歯科医院の廃業が増えている?! 「コンビニより多い」をいわれる歯科医院
近年歯科医院の廃業が増えている。
近所を散歩すると何件か歯科医院の看板を目にするほど歯科医院は多いイメージですが、歯科医院の廃業が増えています。
歯科診療所の閉院数と傾向
厚生労働省の医療施設動態調査は、医療施設により提出される開設・廃止等の申請・届出に基づき、毎月実施しています。調査の対象は開設・廃止等のあった医療施設になります。その「医療施設動態調査」によると、歯科診療所の施設数は令和6年1月には118施設減少、2月には43施設減少、3月には18施設減少、4月には57施設減少、5月には32施設減少しています。2024年に入り、5ヶ月間で計268施設減少しています。
歯科診療所の施設数が減少するのはなぜか…
歯科医院廃業の要因とは?
歯科医院が廃業する4つの理由
(1)後継者の不足
歯科医院は小規模かつ後継者がいないケースが目立ちます。後継者不足を理由に廃業する歯科医院が増加しています。後継者不足の主な要因は、少子化、親族継承への不安などが考えられます。元気なうちは現役で診療を続けたいと考える開業医は多いですが、引退を考え始める頃に「継承者」を探してもすぐに見つかるわけではありません。実子や親族・スタッフ・第三者などに引き継いでもらうケースが一般的でしょう。しかし、継承の意志や適性がないことも考えられます。継承する者がいなければ、院長の引退が歯科医院の廃業に繋がります。とくに地方においては、ひとつの歯科医院が減ることの影響は大きいでしょう。
(2)スタッフの確保と定着
スタッフの確保と定着はどの業種においても大きな課題です。「コンビニより多い」といわれる歯科医院は人材確保も一苦労です。人材不足や頻繁なスタッフの入れ替わりは、常にスタッフ募集をしている状態となり、お金と時間を消費します。そして、年中スタッフ募集が出ているとあまりいいイメージがありません。自院のホームページやSNSを含めて広く採用活動を行わず、昔ながらの採用活動以外にスタッフ募集をしていなければ、欲しい人材を確保することは難しいでしょう。人材を確保するにもコストはかかりますが、歯科医療は高度なスキルと専門知識を持つスタッフが必要であり、高い給与水準が求められます。経営者は人件費の最適化とスタッフのスキルアップに投資し、最善の歯科医療を提供しつつ、コストをコントロールする必要があります。
(3)集患ができていない
人材不足により、サービスの質に影響を与え、患者満足度の低下につながります。また、集患への投資をせずに経営を続けることは、新規の患者獲得を遅らせ、経営困難に繋がる恐れがあります。つまり、お金・人材・集患の問題が廃業の要因となっています。
(4)設備投資の負担への懸念
新型コロナウイルスの影響による「設備投資負担への懸念」も廃業の要因に挙げられます。また、開業年数が経っていると内装改修や医療機器の入れ替えも負担となるでしょう。
歯科医院が廃業を避けるための対策
スタッフの確保と定着率をアップさせるには?
・新人教育に時間を惜しまない・スタッフのスキルアップを支援する
→家庭によって当たり前が違うように、歯科医院によっても当たり前が違います。そのため、新人教育に時間を惜しまずに働きやすい環境をつくることが大切です。スタッフの成長が歯科医院の成長につながります。スキルアップすることでスタッフのモチベーション向上に繋がります。また、業務を効率的に行えるため生産性が高くなります。そして、ひとりひとりにあった報酬を与え、待遇面や収入面での不満を解消することが大切です。
・労働環境を改善する・コミュニケーションを積極的にとる
→働きやすい環境があることでスタッフが能力を発揮し、健康的に長く働き続けることができます。また、人間関係を構築することでお互いにとって心地よく過ごせるため、仕事の生産性が上がります。環境が整うと、歯科医院のイメージの向上にも繋がります。
・働き方の選択肢を増やす
→現状、歯科衛生士のほとんどは女性を占めており、資格を放棄することなく、結婚・妊娠・出産・育児などライフスタイルにあわせた働き方の選択肢があると長く勤務しやすくなります。
・医院理念を明確にする
歯科医院の方向性を明らかにすることにより、働くスタッフに歯科医院の将来像・目標を明確にすることで意欲を高め、満足度に繋がります。
経営を続ける歯科医院が大切にしていることとは?
競合の多い歯科医院が地域社会で生き延びるためには、周辺地域に合わせたターゲット選定が大切です。選定したターゲット層から選ばれるようなマーケティング施策を行いましょう。集患からリピーターを増やすことを大切にしましょう。そのためには、スタッフ教育を怠らず、院内の清潔さを保ち、待ち時間がないように注力する必要があります。予約システムによる待ち時間の短縮や、キッズスペースや個室の完備など、患者の視点に立って院内環境を整えることも大切です。患者満足度がアップすることで、口コミで評判が広がり、新規患者さんの獲得にも繋がります。また、効果的なマーケティングも必要です。効果的なマーケティング戦略ポイントは、ウェブ露出の強化とSNSの活用と地域社会との関わりの患者獲得です。ホームページを作成して活用する際には、患者がなにを目的に来院するのか、自院の与える安心感や独自性がなにかを明らかにしましょう。一般歯科・審美歯科・予防歯科・小児歯科など、どこに力を入れているのか治療の流れや料金の目安、予約の取りかたなど、サービスの情報が一目瞭然となるよう、作成していきましょう。そして、InstagramやTik tok、X、FacebookなどのSNSを活用する場合は、院内の様子やスタッフ紹介などを定期的に投稿することで親近感が湧きます。閲覧者が検索した時にヒットするよう、定期的に更新し、複数のハッシュタグを活用していきましょう。また、地域の建物周辺で看板や街頭広告などの露出を強化すれば、地域密着型の歯科医院としてアピールすることもできます。
経営効率化とコスト管理
マーケティング戦略を打ち出したら、経営の効率化とコスト管理も徹底していきましょう。他院との差別化を図るためにも、最新技術を導入して経営の効率化をねらいます。たとえば、電子カルテや予約管理システム、会計時の各種決済システムの導入。予約、治療から会計など一連の手続きがシステム化し、簡略化されることで、院内スタッフの作業効率のアップし、残業がなくなることでコスト削減、経営の効率化に繋がるでしょう。定期的な設備投資をすることはスタッフのスキルアップになり、患者からも喜ばれ、地域での集患に繋がります。充実した設備は採用にも有利に働きます。設備投資は結果的に安定経営に繋がります。
まとめ
2024年に入り、歯科診療所は5ヶ月間で計268施設減少しています。歯科医院が廃業する背景には、後継者の不足、スタッフの確保と定着、集患ができていない、設備投資の負担への懸念などの様々な課題があります。目の前の患者さんの悩みを解決することが優先ではありますが、歯科医院の未来への投資を怠ると長期的に衰退していきます。そのためには、教育を惜しまずスタッフのスキルアップを支援することで生産性アップしたり、労働環境を整えることは採用にも有利になります。院長だけが頑張るのではなくスタッフがチームとなり、SNS等で院内やスタッフ紹介を行い、患者が歯科医院に対して親近感を持てるよう発信するなど、周りに頼ることも大切です。また、スタッフのライフスタイルにあわせた働き方を提供することでスタッフの離職を防ぐことも可能です。共働きが当たり前のこのご時世、スタッフが幅広い働き方の選択肢を持てるようにしていくことも今後課題となるでしょう。
ライター大久保
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