歯科系大学ってどんなところ?歯科研究室についても調べてみました!

歯科知識, 歯科医

歯科系大学といえば歯科医師を目指す若者が通う大学、というイメージがあるかと思いますが、実際はどんなものがあるのでしょうか?

今回は歯科大学について、またその研究についてまとめていきます。
 

歯科系大学ってどんなところ?

歯学部とは、歯学を研究・教育する大学の学部のことで、一般に「歯学部」というと歯科医師を養成する歯学科を指すことが多いです。

以前までは歯学部というと、歯科医師を養成するための「歯学科」一学科のみを言いましたが、ここ数年で口腔保健学科など、歯科衛生士や歯科技工士を養成する4年制の学科を新設する歯学部も出てきました。
歯科衛生士専門学校や歯科技工士専門学校を附属校として持つ大学も全国的に増えてきています。

これに対して、歯学部のみを持つ単科大学は歯科大学と呼ばれています。

 

日本においては、歯学課程は通常の大学課程と異なり、6年間を最低修業年限としています。

これは医師を目指す医学部・獣医学部・薬学部などと同様の年数となります。

6年の修学年限を無事修了することで卒業が認められ、学士(歯学)の学位が授与されます。

大学院の4年制博士課程(6年制学部に直接接続する博士課程)に進学する際には、博士前期課程(修士課程)を経ず、4年制博士課程に進学し、博士号の取得を目指すことが可能となります。

歯学分野の修士号も存在しており、これは主に他学部卒業生が大学院で歯学分野の専攻に進む場合に目指す学位として位置づけられています。

なお、歯学部歯学科などの6年制課程の卒業者が、博士後期課程(歯学部歯学科などに接続する4年制博士課程とは異なる)に進学する際は、通例修士の学位が必要とされ、一般的に修士課程または博士前期課程などへの進学を要します。
 

外国の歯科医師養成機関を卒業し、日本国内において歯科医師免許の交付を受ける場合には、原則として歯科医師国家試験予備試験を受け、これに合格する必要があります。

また、当然のことながら歯科医師と医師は異なる資格ですので、歯学部を卒業しても医師国家試験の受験資格は得られません(医師法)。
 

歯学部は日本全国に27大学29学部あり、すべての歯学部は臨床実習の場である附属の「大学病院」を設置しており、さらに附属の診療所をいくつか持つものもあります。

偏差値の高さから「歯学部私立御三家」とも呼ばれているのは、東京歯科大学、日本歯科大学、日本大学歯学部の3校です。
2020年現在においては、11の国立大学、1つの公立大学、15の私立大学が歯学部を有しています。

ただし、1つの大学ながら別々の地域に2つの歯学部を擁する日本大学と日本歯科大学の例があるため、私立大学の歯学部の学部数は17学部となり、合計すると、27大学29学部の歯学部が日本に存在しています。

 

歯学では具体的にどんなことを勉強するの?


歯学では、生理学、病理学、細菌学など、広範囲にわたる医学的な分野に加え、歯列矯正、虫歯や歯周病の予防歯科学、解剖学など、口腔に関する専門的な分野について学びます。遺体解剖(全身肉眼解剖)や全身病理学も学びます。

また、理学や工学分野で開発が進む新素材を利用し、失われた歯を義歯などで補う研究などもされています。

では、数ある歯科系大学の中のうちの1つ、日本大学歯学部ではどのような研究をされいるのか見てみましょう。
 

口腔感染症を理解するため、探求し続けている研究室


日本大学歯学部感染症免疫学講座/総合歯学研究所生体防御部門では、「口腔感染症を理解する」という言葉をテーマとして日々研究を進められています。
 

主な研究テーマは、

1) 「細菌-ウイルスの微生物間相互作用」、及び「宿主-寄生体相互作用」による歯周疾患をはじめとする病気の発症と進行機序の解明
2) 口腔疾患および加齢を誘因とする全身疾患(肺炎、COVID-19、COPD、インフルエンザ、EBVウイルス感染症、がん等)の発症機序の解明

3) 疾患発症における潜伏感染ウイルス(EBVやHIV等)の再活性化機序の解明

4) 高齢者および周術期における全身疾患予防法としての新規口腔ケア法の開発と臨床応用

の4つを研究テーマの柱と設定されています。

 

昨今、歯周病をはじめとする口腔感染症と全身疾患との関連性が明らかとなり、医療者だけでなく一般の方々にも認識され注目されています。

日本大学歯学部では「宿主ー寄生体相互作用」研究に加え、「細菌ーウイルス相互作用」および「細菌ー細菌相互作用」という新たな視点から、口腔細菌がウイルス感染症や難治性全身疾患に及ぼす影響について分子生物学的研究や動物モデル研究、および臨床研究を進めておられます。

最近では、歯周疾患の発症そのものにおいても微生物間相互作用が重要な役割を担うことが解明されつつあります。

日本大学歯学部では研究成果を臨床に還元すべく、口腔ケア剤の開発を含めた新たな感染症予防策の構築や疫学調査などを通じて医科歯科連携の推進にも力を入れておられ、まさに私たち歯科医療者も現場でこれらの研究成果の恩恵を得ていることが分かりますよね。

 

研究で明かされる細菌と宿主の関係性


日本大学歯学部感染症免疫学講座/総合歯学研究所生体防御部門のHPにおいて今井健一さんの「ウイルスおよび細菌と宿主との相互作用機構の解明と疾患発症への関与」という研究内容が公表されていましたので、ここからはそちらの内容をご紹介します。

 

1、微生物間相互作用による歯周疾患発症機序の解明

お口の中には約700種類もの細菌が生息しており、さらに、多くのウイルスも存在していることが知られています。

歯科領域の2大疾患である「歯周病」と「う蝕」は、細菌感染症であることから多くの研究者が長年この疾病について研究を行い、今ではその全貌はほぼ解明されています。

しかし、お口の中には、HIVをはじめ、伝染性単核球症や上咽頭がん等に関わるEBウイルス、そして、冬季に流行するインフルエンザウイルスなど重要なウイルスが存在しているにもかかわらず、ウイルスについての研究はまだまだ解明されていないことが多くあるのです。

口腔領域のウイルス感染は、さまざまな全身疾患とも関係することから、ウイルスについての研究はお口の健康の重要性を広く認識するために重要と考えられており、今後の研究の発展が期待されています。

 

今井健一さんによると、近年、細菌感染症と考えられていた歯周疾患(歯周病や根尖性歯周炎)の発症と進展について、「ウイルスが関わっているのではないか?」という報告がなされているのだそうです。

実際の臨床現場では必ずしも歯周病原菌と歯周病の進行度が関連しない場合があること、進行性の歯周疾患においては歯周病原菌よりウイルスのほうが病態により密接に関わっているとする研究成果が積み重なっています。

しかしながら、ウイルスがどのように歯周疾患の発症に関わっているかについては全く解っていません。

その要因のひとつとして、ほとんどのウイルスは潜伏感染状態(眠っている状態)にあり、それがどのように活性化され病気を引き起こすウイルスとなるのかがよくわかっていない事があげられます。

このため、日本大学歯学部感染症免疫学講座/総合歯学研究所生体防御部門では、ウイルスと歯周疾患発症の関係を明らかにするべく研究を進められています。

 

2、歯周病が誘因となる新たな全身疾患としてのウイルス感染症

歯周病と全身疾患の繋がりについてはみなさんご存知のことと思います。

特に歯周病が糖尿病や肺炎などの全身疾患に与える悪影響についてはTVや雑誌でもよく取り上げられており、一般的にも広く認知されてきているかと思います。

ここから、日本大学歯学部感染症免疫学講座/総合歯学研究所生体防御部門では、「歯周病がウイルス感染症の発症と進展にも影響を及ぼしているのでは?」という新たな着想のもと研究を進めておられます。

特に、歯周病原菌がHIVやEBウイルスの複製に及ぼす影響やEBウイルスが関わる炎症やガンなどの病気、そしてインフルエンザに関する研究を進められています。

 

3、ウイルスの潜伏感染維持と再活性化機構の解明

多くの疾患の病因が分子レベルで解明され、遺伝子治療や再生医療を始めとする最先端医療がおこなわれている今日においても、ウイルス感染症、特に潜伏感染ウイルスに対する効果的な治療法はありません。

近年、遺伝子発現のON /OFF制御においてヒストンの修飾を介するエピジェネティック制御が中心的な役割を担っていることが明らかとなってきました。

日本大学歯学部感染症免疫学講座/総合歯学研究所生体防御部門では、歯周病原菌が産生する「酪酸」という物質が、ウイルス遺伝子のヒストンアセチル化を介して潜伏感染HIVやEBウイルスを再活性化する事を報告されています。

口腔で見出された事実が広く全身にも共通する事は、口腔疾患の重要性を再認識する必要性を示してもいます。

 

4、エイズ患者における口腔の疫学調査とエイズ検査法に関する研究

全世界のHIV感染者数は約3,300万人にのぼり、年間210万人もの人がエイズで亡くなっています。

わが国はHIV感染者とエイズ患者が年々増え続けている先進国の中では数少ない国の1つであり、ニュースでもよく目にされているかと思います。

そして、感染者が増え続けているにも関わらず、保健所などで検査をする人が減少しているという大きな問題も抱えています。

HIVの感染拡大が続き世界規模でのエイズ対策が求められる中、歯科の果たす役割は大きいと考えられます。

口腔病変の早期発見と早期治療は、日和見感染の拡大を防ぎエイズ発症を遅らせることにつながり、患者の予後を左右すると言っても過言でありません。実際にエイズ患者の多いアメリカなどでは、歯科医が口腔内科医としてHIV感染の早期発見と感染者の口腔管理などに大きく貢献しているそうです。

わが国でも、HIV関連症状を開業歯科医や口腔外科医により指摘されHIV感染が判明したケースも相次いでいます。エイズ患者の寿命が延び感染者が歯科治療を受ける機会も増えており、エイズ進展防止とQOLの観点からHIV感染症における歯科医療従事者の果たす役割は大きくなっています。目の前の患者さんの口腔症状から、的確な判断ができること、場合によっては検査を勧めることの必要性を認識していることが重要です。

日本大学歯学部感染症免疫学講座/総合歯学研究所生体防御部門では、厚生労働省エイズ対策研究事業班の先生方と共同でエイズ患者における口腔疾患とウイルス量などに関する調査研究や、口腔で行えるエイズ検査の日本導入へ向けた取り組みも行われています。

 

<まとめ>

いかがでしたか?

今回歯学部における研究についてまとめてみましたが、最先端の研究内容を知ることで今まで知識として知ってきたことも、こうして1つ1つ解明されてきたことなのだなと感じました。

日進月歩で進んでいく歯科トレンドについて、これからも自ら情報を掴んで理解していくことが大切ですね。

今後もさらなる研究に期待し、またその内容を理解して発信していくことを大切にしていこうと思います!

 

ライター:古家

歯科医療の現場で役立つ実践的な知識を届けるORTC

 

ORTCは「笑顔の役に立つ」を理念に、歯科界の知識を共有する場を目指しています。歯科医療の現場で役立つ最新の知識と技術を提供することで、臨床と経営の両面からクリニックの成長を支援します。最先端の技術解説や経営戦略に特化した情報を集約し、歯科医療の現場での成果を最大化。自己成長を追求するためのコンテンツをぜひご活用ください。

無料会員登録

無料動画の視聴、有料動画のレンタルが可能です。歯科業界についてのオンライン・オフラインセミナーへの参加が可能となります。

ORTCPRIME

今なら77%OFFの月額 2970円で、 ORTC内のすべての動画を見放題に。臨床の現場に役立つ最新の技術解説や、歯科医院経営の成功戦略を網羅した特別コンテンツをご利用いただけます。 歯科業界の方へ効率的に知識を深めていただける内容です。

ORTC動画一覧

ORTCセミナー一覧

まずは無料会員登録

こちらのリンクより会員登録ページへお進みください。

会員登録はこちら

ORTCPRIMEへのアップグレードも簡単!

登録後は「マイページ」から、ORTCPRIMEにいつでもアップグレード可能です。

一覧へ