インプラント埋入の手順は?インプラントの概要と注意したいポイントを徹底解説

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インプラント治療は、現代の歯科医療において革新的な選択肢です。
失った歯の機能と審美性を回復するこの治療法は、従来のブリッジや義歯とは異なり、人工の歯根を顎の骨に直接埋め込むことで、より自然な歯の感覚を取り戻すことができます。


インプラント埋入手術は、この治療の中核を成す重要な過程です。
この手術の成功が、その後の治療全体の成否を左右すると言っても過言ではありません。

適切に行われたインプラント埋入は、患者さんの咀嚼機能の回復だけでなく、口腔内の健康維持や審美的な満足度の向上にも大きく寄与するのです。

インプラント埋入手術の概要


以下がインプラント埋入手術の概要です。
 

・術前診断

・治療計画の立案

・患者への説明と同意
 

上記3つの概要を解説します。

術前診断

インプラント埋入手術は、綿密な術前診断が不可欠です。
まず、レントゲン撮影を行い、顎の骨の状態や神経の位置を確認します。

詳細な情報を得るために、CT撮影も実施します。
これにより、骨の密度や量、周囲の解剖学的構造を三次元的に把握することができます。
 

また、口腔内検査では、歯周病の有無や残存歯の状態、咬合関係などを詳しく調べます。
これらの情報は、インプラント埋入の可能性や、追加で必要となる処置(例:骨増量術)の判断に重要な役割を果たします。

治療計画の立案

診断結果に基づいて、歯科医師は最適な治療計画を立案をします。
埋入位置の決定は、審美性と機能性の両面から慎重に行われ、患者さんの骨質や量、埋入部位に応じて、適切なインプラント体のサイズや形状を選択することが主流です。
 

近年では、デジタル技術を活用した治療計画ソフトウェアも普及しており、より精密な計画立案が可能になっています。

患者への説明と同意

治療計画が決まったら、患者様への詳細な説明が行われます。
手術の流れ、予想される結果、そしてリスクと利点について過不足なくお伝えされるはずです。

また、術後のケア方法や、治療全体の期間、費用についても明確に聞くことができます。


患者様の理解と同意を得ることは、治療の成功と満足度向上に不可欠です。
質問や不安な点があれば、十分に時間をかけて解消することが重要になってきます。

インプラント埋入手術の手順


局所麻酔の施術

手術は通常、局所麻酔下で行われます。
麻酔薬を慎重に注射し、手術部位の痛みを完全に取り除き麻酔の効果が十分に現れるまで待ちます。
これは患者様の不安を軽減するためです。

切開と粘膜剥離

麻酔が効いたら、歯肉を切開し、骨面を露出させます。
切開線は、将来のインプラント上部構造の設計を考慮して慎重に決定します。
粘膜を丁寧に剥離し、骨面の状態を直接確認します。

ドリリング

骨面が露出したら、インプラント埋入のためのドリリングを開始します。
初期ドリリングでは、小径のドリルを使用して骨に最初の穴を開けます。
その後、段階的に大きなドリルに交換しながら、穴を拡大することが一般的です。
 

このプロセスでは、ドリルの回転速度や圧力を慎重にコントロールし、骨への熱損傷を防ぎます。
また、埋入方向や深さを常に確認し、計画通りの位置にインプラントが埋入できるよう注意を払う必要性があります。

インプラント体の埋入

ドリリングが完了したら、選択したインプラント体を埋入します。
インプラント体の埋入深度は、将来の補綴物の設計や審美性を考慮して慎重に調整しましょう。
また、埋入角度も重要で、隣接歯や対合歯との関係を考慮しながら、最適な位置に埋入します。
 

埋入後は、インプラント体の初期固定の確認です。
十分な初期固定が得られない場合は、より太いインプラント体に交換したり、埋入位置を変更したりする必要があることもあります。

カバースクリューの装着

インプラント体が正しく埋入されたら、その上にカバースクリューを装着します。
これは、骨とインプラントが結合(オッセオインテグレーション)する期間中、インプラント内部への異物の侵入を防ぐ役割を果たすためです。

縫合

最後に、切開した歯肉を丁寧に縫合します。
使用する縫合糸や縫合方法は、創傷の治癒を促進し、感染リスクを最小限に抑えるものを選択し使用します。

最新のインプラント埋入技術


2024年現在では、最新のインプラント埋入技術が存在します。
 

・コンピューターガイデッドサージェリー

・即時荷重インプラント

・All-on-4テクニック
 

以下で詳しく解説していきますね。

コンピューターガイデッドサージェリー

近年、コンピューターガイデッドサージェリーが普及しています。
この技術では、CT画像データを基に作成した手術用ガイドを使用することで、より精密で安全な埋入が可能になりました。
術前のシミュレーションにより、複雑なケースでも正確な埋入位置を決定できます。

即時荷重インプラント

従来のインプラント治療では、埋入後数ヶ月の治癒期間を設けていましたが、即時荷重インプラントでは、埋入直後から暫間的な補綴物を装着することが可能です。
ただし、適応症例は限られており、十分な初期固定が得られる場合に限って行われます。

All-on-4テクニック

All-on-4テクニックは、上下顎の全ての歯を失った患者さんに対して、わずか4本のインプラントで固定式の義歯を支える革新的な方法です。
後方のインプラントを傾斜させて埋入することで、骨量の少ない部位でも治療が可能になります。

術後のケアと経過観察


術後のケアと経過観察について、以下が挙げられます。
 

・術直後の注意事項

・痛みと腫れの管理

・口腔衛生指導

・定期的な経過観察
 

こちらも以下で詳しく解説します。

術直後の注意事項

手術直後は、出血や腫れを抑えるため、ガーゼで約30分程度圧迫します。
その後24時間は、喫煙や飲酒、激しい運動を避け、安静にすることが重要です。
また、うがいは控えめにし、手術部位に舌や指で触れないよう指導します。

痛みと腫れの管理

術後の痛みや腫れは個人差がありますが、通常3日程度で軽減します。
処方された鎮痛剤を適切に服用し、必要に応じて冷却を行います。
痛みや腫れが長引く場合や、急激に悪化する場合は、すぐに歯科医院に連絡するよう指導します。

口腔衛生指導

術後の感染予防のため、適切な口腔衛生管理が不可欠です。
手術部位以外の歯や歯肉は、通常通りブラッシングを行います。
手術部位については、歯科医師の指示に従い、適切な時期から注意深くケアを始めましょう。

必要に応じて、抗菌性のうがい薬を使用することもあります。

定期的な経過観察

インプラント埋入後は、定期的な経過観察が重要です。
通常、1週間後、1ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後にチェックを行います。レントゲン撮影で骨との結合状態を確認し、周囲の歯肉の状態もチェックします。
問題なく経過していれば、最終的な補綴物の装着へと進みます。

インプラント埋入手術のリスクと合併症


インプラント埋入手術において注意しなくてはいけないのは、術中のリスクと術後の合併症です。
この点に関しても以下で詳しく解説します。

術中のリスク

インプラント埋入手術中に生じる可能性のあるリスクとしては、出血や神経損傷があります。
特に下顎の奥歯部では、下歯槽神経を損傷するリスクがあるため、慎重な手術計画と技術が求められます。
また、上顎洞に近い部位では、上顎洞底を穿孔するリスクもあります。

 術後の合併症

術後に起こりうる合併症としては、感染やオッセオインテグレーションの失敗があります。
感染は適切な口腔衛生管理と抗生物質の使用によりほとんどの場合予防できますが、稀に重篤な感染に発展することもあります。
オッセオインテグレーションの失敗は、インプラントの脱落につながる可能性があるため、慎重な経過観察が必要です。

まとめ

インプラント埋入手術は、失われた歯の機能と審美性を回復する上で非常に重要な役割を果たします。
この手術の成功には、綿密な術前診断、適切な治療計画、そして熟練した技術が不可欠です。また、患者さんの協力も重要な要素となります。
 

適切に行われたインプラント埋入手術は、患者さんのQOL(生活の質)を大きく向上させる可能性を秘めています。
しかし、それぞれの症例に応じた慎重な判断と、最新の技術や知識の活用が求められることを忘れてはいけません。
 

あくまでも患者様が積極的にインプラント埋入手術を検討したいと考えられるような実績と解説が必要になるでしょう。

 

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ここまでお読みくださりありがとうございました。
 

編集・執筆

歯科専門ライター 萩原 すう

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