「青い丸」と「黒い丸」は、主に治療計画を立てるクリンチェック作成時に表示され、歯の移動の「予測実現性」を示すものです。黒い丸は移動量が大きすぎて実現性が低いことを、青い丸は中程度に実現性が低いことを警告しています。しかし実際には、クリンチェックの精度=歯科医院経営の安定性に直結していることをご存知でしょうか。特に画面上に表示される青い丸・黒い丸(Overly Optimistic Movement:過度な移動量の警告)は歯牙移動評価ツール (Tooth Movement Assessment: TMA)の中の機能で、
・その歯の移動が治療計画の限界に近いこと
・計画通りに歯が動かない可能性を示す重要なアラートです。
実はこの警告こそが、追加アライナー発生、治療期間の長期化、チェアタイム増加、患者満足度低下といった経営上の損失の予兆になっています。本記事では、歯科経営者が必ず押さえるべき「青い丸・黒い丸=経営リスク」という視点を整理し、リスク回避策・スタッフ教育・経営戦略までを体系的に解説します。
①クリンチェックの青い丸・黒い丸は経営リスクの可視化である
インビザライン治療は「計画通りに歯を動かす治療」です。つまり、計画の精度が低ければ低いほど、歯科医院の利益を押し下げる構造になっています。クリンチェック上の青い丸・黒い丸は、その歯の移動が大きすぎる、力学的に非現実的、追加補助が必要というシグナルです。これを逃すと、
・歯の予定方向に動かない
・アタッチメントが効かない
・過度なIPR依存に陥る
・咬合ズレを後から修正できない
・追加アライナーが複数回発生
といった状況が必ず起こります。つまり青い丸・黒い丸とは、「このままの計画では赤字治療になる可能性がある」という、経営者がもっとも敏感になるべきアラートなのです。
②青い丸・黒い丸を放置した場合の経営的損失とは?
インビザライン治療の経営収支に最も影響を与えるのは、
・追加アライナー発生
・治療期間の延長
・ユニット占有時間の増加
・際説明・再印象・再スキャンなどの手間
・患者の不信感・口コミ低下
です。放置した場合、これらすべての引き金になります。
(1)追加アライナーの発生〜利益率を最も削る要因〜
青い丸・黒い丸が多い=「歯の動きが計画の限界」。この状態で治療を開始すると予定通りに動かない可能性が高く、追加アライナーに直結します。追加アライナーが出るほど、
・治療が長期化する
・その分チェアタイムが消費される
・スタッフの動きが増える
・再来院回数が増える
・最終的なスキャン・アタッチメント再装着が増える
つまり歯科医院の利益は確実に下がります。一般的な矯正の利益率を考えると、追加アライナー1回ごとに利益率は5〜10%落ちると言われています。事前に修正することは、追加アライナー回数を減らす=経営改善策なのです。
(2)治療期間の長期化〜患者満足度が下がる最大要因〜
追加アライナーが出ると、最短12ヶ月→最大30ヶ月以上の長期化になることも珍しくありません。すると、
・患者満足度の低下
・キャンセルやリテーナー不良によるトラブル増加
・解約・返金リクエストへのリスク
・患者の紹介数減少
・歯科医院の評判への影響
という負のスパイラルが起きます。青い丸・黒い丸は、治療期間の伸びを未然に防ぐ入り口です。
(3)ユニット占有時間の増加=他の収益機会の消失
追加アライナーがあると、再アタッチメント装着、IPR修正、スキャン、再説明、経過観察の頻度増加が発生します。これはすべて無償の時間消費です。特にユニット数が限られている歯科医院では、クリンチェック精度が悪いほど収益機会が確実に失われるのが現実です。
③青い丸・黒い丸を事前に消すための経営型クリンチェック戦略
クリンチェックは技術者の仕事だけではありません。歯科医院の利益を守るための経営ツールです。青い丸・黒い丸が出た場合に行う修正は以下の4つになります。
(1)歯の移動量を再検討する
回転移動量、歯軸コントロール、近遠心への移動量など、見直すシグナルにもなります。
<対応策>
該当される歯の移動量を小さくし、過度な移動は避ける
(2)IPR(歯間削合)量の見直し
多くの場合「スペース不足」が原因です。IPR量が適切か、その位置で足りるか、タイミングは正しいかを再確認することで、計画の無理を解消できます。
(3)移動ステップの微調整
治療計画を動かしすぎている場合は、移動量を小さくする、ステージ数を増やす、トラッキング重視の計画に変更することで青い丸・黒い丸が消えます。これは治療成功率をあげる最もコスパの良い方法です。
(4)難症例(抜歯症例など)では青い丸・黒い丸は必ず吟味すべき
抜歯症例や大きな叢生では青い丸・黒い丸が出やすくなります。初期クリンチェックでリスクを潰すことが経営の生命線です。セグメンテッド移動、アンカレッジ設定の見直し、歯根位置の確認、中間ステージの追加の微調整は、赤字治療を避けるために必須です。
④スタッフ教育〜青い丸・黒い丸は全スタッフで共有すべき経営知識〜
歯科医師だけが青い丸・黒い丸の意味を理解していても不十分です。スタッフが理解すべきポイントは追加アライナーが経営に与える影響、コンプライアンスインジケーターの重要性、トラッキング不良の早期発見、患者教育の要点です。特に歯科衛生士が患者管理を行う歯科医院では、「青い丸・黒い丸が多い症例=装着時間の徹底が必要な症例」と認識させるだけでも追加アライナー数は大きく減ります。

⑤青い丸・黒い丸を経営数値として見える化する歯科医院は強い
青い丸・黒い丸の多いクリンチェックほど、治療期間が長くなり再来院が増え、ユニットを占有し利益率が低下します。したがって、歯科医院の利益率を下げる赤字リスク指標です。逆に言えば、青い丸・黒い丸を減らすだけで歯科医院の年間粗利が向上します。
⑥クリンチェックの精度を高めるならORTCの実践コンテンツが最適
青い丸・黒い丸を正しく読めるようになり、追加アライナーを減らし、治療期間を最短化するためには、実際のクリンチェック指導を受けるのが最も効率的です。ORTCでは以下のような実践型コンテンツが充実しています。
・クリンチェック手取り足取り解説
→青い丸・黒い丸が出た時の修正方法を実例ベースで学べる
・公開クリンチェック指導会
→他院のクリンチェックを見ることで即座に応用できる学びが得られる
・矯正医による治療計画ライブ添削
→難症例における青い丸・黒い丸の消し方が理解できる
・スタッフ向けインビザライン教育コンテンツ
→コンプライアンス指導やトラッキング管理の基礎を学べる
インビザライン治療における青い丸・黒い丸を正しく理解し活かすことで、治療精度が上がり、追加アライナーが減り、患者満足度が向上し、歯科医院経営が安定します。
まとめ
青い丸・黒い丸は経営者が絶対に見逃してはいけないアラートです。最後に要点を整理します。
・治療計画の限界のサイン→追加アライナー・治療期間延長のリスク
・アラートを放置するほど歯科医院の利益率が下がる→ユニット占有時間・再来院・スタッフ労力が増加
・青い丸・黒い丸の消去は、最も有効な経営改善策→アタッチメント、IPR、ステップ調整で精度向上
・スタッフ教育で追加アライナー率を大幅削減できる→コンプライアンス管理が重要
・ORTCには、正しく理解し治療精度を高める学習機会が揃っている→クリンチェック指導、公開添削、教育動画が充実
クリンチェックは技術的な警告だけではなく、歯科医院の利益と治療の成功を左右する経営アラートです。味方につけられる歯科医院こそ、インビザラインを安定した収益源として成長させることができます。
そしてこれは、私自身の経験からも強く実感していることです。私はインビザラインを導入している歯科医院で勤務していたにも関わらず、当時は青い丸・黒い丸の意味を理解していませんでした。もしその重要性を知っていたら、治療経過のチェックや患者への装着指導、歯科医師との症例共有の仕方など、もっと主体的な行動ができていたと感じています。
インビザライン治療は、歯科医師だけでなく、スタッフ全員が同じ理解をもって取り組むことで成功率が大きく変わります。逆にいえば、知らないというだけで歯科医院は簡単に時間と利益を失います。
ORTCでは青い丸・黒い丸を正しく理解し、治療精度を高めるための実践的なセミナーや公開クリンチェック指導コンテンツを提供しています。
リスクではなく改善のチャンスとして捉え、歯科医院全体の治療精度を底上げするきっかけとしてぜひ活用してください。
よくある質問
Q1.クリンチェックに表示される青い丸・黒い丸は、具体的に何を示しているのですか?
A.インビザライン社が「この移動量は治療計画として楽観的です」と警告するサインです。
Q2.青い丸・黒い丸が多いクリンチェックで治療を始めると、どんな経営リスクが発生しますか?
A.追加アライナーが複数回必要になる、チェアタイム・ユニット占有が増える、再スキャン・再アタッチメント装着など無償作業が増加、治療期間が延び患者満足度の低下、不信感による口コミ低下など経営効率悪化を招きます。
Q3.青い丸・黒い丸が出た場合の、具体的な修正方法は何ですか?
A.経営的リスクを減らすためには、治療開始前の修正が最も効率的です。IPR量・位置の再検討、移動ステージの細分化・移動量の減少などを行うことで減り、治療の成功率が大幅に向上します。
歯科衛生士ライター:大久保
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