クワドヘリクス(Quad Helix)
項目 概要 分類 上顎に固定する「緩徐拡大(slow expansion)型」の拡大装置 構造 0.9 mm前後のステンレス(またはクロムコバルト)ワイヤーをバンドにロウ付けし、4つのヘリックス(ループ)で持続的な拡大力を発生させる (smilecareplymouth.co.uk) 考案者 Robert M. Ricketts(1975年) (odlortho.com) 主な目的 - 上顎歯列弓の狭窄拡大- 後方交叉咬合の解除- 歯列の叢生(スペース不足)改善 (yourazbraces.com, pubmed.ncbi.nlm.nih.gov) 適応年齢 混合歯列期〜永久歯列初期が中心(骨縫合がまだ可塑性を保つ時期) (en.wikipedia.org) 拡大メカニズム 装着前に術者が“プリアクティベート”しておき、装着後はワイヤーの復元力のみで数か月かけて緩やかに拡大(患者による毎日のネジ回転は不要) (yourazbraces.com) 拡大量の目安 通常3–6 mm程度(症例によっては8 mm以上可) 調整 定期調整時にワイヤーを口腔内で軽く曲げ直すことで追加アクティベーション可能 類似装置との比較 - RPE(急速口蓋拡大装置):1日1–2回ネジを回す急速拡大型。骨性反応が大きいが一時的に疼痛・発話障害が起こりやすい。- クワドヘリクス:ゆっくり拡大するため疼痛や発話障害が少なく、患者依存性が低い反面、拡大に時間を要する。
使用される場面
片側・両側の後方交叉咬合
上顎歯列が狭くて下顎歯列が外側に咬みこんでいるケースを、日常生活の負担を抑えながら解除できる。ivanovortho.com
軽中等度の叢生
抜歯を避けたい場合に、歯列全体を緩やかに広げてスペースを確保。
上顎弓幅不足を伴うⅠ級・Ⅱ級症例の補助
Molarデローテーションや舌房拡大を併用してアーチフォームを整える。
メリットとデメリット
メリット
・患者による操作が不要(プリロード式)
・装置が比較的小型で発音障害が軽い
・緩やかな力で生体にやさしい
デメリット
・拡大完了まで 3–6 か月と時間がかかる
・大臼歯バンドのセメント脱離リスク
・口腔衛生不良だとワイヤー周囲にプラークが溜まりやすい
製作・発注時のポイント
バンド歯の指定:第一大臼歯4点支持が一般的。小児の場合はEバンドも可。
ワイヤー材質:標準はステンレス。金属アレルギーが疑われる場合はβ-チタンやチタンモリブデンへ変更も。
ヘリックス径:8 mm(成人)/6 mm(小児)など症例に応じて技工所へ指示。
追加オプション:リテーナーチューブ付き(取り外し調整式)、補助スプリング付きなど。
まとめ
クワドヘリクスは“ゆっくり確実に拡げる”ことを目的とした上顎固定式拡大装置です。
患者の協力負担を最小限にしつつ歯列弓を拡大
後方交叉咬合や軽度叢生を非抜歯で改善
混合歯列期に特に有効
RPEほどの即効性はないものの、装着感やメンテナンス性に優れ、臨床現場では「慢性拡大の第一選択肢」として広く用いられています。
キーワード:クワドヘリクス(Quad Helix)
クワドヘリクス(Quad Helix)
項目概要分類上顎に固定する「緩徐拡大(slow expansion)型」の拡大装置構造0.9 mm前後のステンレス(またはクロムコバルト)ワイヤーをバンドにロウ付けし、4つのヘリックス(ループ)で持続的な拡大力を発生さ...