掲載内容」「担当者」「確認日」「根拠資料」の5項目から始めます。

ステップ2 作成者・確認者・承認者を分ける

小規模な医院でも、「原稿を作る人」と「公開を承認する人」は可能な限り分けます。制作会社や広告代理店は表示制作の専門家であっても、医院で実際に提供している治療内容、費用、期間、リスク、院内ルールまで自動的に把握できるわけではありません。医療内容と事実関係の最終責任を外部へ丸投げしないことが重要です。

1.作成

院内担当者または制作会社が、承認済み情報と指定資料を基に原稿・画像を作成する。

2.確認

事務長、副院長、診療担当者等が、治療内容、料金、期間、リスク、リンク先との整合を確認する。

3.承認

院長または権限を付与された責任者が、根拠資料と修正内容を確認して公開を承認する。

公開後に修正が入る場合も、同じ承認フローを通します。「文章は変えていないが、画像だけ差し替えた」「SNSへ短く転載した」という更新でも、表示全体の意味が変わる可能性があります。

ステップ3 リスクの高い項目を重点確認する

すべてのページを毎回同じ深さで確認するのではなく、更新内容に応じてリスクの高い項目を重点確認します。次の表は、公開前に見落としやすい論点を院内用チェック項目へ置き換えたものです。

重点項目確認する内容
症例写真・ビフォーアフター写真の近くに、通常必要とされる治療内容、標準的な費用、治療期間・回数、主なリスク・副作用等が十分に示されているか。説明をリンク先だけに置いていないか。広告規制とは別に、患者同意や個人情報の院内管理も確認する。
体験談・口コミ治療内容または効果に関する患者等の主観的な体験談を、自院サイトやSNSへ転載していないか。医院に有利な口コミだけを選別、抜粋、編集、強調していないか。
比較・最上級・保証表現「日本一」「地域No.1」「最高」「最先端」など、他院より優れていると著しく誤認させる最上級表現がないか。「絶対安全」「必ず成功」など、結果や安全性を保証する表現がないか。
自由診療治療内容、通常必要とされる治療期間・回数、標準的な費用、主なリスク・副作用を分かりやすく示しているか。費用が症例で変動する場合は、患者が通常必要とする範囲を理解できる表示か。問い合わせ先が確認できるか。
SNS・動画SNSはプロフィール・投稿・返信、動画はプロフィール・動画・タイトル・概要欄を組み合わせて確認したか。必要情報が一体的かつ一覧性を持って示されているか。ハッシュタグや返信にも禁止表現がないか。
数値・実績・調査結果成功率、満足度、症例数などを掲載する場合、対象期間、集計対象、調査方法、根拠資料が明確か。都合のよい結果だけを示していないか。
現在の院内情報料金、診療内容、医師・スタッフ、設備、診療時間、キャンペーン期間、予約条件が現在の運用と一致しているか。

「根拠があれば掲載できる」とは限らない

医療広告では、客観的な根拠があっても禁止される表現があります。特に「最高」「日本一」などの最上級の比較や、治療効果に関する患者の体験談は、根拠資料の有無だけで判断しないことが重要です。

ステップ4 公開画面を確認し、修正履歴を残す

公開前には、管理画面上の原稿だけでなく、実際の表示画面で文章、画像、リンク先、注記の位置を確認します。スマートフォンでは、表が画面外へはみ出す、注記が画像から離れる、折りたたみの中に重要情報が隠れるといった問題が起こりやすいため、PC表示だけで確認を終えないようにします。

修正履歴には、修正日、対象URL、修正箇所、修正理由、確認者、承認者、参照した公式資料を残します。担当者や制作会社が変わっても、「なぜこの表現にしたのか」を説明できる状態にしておくと、過去の判断を再利用できます。

公開前の最終確認

  • リンク先を含め、患者が実際に見る順序で確認したか
  • PCとスマートフォンの両方で必要情報が読めるか
  • 院内の料金表・治療説明・予約時案内と矛盾していないか
  • 確認できない情報を「仮」のまま公開していないか

ステップ5 定期点検と変更時点検を院内業務に組み込む

医療広告等ガイドラインに「四半期ごとの点検」が一律に定められているわけではありません。ただし、公開媒体が複数ある医院では、点検日を決めなければ古い情報が残りやすくなります。ORTC編集部では、少なくとも四半期ごとの一覧点検と、重要な変更が発生した時点での臨時点検を組み合わせる運用を推奨します。

臨時点検のきっかけには、料金改定、診療メニューの追加・終了、医師やスタッフの入退職、設備変更、キャンペーン終了、症例写真の追加、公式資料・ガイドラインの更新などがあります。広告台帳から影響を受けるURLを絞り込めれば、すべてのページを一から探すより、速く正確に修正できます。

院長が今週決める3つのこと

  1. 広告台帳を管理する担当者を1人決める
  2. 院長または責任者の承認が必要な更新範囲を決める
  3. 次回点検日と、料金改定などが起きたときの臨時点検ルールを決める

院長がすべての原稿を書く必要はありません。重要なのは、誰が事実を確認し、どの段階で公開を止められるかを明確にすることです。確認できない情報が、そのまま患者向け媒体へ出ない仕組みを作りましょう。

歯科医院の医療広告チェックでよくある質問

Q.歯科医院のSNS投稿も医療広告規制の対象になりますか?

A.投稿の内容や表示のされ方によっては対象になります。第6版では、プロフィール、投稿、返信を組み合わせて情報提供する場合が示されているため、投稿単体だけでなくアカウント全体の表示として確認します。

Q.患者の口コミを医院サイトへ掲載してもよいですか?

A.治療内容または効果に関する患者等の主観的な体験談を広告へ掲載することは認められていません。第三者の口コミサイトに患者が自発的に投稿した情報でも、医院が自院媒体へ転載したり、有利な内容だけを抜粋・強調したりしないよう注意が必要です。

Q.医療広告は必ず3か月ごとに確認しなければなりませんか?

A.四半期点検は法令上の一律の義務ではなく、本記事で提案する運用上の目安です。料金、診療内容、人員、キャンペーン、公式資料が変わった場合は、定期日を待たずに関連媒体を確認します。

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参考情報・出典

※本記事は2026年8月6日時点で確認できる厚生労働省の公開資料を基に、歯科医院における一般的な確認手順を整理したものです。四半期点検などの運用頻度はORTC編集部の提案であり、法令上の一律の義務を示すものではありません。個別の広告表現については、医療機関を所管する自治体または医療広告に詳しい専門家へご確認ください。

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