近年、ストレス社会を反映するように食いしばりに悩む患者様が増加。
歯科医院での診療において、食いしばりや歯ぎしりの症状を訴える方は年々増加傾向にあります。
従来の治療法としては、マウスピースによる予防や矯正が一般的ですが、根本的な筋肉の緊張を緩和できないという問題がありました。
そこで注目を集めているのが、ボツリヌストキシンを用いたボトックス歯科治療です。
この治療法は、咬筋や側頭筋に直接作用し、過度な筋肉の緊張を和らげる効果があります。
詳しく解説していきますので、ぜひご覧ください。
食いしばりについて理解する
ボトックス歯科医療を理解するには、まず食いしばりを知る必要があります。
・食いしばりの原因
・ 食いしばりがもたらす健康への影響
ここでは、以下の点に触れていきますので参考にしてください。
食いしばりの原因
食いしばりの原因は多岐にわたります。
最も一般的なのはストレスによる筋肉の緊張です。
特に咬筋や側頭筋の過度な緊張は、無意識のうちに顎に負担をかけることになります。
また、歯列の異常や噛み合わせの問題、睡眠時の歯ぎしりなども主な原因として挙げられます。
食いしばりがもたらす健康への影響
食いしばりが継続すると、様々な口腔の問題が発生します。
顎関節症による痛みや、頭痛、首や肩のこりなどの症状が現れることがあります。
さらに、歯の異常な摩耗や損傷、エラ張りによる審美的な悩みにもつながります。
これらの症状は、日常生活におけるQOLの低下を引き起こす可能性があります。
ボトックス歯科治療とは
食いしばりの原因等を理解したところで、次は本題のボトックス歯科について解説していきます。
治療の基本メカニズム
ボトックス歯科治療は、ボツリヌス菌が産生する毒素(ボツリヌストキシン)を精製した医薬品を使用します。
この製剤を咬筋や側頭筋に注入することで、過度な筋肉の収縮を抑制してくれるのです。
イノトックスなどの承認された安全性の高い製剤を使用し、歯科医師が豊富な経験と知識に基づいて施術を行ってくれます。
治療の特徴
施術時間は30分程度と短いです。
当日から通常の生活に戻ることが可能となっています。
注射による治療ですが、細い針を使用するため、痛みは最小限に抑えられるしくみです。
また、従来のマウスピース療法と異なり、装置を装着する必要がないため、違和感なく過ごすことができます。
ボトックス歯科治療の効果
ボトックス歯科医療の効果は治療後、1週間程度で効果を実感できるようになります。
咬筋や側頭筋の緊張が緩和されることで、顎の張りが軽減し、自然な小顔効果も期待できるでしょう。
また、ガミースマイルの改善や口角の上昇など、審美的なメリットも得られます。効果の持続期間には個人差がありますが、通常4〜6ヶ月程度続くと言われています。
治療のリスクと注意点
ボトックス医療はポジティブな効果だけではありません。
ここでは知っておいてほしいネガティブ要素を解説します。
考えられる副作用
一時的な腫れや内出血、注入部位の違和感などが生じる可能性があります。
これらの症状は通常1週間程度で自然に改善しますが、まれに表情筋の働きに一時的な影響が出ることもあります。
効果の経過とともに回復することがほとんどですのであまり心配は要りません。気になる場合は、歯科医師に相談しましょう。
治療を受けられない方
妊娠中・授乳中の方、特定の神経筋接合部の異常がある方、抗生物質を服用中の方などは治療の対象外となります。
また、重度の顎関節症の患者様は、事前の詳細な検査が必要です。
治療の流れ
まず初診時に、歯科医師による詳しい検査とカウンセリングを行います。
口腔内の状態や筋肉の緊張具合を確認し、最適な治療計画を立案。施術当日は、消毒後にボトックス注入を行い、その後15分程度の経過観察で終了です。
アフターケアとして、1週間後に経過確認のための診療があります。
費用と保険について
ボトックス歯科治療は美容治療に分類されるため、保険適用外となります。
1回の治療費用は、注入部位や使用量によって異なりますが、一般的に15万円前後です。
医療費控除の対象にはなりませんが、多くの医院では分割払いなどの負担を軽減する支払いオプションを用意しています。
検討している歯科医院がある場合は、いくつか候補を挙げて信頼できるかどうかと価格を比較すると良いでしょう。
まとめ
ボトックス歯科治療は、食いしばりによる様々な症状を緩和する効果的な方法です。
治療のメリットとしては、短時間での施術、即日の日常生活復帰、確実な効果実感が挙げられます。
一方、デメリットとしては、効果の持続期間が限られること、保険適用外であることがあります。
治療を検討される際は、信頼できる歯科医院でのカウンセリングをお勧めします。
重要な注意点として、この治療は歯科医師免許を持つ専門医が、クリニックでの十分な検査と診察を行った上で実施する必要があります。治療の可能性や安全性について、事前に十分な説明を受けることが大切です。
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ここまでお読みくださりありがとうございました。
編集・執筆
歯科専門ライター 萩原 すう