歯科経営
インビザラインをはじめとするアライナー矯正システム(マウスピース矯正)は、審美性の高さや通院回数の少なさから患者ニーズが非常に高く、歯科医院にとっても自費診療として収益性の高い治療メニューです。一方で近年、「アライナー矯正 トラブル」「アライナー矯正 訴訟」といった再検索キーワードが示すとおり、トラブルや法的紛争が増加しています。その多くは、診断力不足や適応症例の見極めの甘さ、患者の装着コンプライアンス不良に起因しています。
本記事では、歯科経営者が知っておくべきアライナー矯正の代表的なトラブル事例と、その予防・対策を解説します。単なる技術論にとどまらず、契約・法的対策、スタッフ教育まで含めた総合的なリスクマネジメントの重要性をお伝えします。
ここでは、実際に歯科医院で頻発しているアライナー矯正の代表的なトラブル事例を紹介します。いずれも「特殊ケース」ではなく、日常診療の判断や説明不足が引き金となり、返金請求や法的トラブルに発展しやすいものです。
「アライナーで対応可能」と判断したものの、実際にはワイヤー矯正が必要な症例だったケースです。叢生量が大きい、骨格性不正咬合が強い、顎位のコントロール(顎間関係の修正や顎間ゴム管理)が必要といった症例では、アライナー単独治療では限界があります。
治療が進まない、歯が動かない、かえって咬合が悪化するといった結果になり、患者不満からトラブルへ発展します。
アライナー矯正は患者協力度(コンプライアンス)が治療成否を大きく左右します。装着時間不足にもかかわらず、その事実を十分に把握・記録していない場合、治療不成功の責任がすべて医院側に向けられやすくなります。
結果として、治療中断・高額な返金請求・クレーム対応に追われる事態となります。
「ワイヤー矯正との違い」「治療期間が延びる可能性」「追加費用が発生するケース」など、必要な説明が不足していると、患者は「聞いていない」「そんなはずではなかった」と感じます。これはワイヤー矯正との違いを十分に説明していない場合にも起こりがちです。
4.治療途中で方針変更に伴うトラブル
途中でワイヤー矯正へと移行せざるを得なくなった場合、その説明と同意が不十分だとトラブルに直結します。患者にとっては「話が違う」「追加費用を請求された」という印象になりやすいポイントです。
アライナー矯正における契約・法的対策は、トラブルが起きた後の防御策ではなく、トラブルを未然に防ぐための治療プロセスの一部です。歯科医院と患者双方の認識を揃えることで、不必要な対立や法的紛争を回避できます。
アライナー矯正では、治療契約書の整備が必須です。特に以下の点を明確に記載する必要があります。
・適応症例の範囲と限界
・装着時間など患者の協力義務
・治療計画変更の可能性
・中断・返金に関する規定
これらは万一のアライナー矯正訴訟において、医院を守る重要な証拠となります。
口頭説明だけでなく、書面・動画・図解などを用いて理解度を高めることが重要です。説明内容をカルテに記録し、同意書を取得することで、後のトラブルを大幅に減らすことができます。
契約書やインフォームドコンセントは、作成しただけでは十分とは言えません。実際の診療現場では、説明した内容をどこまで記録として残しているかが、トラブル発生時の明暗を分けます。アライナー矯正では、適応症例の判断理由、ワイヤー矯正を含めた代替治療の説明、装着時間に関する指導内容などをカルテや説明書面に具体的に残すことが重要です。
特に、治療計画の変更や治療停滞が生じた場合では、「いつ・誰が・何を説明し、患者がどう理解したか」を客観的に示せる記録が、返金請求や訴訟リスクから歯科医院を守ります。契約・節目・記録を一体として設計することが、アライナー矯正における実践的なリスクマネジメントといえるでしょう。
アライナー矯正は万能ではありません。ワイヤー矯正を含めた総合的な矯正診断力が、最終的に歯科医院の信頼を守ります。
・骨格性問題の有無
・歯の移動量・回転量
・咬合の安定性
これらを総合的に判断し、「アライナーで行うべき症例」「最初からワイヤー矯正を選択すべき症例」を明確に区別することが必要です。
トラブルをゼロにすることは不可能です。重要なのは、発生時にどう対応するかです。
・早期の問題発見(チェック体制)
・速やかな説明と選択肢の提示
・必要に応じた専門医・他院連携
リカバリー体制が整っている歯科医院は、患者満足度を大きく損なわずに問題解決が可能です。
アライナー矯正において、患者対応の多くは歯科衛生士・スタッフが担います。
・装着時間のヒアリング
・患者モチベーションの維持
・トラブルの兆候を早期に拾う
スタッフがアライナー矯正の治療目的やリスクを理解していなければ、コンプライアンス管理は機能しません。スタッフ教育は、単なるオペレーションではなく経営リスク対策そのものです。
アライナー矯正では、患者の性格や職業背景を踏まえた事前説明も欠かせません。シフト勤務や外回りの多い職業、自己管理が苦手な傾向がある場合には、装着時間の確保が治療結果に直結することを、初診時から具体的に共有する必要があります。
また、装着時間を感覚的な自己申告に頼るのではなく、カレンダー管理やアプリを用いて「見える化」する仕組みを取り入れることで、歯科医院側も治療状況を客観的に把握できます。
歯科医療メディアORTCには、アライナー矯正のトラブルシューティングや法的リスク対策に関する専門家セミナー動画が揃っています。
・トラブル事例の具体的解説
・契約・同意書作成の考え方
・スタッフ教育への落とし込み
これらを活用することで、属人的でない安全な矯正治療体制を構築できます。

アライナー矯正は、正しく運用すれば患者満足度と医院収益の両立が可能な治療です。しかし、安易な導入は重大なトラブルと経営リスクを招きます。
ワイヤー矯正を含めた総合的な診断力、契約・法的対策、スタッフ教育。この三位一体の体制づくりこそが、歯科医院の信頼と未来を守ります。ORTCの専門動画を活用し、安全で確実な矯正治療体制を構築していきましょう。
Q1.アライナー矯正のトラブルはどれくらいで起きていますか?
A.近年増加傾向にあり、特に適応症例の見極め不足と患者協力度が原因となるケースが多く見られます。
Q2.装着時間を守らない患者の責任はどこまで歯科医院が負うのでしょうか?
A.契約書と説明内容次第です。患者の協力義務を明文化しておくことが重要です。
Q3.途中でワイヤー矯正へ変更する場合、追加費用は請求できますか?
A.事前説明と契約内容に基づきます。最初から可能性を説明しておくことがトラブル防止につながります。
Q4.スタッフ教育はどこから始めればよいですか?
A.まずはアライナー矯正の基本原理とトラブル事例を共有し、患者対応の共通認識を持つことから始めましょう。

歯科衛生士ライター:大久保

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