歯科麻酔の副作用とは?リスクと安全な対策方法を徹底や解説

歯科知識

「歯医者は痛い」というイメージを持たせないよう、歯科医院でも色々な対策をされていると思います。

歯科麻酔は、歯科治療において、患者の痛みだけではなく、不安や緊張をを取り除くために欠かせないものとなっています。

しかし、麻酔には副作用が伴う可能性があり、患者に安心感を提供するためにはリスクの把握と適切な対応が求められます。学校でも習いますが、歯科医院でもスタッフ間の共有認識として知識を持っておく必要があると思います。

今回は、歯科麻酔の副作用とその対策について、復習も兼ねてお話ししていこうと思います。ぜひ、歯科医院内でも改めて確認をする機会にしていただきたいです。

 


 

歯科麻酔種類




歯科で使用する麻酔には、いくつかの種類があります。

 

 

浸潤麻酔


浸潤麻酔は、歯科治療で最も一般的に使用される麻酔方法です。局所麻酔薬を歯の周辺組織(歯肉や粘膜)に注射し、特定の部位の神経をブロックします。

主に抜歯、虫歯治療、歯周治療など歯科医院でよく使用されている麻酔です。効果がはやく5分程度で痺れてきます。持続時間は1〜2時間と比較的短いのが特徴です。
注射の際に針を刺す痛みがありますが、表面麻酔を併用することで軽減できます。炎症反応が強い場合には、麻酔が効きにくくなります。事前に炎症を抑えるか、麻酔を途中で追加する必要が出てくることもあります。

 

伝達麻酔


伝達麻酔は、特定の神経の幹をブロックすることで広範囲に麻酔効果を得る方法です。下顎の治療や浸潤麻酔が効きにくい場合によく使用されます。

下歯槽神経ブロックが一般的で、下顎8番抜歯で用いられることが多いです。浸潤麻酔と同じように注射をしていくのですが、浸潤麻酔よりも効果の時間が長いため、患者説明の際には要注意です。

 

静脈麻酔


静脈麻酔は、点滴に鎮静薬を投与し、意識を無くした状態で治療を行う方法です。患者が不安や恐怖心のないリラックスした状態で治療を受けられるのが特徴になります。

意識がなくなるわけではないので、自発呼吸ができる状態での治療となります。ですが、健忘作用により治療中の記憶はほとんど残らないです。患者は、治療中の嫌な記憶がないため、歯医者がトラウマになることはなく、今後も通いやすくなります。

静脈麻酔をするためには、歯科麻酔の先生がいることや患者の健康状態・モニタリングの設備などの条件があります。その条件をクリアしていることを確認し、行っていく必要があります。

  

全身麻酔 


全身麻酔は、患者を完全に意識のない状態にして行う麻酔法です。治療をしないといけないが歯科恐怖が強い方や障害を持っている方などを対象に行うことがあります。

患者が意識が無い状態での治療になるため、痛みや記憶を伴わず治療を受けることができます。また、全身麻酔の際には、歯科治療を1度にせべて行うため、治療回数が1回で済む場合が多いです。
ですが、全身麻酔のリスクとして、他の麻酔に比べ、リスクが高くなることが言えます。患者やその親には、事前の説明や準備をしっかりと行う必要があります。

歯科医院でできる場合もありますが、かなり限られています。一般的には、大きな病院に入院して行い、施設の設備やスタッフの体制が整っていることが前提となる治療方法になります。

 

笑気麻酔


笑気麻酔は、笑気ガス(亜酸化窒素)を吸入することで患者をリラックスさせる方法です。

歯科恐怖症の患者に効果的で、意識は保たれるが、不安や恐怖感が大幅に軽減されます。副作用が少なく、安全性も高いため、一般の歯科医院でも笑気麻酔ができることが多いです。
妊婦や特定の疾患を持つ患者には使用できない場合がありますので、安全性は高いですが気をつけないといけません。 

歯科麻酔の副作用とは

歯科麻酔には、いくつかの種類があるのですが、全ての麻酔に言える副作用の症状を挙げていきます。

注射部位の痛みや腫れ

 

痛みなく歯科治療を行うために麻酔をしていくのですが、麻酔をする際に痛みを伴うこともあります。他にも、注射針を刺したところが毎回、口内炎になり、麻酔後に不快な思いをする患者もいます。

 

一時的なしびれや違和感

 

当たり前ですが、麻酔が効いている間は、唇や舌にしびれを感じます。個人差によって、麻酔の効きが違い、1時間で麻酔が切れる方もいれば、4〜5時間麻酔が効いている方もいます。

 

アレルギー反応

 

発疹、かゆみ、息切れなど、アレルギー反応が現れることがあります。麻酔が初めてな患者は、特に要注意です。患者の異変に察知できるような体制で、麻酔を行うことが望ましいでしょう。

 

血管内注入による症状

 

誤って血管内に麻酔薬が注入された場合、頭痛、めまい、心拍数の変化などの全身症状が発生することがあります。
万が一の場合に、どのような対応をしていくのか、事前にマニュアル作成をするなどスタッフ間での共有を行っておくことが大切です。

 

神経損傷

 

極めて稀ですが、注射針が神経に触れることで神経損傷が生じることがあります。患者の訴えや予後を確認し、その後のフォローを考えなくてはいけません。患者の不安を煽らないように、対応には気をつけましょう。

 

アナフィラキシーショック

 

即時型の重篤なアレルギー反応で、迅速な対応が必要です。緊急用に院内にあるエピペンの常備や搬送先の連絡手順などマニュアル化し、それを実行できるような研修も必要になります。

歯科麻酔をする上での対応




 

患者への事前説明
 

麻酔の必要性や手順、副作用の可能性について事前に十分な説明を行い、患者の不安を軽減します。

・使用する麻酔薬の種類

・治療後に期待される感覚や症状

・アレルギーや体調に関する事前確認


このようなことは、事前に説明や確認をしておきましょう。
 

問診したのが、数年前になると状況が変わっている患者も多いです。病歴やお薬手帳の確認なども再チェックをしていきます。患者側も「以前は大丈夫だったから大丈夫」と思い込んでいる方も多いです。その日の体調や生活習慣病の罹患により状況は変わっていくことも考慮し、麻酔前の問診は取るようにしておくと安心です。

また、患者が不安を抱えないよう、治療中も定期的に声をかけ、必要に応じて麻酔の追加や調整を行います。

緊急時の対応体制

救急用の薬剤や設備の準備をし、使いやすい場所にアドレナリンや酸素吸入器など、緊急時に必要な物品を常備しておきましょう。

使う頻度が極端に少なく、棚の奥や診療室から遠い場所に置いてある歯科医院を見たことがあります。いざとなった時に、使用しやすい場所に設置することが望ましいです。

また、スタッフの緊急対応トレーニングや研修を定期的に行い、シミュレーションを通じて、緊急事態への対応力を向上させます。

緊急時ほど「どうしたらいいんだろうか」と動けなくなるスタッフも多いです。定期的なトレーニングや研修をすることで、体に覚え込ませ、咄嗟の判断や対応が考えなくても動けるようにしていきます。

術後フォロー

治療後も患者の状態を確認し、必要に応じてフォローアップを行います。

患者にこれらの症状が現れた場合には、迅速に対応し、適切な治療やアドバイスを提供することが重要です。

電話対応だけで済ませていいのか、受診を促した方がいいのか、しっかりと判断していく必要があると思います。麻酔が原因でなくても、ここの判断ミスが、患者が不信感や不満を抱く理由の1つです。

術後には以下のような症状が現れる場合がありますので、その辺りは知識として共有しておきましょう。

注射部位の腫れや痛み

数日で改善するケースが多いですが、炎症が続く場合には再診が必要となります。治療したのに痛みが続くといった原因になっていることもあり、患者への説明が不足しているとクレームの原因になります。

しびれや感覚異常

麻酔効果が切れた後も感覚異常が残る場合、神経に影響がある可能性があります。

発疹やかゆみ

軽度のアレルギー反応の可能性があるため、適切な抗ヒスタミン剤の処方を検討します。心配な場合は、アレルギー科への受診を促します。

全身倦怠感や頭痛

麻酔薬の影響による可能性があるため、水分補給や安静を推奨します。しばらくすると楽になってきますが、改善傾向がない場合には、内科への受診をお願いしましょう。

おわりに

歯科麻酔の安全性を高めるためには、副作用のリスクを正しく理解し、患者に適切な対応をすることが重要です。患者との信頼関係を築きながら、安全で効果的な麻酔を提供するために、常に知識と技術をアップデートしていく必要があります。

私自身、数件の歯科医院で勤務経験がありますが、

  • 緊急対応の共有の仕方
  • マニュアルの有無
  • スタッフの認識
  • 近隣の医科へ協力のお願い

など、歯科医院によって様々でした。

勤務し始めて、共有される歯科医院もあれば、一度もそういったことの説明がない歯科医院もあります。正社員だから、アルバイトだからは関係なく、歯科医院のいちスタッフとして勤務しているのであれば、必須共有事項ではないでしょうか。

患者のためでもあり、自分自身を守るためでもあり、それが歯科医院のあり方のためになると思っております。

ぜひ、これを機会に、現状の確認・共有を行っていただけると幸いです。

 

歯科衛生士 原田

※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別症例の診断・治療方針を示すものではありません。

 

 

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