就業数が増えているのに歯科衛生士が採用できない!?その裏に隠された5つの理由を歯科衛生士が本音で解説

歯科経営

毎日いろんな媒体で歯科衛生士の求人を目にします。
私が新卒衛生士だった2005年頃と比べると、歯科衛生士を取り扱う媒体は軒並み増え続けている印象です。
よく、知り合いの先生から「どこかにいい衛生士さん知らない?」「知り合いの衛生士さん紹介して」と相談を受けますが、
よくよく話を伺うと、さまざまな媒体にお金を支払いつづけるなど、やはり採用に困っている様子でした。


ただ、以前と比べて歯科衛生士の業務従事者数は増加傾向にあることをご存じでしょうか。
令和2年度の歯科衛生士免許登録者数298,644人のうち、業務従事者数は142,760人だという結果が出ています。
全体の47.8%の歯科衛生士が、現役で活躍中というわけです。

(出典:衛生行政報告例)
たしかに免許登録者数の半分以下という数字は低い印象を受けますが、以前と比べると歯科衛生士の採用はそこまで難しくありません。

 

では、どうして思うように歯科衛生士が採用できないのでしょうか。
それには、いくつか理由が存在します。


今回は、歯科衛生士が採用できない本当の理由を5つ、歯科衛生士が本音で解説していきます。

 

 

歯科衛生士が採用できない本当の理由


では、ここから歯科衛生士から見た歯科衛生士の採用が難しい理由5つを挙げていきます。
なにかの参考になれば幸いです。

 

【歯科衛生士が採用できない本当の理由1】国家資格なのに給料が低い

地域にもよりますが、歯科衛生士の平均年収は約368万円だといわれています。

(出典:求人ボックスナビ 歯科衛生士平均年収)
正直、国家資格をもつ職業で、この値は低い印象です。
求人広告を目にすると、どの歯科医院でも、そう変わりない金額が掲載されていますが、

業務内容を見ると、勤務時間と見合っていなかったり、業務内容がキツそうだったりと、「奴隷感」が否めません。
そういった歯科医院は、「歯科衛生士を甘く見ているな」というレッテルが貼られやすく、候補にすら上がらないといえます。

 

【歯科衛生士が採用できない本当の理由2】疲弊した人間関係

歯科医院というのは、非常に閉鎖的な空間です。
1日中、同じ場所で同じスタッフと顔を合わせる時間が多いため、人間関係が悪いと働きづらくなってしまいます。
院長の人となりや治療に対する考え方が合わなかったり、スタッフ同士の仲が悪かったりすると、「辞めたい」と考える方が出てくるのです。
歯科衛生士にとって、働ける歯科医院はごまんとあります。
自分に合わないなと思えば、我慢せずに、すぐに見切りをつけてもおかしくないのです。

 

【歯科衛生士が採用できない本当の理由3】結婚後の復帰が難しい

結婚や出産を経て、歯科衛生士に復帰される方は多くいます。
ですが、みなさんが口々に言うのは「復帰が難しい」というもの。
なぜ、これほどまでに歯科衛生士が求められているのに難しいかというと、歯科医院側が求める人材と相違があるからです。
「勤務時間が短い」、「子どもの体調不良で急に休まれると困る」…。
たしかに雇う側の意見としては、頷けるものばかりです。
しかし女性が多い職業でありながら、そういった理由で排除する考えは、おかしいとさえ思います。
歯科医院側も女性のライフステージを考え、取り入れる体制を身につけるべきです。

 

【歯科衛生士が採用できない本当の理由4】中身が見えない歯科医院は避けがち

現代において、SNSの普及はめざましい発展をみせています。
患者が口コミで病院を検索するように、実は歯科衛生士もSNSから情報を集めているのです。
歯科という世界は非常に狭いため、噂や口コミは一気に広まる傾向にあります。
そのため、ネガティブな意見が多い歯科医院は、そもそも避けられがちです。


そしてもう1つ避けてしまうケースとして、中身が見えない歯科医院を歯科衛生士は恐れています。
ホームページやSNSがない歯科医院には、どんな院長がいて、どんなスタッフがいるのか、まったくわからないからです。
そんな中身の見えない歯科医院が求人を出しても集まらないのは必至。
院長ばかりが目立つ歯科医院も候補外になりやすいといえます。

 

【歯科衛生士が採用できない本当の理由5】やりがいを感じない

どんな仕事でもつづけていくためには、モチベーションが欠かせません。
歯科医師同樣、歯科衛生士も患者のため、最善の治療や環境を提供しています。
ですが、いつも感謝されるのは歯科医師だけ…。
そういった場面に遭遇された歯科衛生士の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
それでも以前より歯科衛生士の担当制が増えたことで、より患者と距離を縮めることができ、それなりに感謝される回数も増えてきたことでしょう。
ですが今度は、歯科医師から感謝されなくなるパターンが増えていると聞きます。


先生は、いつもスタッフに感謝をしていますか?


スタッフを大事にできない歯科医院は、当然歯科衛生士が定着しない傾向にあります。
いま一度、見直してみる必要があるでしょう。

 

 

本当は歯科衛生士という仕事がすき

ここまで、歯科衛生士が採用できない本当の理由を挙げてきました。
給料や人間関係などが原因で、歯科衛生士を辞職される方が多いですが、それでもみなさんがおっしゃるのは「歯科衛生士の仕事がすき」ということ。
実は、歯科衛生士の仕事自体が嫌になって辞めていく方は少ないといわれています。
ですが、それ以上に耐えられない嫌な理由が勝ってしまうため、仕方なく歯科衛生士から離れてしまう手段をとってしまうのです。
これは非常にもったいないことだと思います。
そして、改善できることでもあると思うのです。
もっと、歯科衛生士の本音を汲み取ることで離職率を減らせることができれば、多くの歯科医院がうるおい、患者にもっと質の高い医療を提供できるのではないでしょうか。
 




 

 

 

 

 


ORTC歯科ライター
土井 万喜子
 


<プロフィール>
歯科衛生士18年目
2005年歯科衛生士資格取得後、札幌市内の歯科医院に勤務。
後に歯科メーカー勤務を経て、現在ライターやコンサルタントとして活動中。
多くの歯科衛生士の働きかたやキャリアの相談役を担っている。

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