インプラント治療でみる抜歯即時埋入について詳しく解説

歯科知識

インプラント治療といえば、抜歯後の治癒をまってからインプラント埋入をする流れが一般的です。

しかし、昨今では抜歯直後にインプラント埋入する「抜歯即時埋入」を導入する医院が増えています。

今回は、抜歯即時埋入について詳しく紹介していきましょう。

 

抜歯即時埋入とは

通常、インプラント埋入は抜歯後の細菌感染を防ぐために2~3ヶ月の治癒期間を経て手術を開始します。

抜歯即時埋入はそのプロセスを省略し、抜歯当日にインプラントを埋入後、仮歯装着までおこないます。

患者にとって治療回数や期間が短縮できるだけでなく、体に負担が少ないことからも非常に画期的な治療法だといえるでしょう。

 

抜歯即時埋入の適応条件とは

抜歯即時埋入は、どの患者にでも適応しているわけではありません。

どのような条件が課せられているか、以下を確認してから行うようにしましょう。

【抜歯即時埋入の適応条件】

・治療する歯の周囲にむし歯がない

・抜歯窩の感染が少ない

・歯周病に罹患していない患者、または軽度の歯周病患者

・糖尿病など全身疾患に罹患していない

・顎骨に欠損がなく、厚みや高さが十分ある

・インプラント埋入後にインプラントと結合できる骨をもっている

・咬み合わせに問題がなく、インプラント埋入部位にも咬合力がかかりすぎない

このように抜歯即時埋入をするうえで、さまざまな観点から注意深く観察して診断する必要があります。

 

抜歯即時埋入の流れ

(術前)

①診察、診断

問診や口腔内診査・写真、レントゲン、歯科用CT撮影など、視診やX線撮影を使用して患者にあった治療計画を立案します

この時点で仮歯(プロビジョナル)の印象をしておきます

患者には治療内容のほかに期間や注意事項、費用なども併せて説明しておくと安心です
 

(手術当日)

②抜歯→インプラント埋入

局所麻酔下で抜歯をしたあと、抜歯窩を洗浄・消毒して骨周辺も清潔にします

インプラントを埋入するためにドリルを使用して穴を形成し、埋入します

③仮歯装着

インプラント埋入後に仮歯を装着し、歯肉や骨の回復を待ちます

固定がうまくできなければ仮歯を装着せずに縫合します

④インプラントと骨の結合を待つ

約3ヶ月~6ヶ月間待ちます

⑤補綴印象

結合の確認がとれたら、補綴印象をします

⑥補綴物セット

 

抜歯即時埋入のメリット/デメリット

抜歯即時埋入にはメリットとデメリットが当然あります。

より抜歯即時埋入を知るためにも併せてチェックしておきましょう。

 

抜歯即時埋入のメリット

「治療期間の短縮」

やはり抜歯直後にインプラント埋入をするため、外科手術の回数が1回で済む部分はメリットでしょう。

治療期間が短縮すれば、そのぶん早く噛めるようになりますし補綴が入ることで審美性も良くなります。

「身体の負担が少ない」

手術回数が多いと、少なからず身体に負担がかかります。

痛みや腫れを感じる回数が少しでも減ることで、患者にも安心して手術を受けてもらえることが可能です。

「骨吸収を抑制できる」

抜歯後の治癒期間を待つあいだも少しずつ骨の吸収が進んでいます。

骨量が減ってしまうと、GBR(骨再生誘導法)を検討する必要もあるでしょう。

抜歯即時埋入だと抜歯直後にインプラントを埋入することから、骨量が十分な状態でインプラントが埋入できます。

 

抜歯即時埋入のデメリット

「適応条件が限られている」

さきほども述べたように、抜歯即時埋入は決められた条件でのみ可能な手術です。

全身の健康状態や顎骨が十分な量かなど、さまざまな観点から条件を照らし合わせて決定していきます。

「治療回数を短縮できるから抜歯即時埋入をしたい!」

と考えていても、実際の診察や診断でできないことは十分考えられるのです。

まずは早めに歯科医院で相談して、適応可能か確認しておきましょう。

「細菌感染のリスクがある」

通常、細菌感染のリスクを下げるために抜歯窩の治癒を待ってからインプラントを埋入します。

しかし抜歯即時埋入では、そのまま傷口にインプラントを埋入するため、通常よりも細菌感染対策を講じなくてはいけないのです。

もし細菌感染が起きてしまうと、インプラントと骨がうまく結合しないばかりか痛みや腫れが生じ、患者の負担が大きくなります。

以上を踏まえると、滅菌システムや消毒関連をいま以上に徹底する必要があるでしょう。

「手術可能なドクターが少ない」

細菌感染のリスクの高さに加え、通常2回に分けて行う手術である手術を1回で行うことからドクターの知識やスキルは非常に重要なポイントだといえるでしょう。

抜歯即時埋入は、比較的新しい技術です。

まだまだ治療の実績や成功症例は確立不十分な段階ですので、その旨を正直に患者に伝える必要があります。

「ドクターである自分がいいと思ったから抜歯即時埋入をしましょう」

ではなく、患者の希望に沿いつつ、口腔内の状況と照らし合わせながら治療するか決めていくようにしてください。

 

まとめ

今回は抜歯即時埋入について取り上げました。

手術内容としては患者にとって非常にメリットが大きい治療だと思います。

抜歯即時埋入を今後取り入れていく際には、デメリットに注意しながら進めるようにしてください。

患者にとって最適で最良な治療を提供してあげましょう。

 

 

 

 

 

〈ライター〉

歯科衛生士:土井

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