講師紹介 高田訓
- 高田訓
- 奥羽大学歯学部歯学科口腔外科学講座 教授
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・日々の診療でテキストで学んでいない施術に悩んでいる先生
・スキルを上げたい先生
・知識を蓄え、実践に生かしたい先生
ここでは教科書には載っていない、けれど知っていると診療がぐんとよりよくなる知見を髙田講師をお招きして解説頂いています。
動画の中で、髙田講師も「賛否両論あると思いますが」と仰っていますが、知っているのといないのとではまったく違いますのでぜひ知識として持ち帰って頂けたら幸いです!
歯科治療は日常的に行われる医療行為ですが、一般には知られていない技術や注意点が数多く存在します。
今回は、大学病院の口腔外科教授が語る「教科書にない裏技・工夫」シリーズの第3弾をもとに、歯科治療の意外な側面についてお伝えします。
上顎洞は頬の内側にある空洞で、通常は歯科治療の際に直接見ることはありません。
しかし、特殊な状況下では上顎洞を覗くことができ、それによって新たな治療アプローチが可能になります。
フロントアプローチのメリットは以下のとおりです。
・埋伏歯の抜歯が可能
・落下したインプラントの回収が可能
・他の歯や骨に影響を与えずに処置可能
この際の注意点として、上顎洞の奥には静脈層があり、触れると大量出血の危険性があるので慎重に施術を行う必要があります。
多くの人は、歯を抜く際に使用する鉗子を「歯を掴む道具」だと考えています。
しかし実際には、鉗子は歯を両側から支えるヘーベルのような構造になっているため、歯を強く掴もうとすると、逆に歯が滑りやすくなってしまうのです。
歯をしっかり把持できる適切な道具は以下のとおりです。
・ペアン
・モスキート鉗子
・骨鉗子
鉗子ならばなんでも良いというわけではないことを頭に入れておきましょう!
歯科治療後の出血は通常すぐに止まりますが、まれに止血が困難なケースがあります。
ある症例では、親知らずの抜歯後に止まらない出血が発生し、最終的に全身麻酔下で4日間の入院治療が必要となりました。
出血時の注意点は以下のとおりです。
この点は留意しておきましょう。
・上顎の奥にある静脈層の存在に注意
・血圧管理が重要
・長期の全身管理が必要になる可能性あり
髙田講師は実際にこのような症例に立ち合い、8番抜歯の予後が悪い状況にあったそうです。
この点は動画内で詳しく経過を追って解説して下さっているので、ぜひご視聴ください。
インプラント治療中に器具が折れてしまうことがあります。
その場合、特殊なバーを使用して回収することができます。
あるいは、意外にも爪楊枝を利用した簡易的な方法で対処できることもあります。
居れた器具の回収方法は以下の2点で改善できます。
・特殊なバーの使用
・爪楊枝を利用した簡易的方法
爪楊枝を応用する方法は意外でした!
ぜひ身近にあるもので対応するのもプロの技だと思いますので、ご参考にしてくださいね。
歯が埋まってしまう現象には興味深いメカニズムがあります。
ラットを使った実験では、歯の成長を止めると、歯根の方向に伸びていくことが分かりました。
これは人間の歯にも当てはまり、歯の成長が妨げられると、骨の中に埋まっていく傾向があるのです。
歯が埋まる原因は、歯の成長が妨げられるからです。
すると歯根方向への成長へ向かうために起こるとされています。
歯科治療には、一般には知られていない技術や注意点が多くあります。
上顎洞へのアプローチ、鉗子の正しい使用法、危険な出血への対処、インプラントのトラブル対応、そして歯の成長メカニズムなど、専門家ならではの知識は治療の質と安全性を高めます。
これらの「裏技」や注意点は、必ずしも教科書に載っているわけではありません。
しかし、こうした知識を持っておくことで、歯科医療従事者はより適切な判断と処置を行うことができます。
患者様にとっても歯科治療への理解が深まり、安心して治療を受けられるようになるでしょう。
そして患者様自身も、歯科治療に対する理解を深めることで、自分の口腔健康により積極的に関わっていくことができるのです。
今回の動画での講義はここまでになります。
ぜひ臨床の場で活躍して下されば幸いです。
ORTConlineでは日頃の診療で他の人には聞けない悩みを解決するため、様々なテーマを取り扱っています。
1本15分程度で構成しているので、ぜひ隙間時間にスキルアップしてみませんか?
ここまでお読みくださりありがとうございました。
動画の方も是非ご視聴ください!
編集・執筆
歯科専門ライター 萩原 すう