訪問栄養食事指導スタートガイド

Step16 低栄養への対応:学会発表症例を参考に...

Step16 低栄養への対応:学会発表症例を参考に... 稲山未来
講師
稲山未来
Kery栄養パーク
代表 管理栄養士

講師紹介 稲山未来

  • 稲山未来
  • Kery栄養パーク
  • 代表 管理栄養士
  • 栄養士養成校を卒業後、特別養護老人ホームで調理に携わりながら管理栄養士の国家資格を取得。給食管理や栄養管理に加え、看取り期の食支援にも深く関わり、高齢者が“最期まで食べる”ことを支える重要性を学んだ。 さらに、食事だけでなく生活全体を支えるため介護支援専門員資格を取得し、包括的なケアに取り組んできた。
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こんな方におすすめ

摂食嚥下リハビリテーションに関わり、栄養補助食品の知識が必要な歯科衛生士

低栄養やがん患者を抱える訪問歯科診療を行う歯科医師

口腔機能と栄養状態の改善を専門的にサポートしたい歯科スタッフ

管理栄養士の訪問栄養食事指導を始めたい歯科医院や管理栄養士

動画の紹介

本動画「訪問栄養食事指導スタートガイド ステップ16」では、在宅利用者、特にがん患者や高齢者に多い低栄養への具体的な対応策を、学会発表症例を交えて詳述します。単にカロリーを増やすだけでなく、食へのこだわりや食欲不振といった背景にある要因を考慮した個別化された栄養介入の重要性を解説します。

動画内容

個別化された介入戦略:がん患者事例の教訓

本動画では、在宅の低栄養患者、特にがん患者や摂食嚥下機能に課題を抱える高齢者への栄養強化の実際を、管理栄養士による学会発表症例を参考に深く掘り下げます。低栄養は予後不良や死亡率増加に直結するため、重度化する前の早期介入が必須です。

事例として、食欲不振と食へのこだわりがある肺がん患者(BMI 14.2、グリム重度低栄養)への介入が紹介されました。この患者は「栄養補助食品を拒否」し、好きな炭水化物に偏りがちという課題がありました。管理栄養士の介入により、2ヶ月で摂取エネルギー量が増加し、体重が2.3kg増加、さらにはQOLの向上(散歩の習慣化、気分不快期間の短縮)に繋がりました。

この成功事例は、食事指導において、栄養学的理想論だけでなく、患者の嗜好と生活環境を尊重した実現可能な対策を立てることの重要性を示唆しています。

嚥下機能・嗜好に基づいた補助食品の選択

栄養補助食品を活用する場合、その選び方には細心の注意が必要です。動画では、90歳・要介護の高齢者の事例(摂取エネルギー量400kcal)を基に、以下の観点から栄養補助食品の選択肢を解説しています。

1. 濃厚流動食品・補助食品(食品扱い)

嚥下障害の有無が選択基準の最重要ポイントです。重度の嚥下障害がある場合は、水分に誤嚥のリスクがあるドリンクタイプを避け、ゼリータイプ(アイソカルゼリー、ハイカロリーゼリーなど)や半固形化されたものを選びます。甘いものが苦手な患者には、塩気のある茶碗蒸し風やごま豆腐味の栄養強化プリン、または冷凍してアイス状にすることで甘味の感じ方を抑える工夫などが紹介されています。

2. 医薬品の経腸栄養剤(処方扱い)

主治医の処方箋が必要な栄養剤は、高カロリーを効率的に補給できます。これらはサラサラな液状であるため、嚥下障害者への対応には専用のとろみ剤(リフラノン、ツルリンコ牛乳流動食用など)の使用が検討されますが、濃厚流動食品用のとろみ剤を使用する際は、水分量が少ないため溶けにくいことに注意が必要です。

3. 食品へのちょい足し

MCTオイルやプロテインパウダーを混ぜる方法も有効ですが、食感や味の変化が許容できるかを考慮する必要があります。高齢者にはパックを開けてそのまま食べられる簡便さや、購入環境(通販か、スーパーか)への配慮が重要です。これらの食品扱いの商品については、ヘルシーフードの通販カタログなどを活用し、患者や家族に購入方法を伝えることが有効です。

結論として、低栄養対策の成功は、何がどのくらい足りないかの確認に加え、嚥下機能、嗜好、介護環境(誰が、どのように調理・購入するか)、そして使いやすさを総合的に考慮した個別化にかかっていると結論付けています。歯科医療従事者は、患者の口腔機能情報を提供することで、この個別化された栄養強化計画の立案に大きく貢献できます。

教えて先生

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