ヘミセクション治療の基礎知識:歯の保存と新しい選択肢

歯科知識

歯科治療の中には、歯を完全に抜歯せずに一部を保存する方法があります。その中でも「ヘミセクション」という治療法は、臼歯の一部を分割して保存することで、歯の機能を維持しながら生活の質を向上させる画期的な選択肢です。

ヘミセクションの概要や適応症例、治療の流れ、術後のケア、さらに歯科衛生士として患者をサポートするためのポイントについて詳しく解説します。歯科医療の現場で注目を集めるこの治療法について理解を深めることで、患者へのより良い対応や選択肢の提供が可能になります。


1. ヘミセクションとは?

ヘミセクションの定義


ヘミセクションとは、主に臼歯に対して行われる歯科治療の一つで、歯を二つに分割し、一部の根や歯冠を除去する手法です。この治療は、歯全体を抜歯する必要がない場合に適用され、残存部分を活用して歯の機能を維持することを目的としています。
 

主に対象となる歯とその特徴


ヘミセクションは主に下顎の第一および第二大臼歯に適用されることが多いです。これらの歯は複数の根を持ち、根の分岐部がしばしば病変の発生地点となります。これらの歯が以下のような特徴を持つ場合、ヘミセクションの候補となります。

・根の分岐部に病変がある。

・一部の根が機能的に安定している。

・歯冠や残存根が補綴治療に適している。
 

適応症例


ヘミセクションが選択される具体的な症例には以下のようなものがあります。
 

重度の歯周病: 歯周ポケットが深く、通常の歯周治療で改善が見込めない場合。

根分岐部病変: 根の分岐部が著しく損傷しているが、一部の根が健全である場合。

根管治療が難しいケース: 一部の根管が治療困難または失敗したが、他の根が機能している場合。
 

他の治療法との比較
 


ヘミセクションは、以下の治療法と比較されることが多いです。


抜歯: 抜歯は歯を完全に取り除くため、欠損部位に対する補綴(ブリッジやインプラント)が必要となります。ヘミセクションは歯の一部を残せるため、補綴の負担を軽減できる場合があります。


インプラント治療: インプラントは高い成功率を誇りますが、骨量不足や費用の問題がある場合には、ヘミセクションが適切な選択肢となることがあります。



ヘミセクションの治療に必要な3つのこと

 

①口腔内診査


治療の第一歩は、患者の歯および口腔内の状態を詳細に診査することです。レントゲン撮影やCTスキャンを活用し、以下のポイントを確認します。

 

・病変の位置と範囲

・残存根の状態と安定性

・周囲の骨組織の状態

患者の状況に合わせて、診断後、希望や生活スタイルを考慮しながら治療計画を立案します。
 

②治療前の準備

治療開始前には以下の準備が必要です。

感染予防: 治療部位を消毒し、清潔な環境を確保します。

治療部位の説明: 患者に治療内容と予測される結果を説明し、同意を得ます。
 

③術後のケアと患者への指導

術後のケアとして、抗菌剤の投与や炎症を抑えるための処置が行われます。

歯の寿命を伸ばしていくためには、

・正しいブラッシング法の指導

・フロスや歯間ブラシの活用

・定期的なプロフェッショナルケア
・過剰な力がかからないようにかみ合わせの調整
なども行なっていきます。


継続的な経過観察で得た知見

ヘミセクション後の経過観察は成功率に大きく影響します。定期的な歯科検診とクリーニングは必須条件になります。例えば、ブリッジを入れた場合、前後の歯周病の悪化・そのスピードは気をつけておく必要があるでしょう。そういった経過観察を続け、維持管理できるようにしていかないといけません。
 

安定した症例ですと、 術後10年以上機能を維持する患者もいます。不安定な症例だと、補綴物の破損や新たな病変が発生する場合もあります。

この継続的に見たヘミセクション治療の予後が「一部の歯が残せて良かった」と思わせるか「これなら縫いとけば良かった」と思わせるかのポイントになります。
 

研究によれば、ヘミセクションした歯の平均寿命は5〜10年とされています。ヘミセクションをして、歯を残そうと治療してきたのですから、5年10年と言わず、もっと伸ばしたいですよね。

患者的には、1回治療すればそれでいいと思っている方も多いです。きちんとした説明と指導を忘れないように行なっていくことが、患者のためになると思っています。


歯科衛生士の視点から患者へのアプローチ

ヘミセクションを選択する患者へのカウンセリングの重要となってきます。患者は治療のメリットとリスクを十分に理解が必要です。歯科衛生士は専門知識を活用し、患者の不安を解消する役割を担っています。
 

術後の生活習慣改善やセルフケアの指導をしていくことになります。患者との信頼関係を築いていき、術後指導を聞き入れてもらえる環境を作り出します。

歯科医師からの説明をさらに砕いて話をしたり、患者の「聞いても良いのか?」と思う相談役になります。
 

・患者の話に耳を傾ける

・わかりやすい言葉で説明する

・術後のフォローアップを丁寧に行う
少なくとも、この3点は、患者との信頼関係を築くためのポイントとして、押さえておきましょう。
 

まとめ



ヘミセクション治療は、歯を完全に失うリスクを軽減しながら、患者の口腔機能を維持するための有用な手法です。この治療を成功させるためには、歯科医と歯科衛生士が連携し、患者への適切なケアとサポートを提供することが重要です。

歯科衛生士として、術後の定期的な経過観察やセルフケアの指導は、治療の長期的な成果を左右する大切な要素だと思っています。治療の流れや術後の管理を把握し、患者に寄り添っていけるような努力をしていきましょう。

歯科衛生士 原田

 

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