
1.はじめに
近年の歯科医療は、驚くべきスピードで進化を遂げています。
AI、マイクロスコープを駆使した精密治療、小児の成長発育に合わせた予防歯科、超高齢社会に対応した口腔ケアの重要性。臨床現場の最前線では、日々新たな課題が生まれ、それに対応する知識と技術が求められています。
日々進化する現場に求められるのは、最新の知見へのアクセスと専門職同士の連携。
歯科界の「今」と「これから」を知るために欠かせないのが、全国各地で開催される学会やイベントの存在です。
2025年5月以降、数多くの学会が予定されており、それぞれに特色や注目すべきテーマがあります。本記事では、忙しい歯科医療従事者の皆さんのために、見逃せない学術大会の概要と活用法を一挙にご紹介します。
2.注目学会紹介
これらの情報は、歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士、学生の皆様にとって、最新の知見や技術を学ぶ絶好の機会となるでしょう。

2025年5月の注目学会
◾︎第79回 日本口腔科学会学術集会
・日程:2025年5月15日(木)〜17日(土)
・会場:キッセイ文化ホール(長野県松本市)
地域に根ざした視点も交えたセッションは、地方勤務者にとっても大きな学びとなるでしょう。
・テーマ:「Task and Force〜口腔科学の任務と力〜」をテーマに、口腔外科・内科・病理など多分野の専門家が集結する大規模な学会です。医科歯科連携や難治症例の対応など、より実践的な視点からの発表が注目されています。
・大会長:栗田 浩(信州大学医学部歯科口腔外科学教室 教授)
◾︎第74回 日本口腔衛生学会学術大会
・日程:2025年5月16日(金)〜18日(日)
・会場:朱鷺メッセ新潟コンベンションセンター(新潟県新潟市)
・テーマ:口腔衛生学の真価、深化、進化
・大会長:小松﨑 明
歯科衛生士を中心に、保健・教育・行政などの多様な視点で「口腔の健康」について議論する学会です。近年はMFT(口腔筋機能療法)や口腔フレイル、保育・教育現場との連携がホットトピック。子どもから高齢者まで、生涯にわたる健康支援に関わる全ての職種にとって、役立つ情報が満載です。
◾︎第134回 日本補綴歯科学会学術大会
・日程:2025年5月16日(金)〜18日(日)
・会場:出島メッセ長崎(長崎県長崎市)
・テーマ:補綴の未来、歯科の未来。「不易流行(変わらないもの、変えていくもの)」
・大会長:村田 比呂司
デジタル補綴の進化が著しい今、CAD/CAM、ジルコニア補綴、インプラントなど、精密補綴の未来像を学ぶには絶好の機会です。補綴臨床に関わる歯科医師はもちろん、歯科技工士、歯科衛生士にとっても学びの多い大会となっています。九州地区での開催はアクセス面でも嬉しく、観光がてらの参加者も増えています。
第68回 春季日本歯周病学会学術大会
・日程:2025年5月23日(金)〜24日(土)
・会場:那覇文化芸術劇場なはーと・ホテルコレクティブ(沖縄県那覇市)
・テーマ:Scienceに基づいた「美ら」歯周治療
・大会長:岩田 隆紀
「歯周治療と全身疾患の関連性」については、もはや誰もが注目するテーマです。
今回の大会は、特に生活習慣病との関連、エビデンスに基づく歯周治療の実践、SRP技術の再確認など、歯科衛生士にとって必須の情報が詰まっています。海風を感じながらリフレッシュできる沖縄での学びは、心身のリセットにも最適です。
◾︎第63回 日本小児歯科学会大会
・日程:2025年5月29日(木)〜30日(金)
・会場:朱鷺メッセ新潟コンベンションセンター(新潟県新潟市)
・テーマ:生涯の確かな礎を目指して
・大会長:早﨑 治明
小児の咬合育成や口腔機能発達支援、離乳食期からの指導など、歯科衛生士にとっても参加意義の高い学会です。MFTや発達支援の現場とも繋がる内容が多く、母子支援に携わる方には特におすすめです。新潟での開催は、地方都市の取り組みも学べる貴重なチャンスです。
2025年6月の注目学会
◾︎第162回 日本歯科保存学会 春季学術大会
・日程:2025年6月5日(木)〜6日(金)
・会場:愛媛県県民文化会館(愛媛県松山市)
・テーマ:「歯科保存学のイノベーションー健口寿命延伸への貢献ー」
・大会長:湯本 浩通
歯を守る保存治療のプロ達が集結する本大会では、接着技術、MI(ミニマルインターベーション)、歯髄保存などが中心テーマ。再治療を減らすための確実なテクニックが学べるため、予防歯科に力を入れるクリニックでも有益な内容です。
◾︎第43回 日本顎咬合学会学術大会・総会
・日程:2025年6月7日(土)〜8日(日)
・会場:東京国際フォーラム(東京都千代田区)
・テーマ:「顎咬合学 踏襲から発展 学術と臨床の融合」
・大会長:貞光 謙一郎
「咬合から全身を診る」視点での臨床研究が集まるこの学会は、MFT、TCH(歯列接触癖:正常な状態で上下の歯の間にある隙間が維持できず、歯を接触させてしまう癖)、睡眠時無呼吸など、全身との関係に着目した歯科医療に関心がある方には特におすすめです。今年もハンズオンセミナーや実技研修が企画されており、即現場に活かせる知識を得られます。
◾︎第36回 日本老年歯科医学会学術大会
・日程:2025年6月27日(金)〜29日(日)
・会場:幕張メッセ国際会議場・国際展示場(千葉県千葉市)
・テーマ:「口腔機能の維持・向上で老年学に貢献するー輝く100年を口とともに生きるー」
・大会長:片倉 朗
超高齢社会を迎える今、「食支援」「認知症と口腔」「摂食・嚥下支援」など、介護・医療連携に欠かせないテーマを網羅したこの大会は、在宅歯科・訪問歯科の従事者にとって必見です。幕張メッセという大規模会場での開催で、業者展示や新製品ブースなども充実。口腔衛生管理の新しい形が見えてきます。
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2025年7月の注目学会
◾︎第38回 日本顎関節学会学術大会
・日程:2025年7月11日(金)〜13日(日)
・会場:学術総合センター
・テーマ:「顎関節の未来に向かってー今、わかっていること、わかっていないことー」
・大会長:小見山 道
◾︎第46回 日本歯内療法学会学術大会
・日程:2025年7月19日(土)〜20日(日)
・会場:松本歯科大学キャンパス(塩尻市)
・テーマ:「歯内療法の更なる飛躍ー世界のPeakを目指してー」
・大会長:増田 宜子
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2025年9月の注目学会
◾︎第31回 日本摂食嚥下リハビリテーション学会学術大会
・日程:2025年9月19日(金)〜20日(土)
・会場:パシフィコ横浜ノース
・テーマ:「いつも楽しく食べる〜多職種による安全な食事の支援〜」
・大会長:香取 幸夫
◾︎第84回 日本矯正歯科学会学術大会
・日程:2025年9月29日(月)〜10月1日(水)
・会場:札幌コンベンションセンター
・テーマ:「繋ぐ未来ーコラボレーションの力ー」
・大会長:佐藤 嘉晃
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2025年10月の注目学会
◾︎第53回 日本歯科麻酔学会総会・学術集会
・日程:2025年10月10日(金)〜12日(日)
・会場:カクイックス交流センター
・テーマ:「歯科麻酔学 最高〜伝統の継承・次世代への提言〜」
・大会長:杉村 光隆
◾︎第68回 秋季日本歯周病学会学術大会
・日程:2025年10月17日(金)〜18日(土)
・会場:朱鷺メッセ新潟コンベンションセンター
・テーマ:「国民のための歯周治療とその未来」
・大会長:多部田 康一
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2025年11月の注目学会
◾︎第20回 日本歯科衛生学会学術大会
・日程:2025年11月2日(日)〜3日(月)
・会場:昭和医科大学 上条記念館
・テーマ:「歯科医療DXで変わる!歯科衛生士の未来ー知る、活用する、つながるー」
・大会長:藤山 美里
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2025年12月の注目学会
◾︎第36回 日本スポーツ歯科医学会 総会・学術大会
・日程:2025年12月6日(土)〜7日(日)
・会場:埼玉会館
・テーマ:「臨学一体の歩みから他職種連携での進化」
・大会長:上野 俊明
◾︎第36回 日本歯科審美学会 学術大会
・日程:2025年12月13日(土)〜14日(日)
・会場:パシフィコ横浜ノース
・テーマ:「美と機能の調和を求めて」
・大会長:小川 匠
〜自分に合った学会の選び方〜
これだけ多くの学会の中で、どれに参加したらいいのか?迷う方も多いのではないでしょうか。
以下のように立場別で整理すると、自分に合った学びが見つかりやすくなります。
対象者 | おすすめ学会 |
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子供の発達支援に関心がある | 小児歯科学会・口腔衛生学会 |
補綴や技工の連携を深めたい | 補綴学会・顎咬合学会 |
予防・SRP技術を磨きたい | 歯周病学会・保存学会 |
高齢者・訪問診療に関心がある | 老年歯科医学会 |
科学的視点や幅広い知見を得たい | 口腔科学会・放射線学会 |
〜学会参加を「受けっぱなし」にしない工夫〜
せっかく参加した学会も、聞いて終わりではもったいないですよね。以下のように、学んだことを行動に落とし込む工夫をすることで、より価値ある時間になります。
・院内で共有するスライドやミニ勉強会を開催
・SNSやブログで簡易レポートを発信
・自分の診療にどう活かせるかを日記やノートにまとめる
・来年以降の演題発表に向けて、気になるテーマを見つける
特に近年はInstagramやnote、X(旧 Twitter)での発信者も増えており、全国の仲間と繋がることも可能です。

おわりに:未来をつくるのは、学び続けるあなた自身
2025年の学会は、ただ最新情報を得るためだけの場ではありません。多職種連携、地域連携、そして次世代を育てる学びの「交差点」です。
日々忙しい中でも、自分の興味・成長したい分野を決めて、まずは一つでも学会に触れてみること。それだけでも世界は大きく広がります。
ぜひ、今年の学会シーズンを自分の「アップデート」の機会として、最大限に活用してください。
コロナ禍を経て、オンラインでの学びが当たり前になった今。私たちは距離や時間の制約を超えて、効率的に知識を得られるという新たなスタンダードを手に入れました。でもだからこそ、リアルで学ぶ価値が、より深く実感されるようになったと感じています。
学会に実際に足を運び、そこにいる人々と同じ空気を吸い、同じ熱量を感じるという経験は、画面越しでは得られない特別なものです。講演者の息遣い、参加者の頷き、会場全体の一体感。そのすべてが、学びの深さを何倍にもしてくれる力を持っています。
また、学びだけではなく、人との繋がりもリアルならではの魅力です。
ちょっとした休憩時間の立ち話や、懇親会での出会いが、思いがけないコラボや人生を変えるようなご縁に繋がることもあります。同じ志を持つ「濃ゆい人たち」と、顔を合わせて言葉を交える場は、まさに人脈という財産を育てる土壌です。
そして、そこに至るまでの道のりすらもワクワクの連続。知らない土地に行く準備やスケジュール調整、ちょっとした旅のような気持ちで過ごす時間すら、すべてが学びの一部。
帰りの新幹線や飛行機の中で資料を見返したり、ノートを整理しながら考えを深めたりする時間は、自分の成長をじんわりと感じるかけがえのないひとときです。
リアルでの学会参加は、「ただ情報を得るだけ」では終わらない、五感と感情を総動員した「体験」です。だからこそ、2025年も私は、自分の興味のあるテーマを追いかけて、現地で学ぶ機会を大切にしていきたいと思っています。
特に、遠方の会場へ足を運ぶ際は、心身のゆとりを保つためにも日程に余裕を持って参加することをおすすめします。旅の疲れを感じる前に一息つける時間があるだけで、学びの質も、そのあとのアウトプットも大きく変わってきます。一歩外に出ることで、自分の可能性や視野が大きく広がることも。そんな出会いを大切にしたいですね。学びの場は、知識だけではなく人生の景色も変えてくれます。2025年も好奇心のままに歩んでいきましょう。
歯科衛生士ライター:大久保
歯科医療の現場で役立つ実践的な知識を届けるORTC

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