講師紹介 宮崎真至
- 宮崎真至
- 日本大学歯学部保存学教室修復学講座 教授
- 日本大学歯学部卒業,日本大学大学院歯学研究科博士課程修了している。現在、日本大学歯学部保存修復学講座の主任教授。保存修復治療をメインとした診療を行うとともに、象牙質接着、材料科学、臨床研究に関する多数の論文を科学雑誌に発表している。また、象牙質接着や直接審美修復に関するテーマで、国内外で講演やハンズオンコースを開催している。
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・卒後間もない先生
・保存修復について再確認したい先生
・基礎をアップデートしていきたい先生
日々、臨床・研究・教育で活躍されている宮崎先生に保存修復に関して、臨床の現場で役立つ内容をお話しいただきました。
日頃の臨床治療も、改めて振り返ることで発見や再認識もあるかと思います。
ぜひご覧ください。
接着技術の進歩により、歯科治療における修復方法が大きく変化しています。
従来のメタルインレー修復と比較して、接着性レジン修復には以下のような利点があります。
1. 最小限の歯質削除
2. 簡略化された窩洞形成
3. 審美性の向上
4. 処置時間の短縮
5. 多用途性
6. 接着強度の向上
これらの利点により、患者様にとって、より快適で保存的な治療が可能になりました。
接着システムの選択と適切な使用が重要ですが、接着技術の恩恵は歯科治療に革新をもたらしています。
時代の流れに伴って歯科業界も進化していることがうかがえますね。
以下で詳しく説明していきます。
接着修復の大きな利点は、最小限の歯質削除で済むことです。
従来のメタルインレー修復では、予防拡大や保持形態の付与のため、健康な歯質も削除する必要がありました。
その一方、接着修復では、う蝕除去のみで窩洞形成が完了し、健康な歯質を最大限に保存できます。
これにより、患者さんの歯の長期的な健康維持に貢献します。
接着修復では、窩洞形成が大幅に簡略化されます。
従来のメタルインレー修復では、複雑な形態や保持形態が必要でした。
ですが接着修復ではう蝕除去がそのまま窩洞形成となります。
特に2級窩洞を1級単純窩洞化できるなど、形成手順が簡素化され、治療時間の短縮にもつながります。これにより、患者様の負担も軽減されるのです。
接着修復の大きな利点は審美性の向上です。
コンポジットレジンを用いることで、天然歯に近い色調と形態を再現できます。
従来のメタルインレーと異なり、積層充填技術により解剖学的形態を精密に再現可能です。
特に前歯部や露出した修復物では、患者様の満足度が高くなります。
また、全部被覆冠のような大規模な修復でも自然な外観を実現できるのです。
接着修復技術の進歩により、歯科治療の処置時間が大幅に短縮されました。
宮崎歯科医師(以下:宮崎先生)によると、1級窩洞の修復であれば約15分で完了することができるとのことです。
窩洞形成の簡略化、接着システムの効率化、コンポジットレジンの操作性向上などが時間短縮に貢献しています。
これにより、患者様の負担が軽減され、歯科医師の診療効率も向上することとなりました。
接着システムの進化により、歯科修復の適用範囲が大幅に広がりました。
1級窩洞から2級窩洞、さらには全部被覆冠まで、様々な症例に対応可能です。
また、メタルインレーからコンポジットレジンへの置き換えや、補修など、既存の修復物に対する処置にも使用できます。
この多用途性により、より多くの症例で審美的かつ保存的な治療が可能となりました。
接着技術の進歩により、歯質との強固な結合が可能になりました。
従来は全部被覆冠にピンによる保持が必要でしたが、現在は不要となっています。
エナメル質への接着は、エッチングによる微小な凹凸形成と機械的嵌合で強固になります。
象牙質に対しては、機能性モノマーの化学的結合やハイブリッド層形成により、接着強度が向上しました。
これにより、より確実で長期的に安定した修復が可能になっています。
臼歯部の2級窩洞修復において、接着システムの使用は大きな利点をもたらします。
従来のメタルインレー修復では、予防拡大や複雑な窩洞形態が必要でした。
しかし接着修復では、う蝕除去後にセレクティブエッチング、ボンド処理を行い、2級窩洞を1級単純窩洞化することができます。
その後フロアブルレジンでライニングし、コンポジットレジンを積層充填していきます。
これにより、健康な歯質の保存、審美性の向上、そして処置時間の短縮が可能となるのです。
患者さんにとっても快適な治療となるでしょう。
前歯の破折症例では、接着修復技術が大きな効果を発揮します。
接着の原理を応用すると以下のような処置が可能です。
まず、破折面をセレクティブエッチングし、ボンド処理を行います。
その後、コンポジットレジンを用いて解剖学的形態を積層充填技術により、エナメル質や象牙質の色調や透明感を忠実に再現します。
処置時間も短く、約15分程度で完了することが可能です。
この方法により、審美性に優れ、最小限の歯質削除で済む修復が実現できます。
接着システムの基本的な処理ステップは以下の3つから構成されます。
1. エッチング
2. プライミング
3. ボンディング
これらのステップは臨床的には時間がかかるため、様々な簡略化システムが開発されてきました。
それが以下の内容です。
1. トータルエッチシステム
2. セルフエッチングプライマーシステム
3. オールインワンシステム
最新のユニバーサルアドヒーシブは、これらの機能を1ステップで実現し、様々な被着体に対応できる汎用性を持っています。
ただし、特定の状況下ではシランカップリング剤の追加処理が推奨される可能性も否定できません。
象牙質は有機質と水に富み、接着の阻害因子である汚染物質を含む複雑な構造を持ちます。
当初、リン酸エッチングのみでは十分な接着が得られませんでした。
これは露出したコラーゲン繊維へのボンディング剤の濡れ性が悪かったためです。
プライマーの使用により、コラーゲン繊維と象牙質へのボンディング剤の浸透性が向上し、効果的なハイブリッド層の形成が可能になりました。
現代のボンディングシステムは、機能性モノマーを活用して歯質のカルシウムと化学的に反応し、強固な接着を実現します。
特にMDP含有製品はジルコニアへの接着性が高いことが特徴です。
また、エナメル質、象牙質、各種修復材料に接着可能な多機能性を持ち、ユニバーサルアドヒーシブとして様々な被着体に対応します。
一部の製品ではシランカップリング剤を含有し、追加のシラン処理が不要となっていますが、ポーセレンへの接着性向上には追加処理が効果的な場合もあります。
さらにワンステップで複数の機能を発揮する簡便な操作性により、治療時間の短縮に貢献しています。
接着システムの進化により、歯科修復の可能性が大きく広がりました。
コンポジットレジンの機械的な強度の向上と、優れたボンドの開発が相まって、従来は難しかった複雑な窩洞や広範囲の修復が可能になっています。
1級窩洞から2級窩洞、さらには全部被覆冠まで、幅広い症例に対してコンポジットレジン修復が適用できることは大きな進歩です。
接着技術は現代の歯科治療の基盤となり、最小限の侵襲で審美性と機能性を両立した修復を実現しています。
今後も接着システムの基本を理解し、適切に活用することが重要になるでしょう。
ここまでが宮崎先生の解説となりました。
ぜひ臨床の場で生かして下されば幸いです。
ORTConlineでは日頃の診療で他の人には聞けない悩みを解決するため、様々なテーマを取り扱っています。
1本15分程度で構成しているので、ぜひ隙間時間にスキルアップしてみませんか?
ここまでお読みくださりありがとうございました。
動画の方も是非ご視聴ください!
編集・執筆
歯科専門ライター 萩原 すう