予防歯科の保険適用どこまで知ってる?診療報酬改定の変遷まとめ

歯科経営

毎年6月4日は、「むし歯予防デー」です。

実は、むし歯予防デーはおよそ90年前から日本歯科医師会によって実施されています。

意外に歴史が古いことに驚きますが、90年前から予防の大切さを啓蒙しつづけていたのです。

当時はまだまだ予防意識が低く、数年前までは「痛みが出たら歯科医院に行く」という治療型スタイルが主流でした。

ところが、この数年のあいだに高齢化問題や健康志向など、時代の変遷によって予防意識が高まりつつあります。

時代の流れに沿って、歯科では「予防歯科」が発展してきています。

その証拠に、予防歯科の保険適用が2020年から認められると、たちまち予防歯科に取り組む医院が増えてきたのです。

ただ、まだまだ予防歯科では、どこまで保険適用なのか?という疑問があると思います。

そこで今回は、予防歯科の診療報酬改定の変遷について詳しく解説していきましょう。

 

予防歯科って結局なにをするの?

予防歯科は、歯が痛くなってから治療するのではなく痛みが出る前に口腔疾患を未然に防ぐことを目的にしています。

セルフケアでは届かない箇所をプロの手によるケアで歯の隅々までキレイにしていくのです。

予防歯科には、セルフケアとプロフェッショナルケアの2種類が存在します。

【セルフケア】

・適切な歯ブラシを使用して隅々まで磨く

・歯間ブラシやデンタルフロスを使用して歯垢を落とし、歯石の付着を予防する

・よく噛んで食べる、栄養バランスを考えた食事を摂る、決まった時間に食べるなど生活習慣を見直す

・定期的に歯科検診を受診する

プロフェッショナルケア

・う蝕や歯周炎の有無や症状の確認

・全身状態や口腔内状況に見合う口腔ケアのアドバイス

・適切なブラッシング指導

・スケーリング

・PMTC

・フッ素塗布

・シーラント処置

 

予防歯科って保険適用なの?

通常、ケガや病気が発生した場合の治療は保険適用がききます。

これは、健康保険が「病気を治すための最低限の治療費」だと判断されるからです。

そのため病気の治療を目的にしていない予防歯科は保険適用外になり、自由診療として扱われます。

しかし、予防歯科でも条件次第で保険適用が認められるようになりました。

その条件とは「口腔の健康に悪影響を及ぼす可能性がある」と判断された場合です。

本来、保険適用がされなかったはずの予防歯科ですが、だんだん時代の流れに合わせながら適用条件が拡大しています。

ここからは診療報酬改定の変遷によって変化しつづける予防歯科の保険適用の流れをみていきましょう。
 

診療報酬改定の変遷から辿る予防歯科の保険適用まとめ

予防歯科に健康保険が適用されはじめたのは、2020年からです。

さきほども触れたように「予防」に健康保険が適用されたことで、驚かれた先生も多かったのではないでしょうか。

2020年の適用後、2年ごとに診療報酬改定がおこなわれるたびに予防歯科に関わる内容にも変化が生じてきました。

では、どのような内容になっているのか詳しくみていきましょう。

 

2020年診療報酬改定

最初に予防歯科の保険適用が認められたのは、2020年の診療報酬改定でした。

歯科疾患の継続管理や口腔疾患の重症予防など、国が歯科予防の重要性を認めたことが新たな始まりとなったわけです。

発端となったのは2019年に発表された「経済財政運営と改革の基本方針」で書かれた一節でした。

その内容が「口のなかの健康改善や維持が全身の健康に影響する」というもの。

つまり口腔内を健康に保つほど全身の健康が維持できるというわけです。

こうした国の推奨によって、2020年に予防歯科の保険適用が認められました。

2022年診療報酬改定

2022年では、より予防体制を強化しようと医科と歯科の連携が目立つようになります。

その流れを現すように「かかりつけ医」がポイントとなりました。

記憶に新しい「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)」です。

か強診の認定医を増加させる目的から、か強診認定の歯科医院に対して予防歯科の保険適用が認められるようになりました。

2024年診療報酬改定

そして2024年6月には大規模な診療報酬改定が行われ、予防歯科にかかわる内容にも変化が生じます。

それが、か強診に変わって新たに制定された「口腔管理体制強化加算(口管強)」です。

口管強の特徴は「お子様と高齢者に対する予防強化」が大きなポイントとして挙げられます。

たとえばお子様の場合、虫歯を予防するための定期検診やブラッシング指導、食事アドバイスの重要性の強化や矯正治療の診断などに対し、診療報酬が引き上げられました。

高齢者では訪問診療に対する内容が大きく変化しています。

 

まとめ

時代の流れにともないアップデートを続ける予防歯科ですが、今後も予防に対する意識は一層増していくことでしょう。

ただし、患者にも予防歯科の認知をさらに浸透させていくことが大切です。

歯科関係者だけが予防歯科の発展を認知していても患者に周知されなければ浸透は難しいといえます。

国が掲げる指標や目的を患者にも伝えていくことが、わたしたちの使命ではないでしょうか。

 

 

 

 

 

〈ライター〉

歯科衛生士:土井

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