講師紹介 高田訓
- 高田訓
- 奥羽大学歯学部歯学科口腔外科学講座 教授
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・日々の診療でテキストで学んでいない施術に悩んでいる先生
・スキルを上げたい先生
・知識を蓄え、実践に生かしたい先生
ここでは教科書には載っていない、けれど知っていると診療がぐんとよりよくなる知見を髙田講師をお招きして解説頂いています。
動画の中で、髙田講師も「賛否両論あると思いますが」と仰っていますが、知っているのといないのとではまったく違いますのでぜひ知識として持ち帰って頂けたら幸いです!
抜糸を1週間後に行う理由をご存知でしょうか。
これには科学的根拠があります。
傷口にできるかさぶたの主成分である血小板の寿命は約10日です。
かさぶたは、10日前に生まれた血小板から昨日生まれた血小板まで、様々な年齢の血小板で構成されています。
血小板は死ぬ際に傷口を治すための物質を放出するのです。
約1週間経つと、最初にできたかさぶたの血小板がすべて役割を果たし、傷口の修復が完了します。
このタイミングで抜糸することにより、かさぶたの役割を最大限に活用、かつ感染リスクを軽減できるのです。
この原理は口内炎にも当てはまります。
2週間以上治らない口内炎は要注意です。
特に、白板症や紅板症の間にできた2週間以上治らない口内炎は、扁平上皮がんの可能性があるため、専門医の診断を受けることをお勧めします。
レーザー治療は細胞を活性化させる効果がありますが、使用には注意が必要です。
特に、がん細胞の疑いがある場合は避けるべきです。
がん細胞は正常細胞よりも速く活性化されるため、レーザー照射によって予期せぬ悪化を招く可能性があります。
2週間以上治らない口内炎や、白板症・紅板症の間にある病変には、レーザー照射を控えましょう。
「痛いの痛いの飛んでいけ」という言葉、実はこれには科学的根拠があります。
皮膚や粘膜の表面には神経終末があり、これが痛みを感知します。
一方、触覚や圧覚を感知する神経は少し深い位置にあり、痛覚の伝達速度は、触覚や圧覚の伝達速度よりも遅いのです。
そのため、痛みを感じる部位をさすったり、こすったりすることで、触覚や圧覚の情報が先に脳に到達し、痛みの感覚を抑制することができるのです。
局所麻酔注射の痛みを軽減するためには、いくつかの工夫があります。
まず、注射針の形状に注目しましょう。
最新の注射針は、先端が3面カットや斜めカットになっており、皮膚や粘膜の痛点を少なく通過できるよう設計されています。
注射時は、針の切れ込み面を確認し(多くの場合、赤い点や三角マークで示されています)、その面を痛点に対して垂直に刺入することで、痛みを軽減できます。
また、注射部位の選択も重要です。
例えば、上顎では付着歯肉よりも可動粘膜の方が痛みを感じにくい構造になっています。
これは、伸縮の激しい部位ほど痛点が少ないためです。
口蓋側の注射では、粘膜が硬いため、針先を少し曲げて粘膜に垂直に刺入するテクニックも効果的です。
切開時は、骨に当たるまでメスを一気に入れ、骨に沿ってすべらせるように切開すると、きれいな切開線が得られ、治癒も早くなります。
縫合では、針を粘膜に対して垂直に刺入し、骨膜下を通して、同じ距離で出すことが基本です。
結紮は、教科書的な正々逆々の4回結びではなく、正逆の2回結びで十分です。
これにより、結び目が小さくなり、感染リスクも軽減できます。
また、縫合間隔は5mm以上空けることで、腫れを軽減し、治癒を促進できます。
冷罨法は、急性炎症の抑制には効果がありますが、長期間の使用は逆効果になる可能性があります。
それは血管を収縮させ、代謝や免疫活動を低下させてしまうためです。
抗生物質の投与タイミングは、処置の1時間前が最適といえます。
これにより、処置時に有効血中濃度に達していることが期待できるのです。
抜歯後のうがい薬は、必ずしも必要ではありません。
唾液には強力な自然治癒力があるため、過度なうがいはかえって治癒を妨げる可能性があります。
最後に、歯科用材料アレルギーにも注意が必要です。
金属だけでなく、レジンやセメントなどの非金属材料によるアレルギーもあります。
アレルギー反応が疑われる場合は、包括的なパッチテストを行うことをお勧めします。
以上、日常の歯科診療に役立つ「裏技」的な知識をいくつかご紹介しました。
これらの情報は、必ずしもすべての症例に当てはまるわけではありませんが、診療の幅を広げるヒントになるかもしれません。
私たち歯科医師は、常に最新の知識を吸収し、患者さんにとって最善の治療を提供する努力を続けていく必要があります。
教科書には載っていない経験則や新たな知見にも目を向け、より良い歯科医療の実現を目指しましょう。
日々の診療で、これらの工夫を取り入れることで、患者さんの痛みや不安を軽減し、より快適な治療体験を提供できるはずです。
また、治癒促進や合併症予防にもつながる可能性があります。
ただし、新しい技術や方法を導入する際は、十分な理解と練習が必要です。
また、個々の患者さんの状態に応じて適切に判断することも欠かせません。
これらの「裏技」を単なる小技として扱うのではなく、科学的根拠に基づいた治療の一環として捉え、慎重に適用していくことが大切です。
最後に、常に学び続ける姿勢を持ち、新しい知見や技術に対してオープンな態度を保つことが、歯科医療の質の向上につながります。
患者さんとのコミュニケーションを大切にし、一人一人に最適な治療を提供できるよう、日々研鑽を重ねていきましょう。
最後に口蓋側の切開や剥離の実演動画がありますので、ぜひ参考にされてください。
第二弾は冷罨法に関してや抜糸後のうがい薬、歯科用材料アレルギーについてお話ししてくださる予定です。
引き続きぜひご覧ください。
今回の動画での講義はここまでになります。
ぜひ臨床の場で活躍して下されば幸いです。
ORTConlineでは日頃の診療で他の人には聞けない悩みを解決するため、様々なテーマを取り扱っています。
1本15分程度で構成しているので、ぜひ隙間時間にスキルアップしてみませんか?
ここまでお読みくださりありがとうございました。
動画の方も是非ご視聴ください!
編集・執筆
歯科専門ライター 萩原 すう