根管治療について知っていこう!

歯科知識


根管治療は、歯の内部にある神経や血管を含む歯髄に対して行う治療です。歯髄には、血液や神経が供給される重要な組織が含まれていますが、外部からの刺激や感染によって炎症が発生すると、歯髄組織が損傷し、痛みや感染症の原因となることがあります。

根管治療は、こうした感染症や炎症を取り除くことで歯を保存し、長期的な口腔健康を保つことを目指しています。
 

根管治療の適応と診断
 

根管治療の適応症としては、次のような主なケースが挙げられます
 

  1. 1. 急性歯髄炎
    急性の炎症が発生し、歯の中で激しい痛みが発生する状態です。外部からの刺激(例えば、冷たい飲み物や熱い食べ物)に対して、強い反応が見られることが特徴で、患者には速やかな処置が必要です。

    2. 慢性歯髄炎
    急性とは異なり、持続的な軽度の痛みや不快感が続く状態で、徐々に進行する場合が多いです。炎症が慢性化すると、特定の症状が現れないこともあるため、患者自身が異常を感じにくく、診断の遅れにつながることがあります。
     
  2. 3. 根尖性歯周炎
    根尖部(歯の先端)に炎症が及んで膿がたまり、歯周組織に影響を及ぼす状態です。膿の圧力が痛みを引き起こすため、早急な対応が望まれます。放置すると、さらに周囲の歯や骨組織に影響を与えるリスクが高まります。
     

これらの症状が見られる場合、適切な診断が必要です。診断には、臨床所見に基づいた触診やエックス線、CTスキャンなどの画像診断が用いられます。特にCTスキャンでは、三次元的に根管の構造を把握することで、通常のエックス線では確認が難しい異常を検出することが可能です。

このように、根管の解剖学的構造や状態を正確に把握することが治療成績に大きく影響します。
 

根管治療の手順

根管治療は、以下のステップで進められます
 

1. 準備
まず、治療部位を清潔に保つためにラバーダムと呼ばれるゴムのシートを使用し、口腔内の唾液や細菌が治療中に根管内へ侵入するのを防ぎます。感染対策として不可欠なステップであり、根管内に細菌が入るリスクを最小限に抑えます。
 

  1. 2. 根管形成
    次に、根管の長さを測定し、根管内部を清掃しやすい形状に整えます。根管は複雑な形状をしている場合が多く、器具の選択や使用方法においても慎重な判断が求められます。特に、細くて曲がりくねった根管では、器具が破損するリスクもあるため、高度な技術が必要です。
     
  2. 3. 洗浄・消毒
    根管内の感染物質や細菌を除去するため、さまざまな薬剤を用いて根管内部を徹底的に洗浄・消毒します。この過程では、根管内の壁に付着した感染物質を取り除くことも重要です。特に奥深くの細菌まで確実に除去するため、複数の薬剤を組み合わせて使用する場合があります。
     
  3. 4. 根管充填
    最後に、清掃・消毒が完了した根管内にガッタパーチャやシーラーと呼ばれる材料を用いて充填し、密封します。この密封処置が不十分だと、再感染のリスクが高まるため、精密な技術が必要とされます。充填材の選択や充填技法には多くの選択肢があり、歯の状態や根管の形状に合わせて最適な方法を選択します。
     

根管治療における考慮点とリスク管理

根管治療には、以下のようなリスクや考慮点が存在します。
 

  • ・複雑な根管構造
    根管は個々の歯によって形状が異なり、曲がりや枝分かれが多い場合、器具の操作が困難になることがあります。特に、奥歯にある根管は数も多く、その解剖学的な複雑さから高い技術が求められます。
     
  • ・根管内での器具の破損
    根管内で器具が破損することが稀にあり、これが根管内に残留すると、治療の成功率が下がる可能性があります。予防策として、最新の器具を用いることでリスクを軽減することが可能です。
     
  • ・再感染のリスク
    根管治療後も、感染が再発するリスクは完全には排除できません。適切な充填と、治療後の口腔内の衛生管理が重要となります。患者自身も定期的なメンテナンスに通うことで再感染を予防することが可能です。
     
  • ・治療後の痛みや不快感
    一部の患者には、根管治療後もしばらく痛みが残ることがあります。これは正常な反応であり、時間の経過とともに和らぐケースが多いですが、長期的に痛みが続く場合は、再診を考慮します。


最新の研究と技術

近年、根管治療の分野では技術の進歩が進んでおり、従来よりも正確で予後が良い治療が実現しています。
 

例えば、マイクロスコープの使用によって肉眼では確認できない細かな構造まで視認できるようになり、治療の精度が向上しています。さらに、CBCT(コーンビームCT)による三次元画像診断により、根管の形状や病変の広がりを正確に把握しやすくなっています。これにより、今まで難しいとされていた症例にも効果的に対応することが可能となりました。
 

加えて、新しい根管充填材や消毒薬の研究も進められ、従来よりも耐久性や密閉性に優れた充填材が登場しています。こうした進歩により、根管治療後の再感染リスクをさらに低減できるようになっています。
 

まとめ

根管治療は、歯の保存を目的とする歯科治療の一つとして、非常に重要な役割を果たしています。適切な診断と治療手順を経て、患者に対して長期的な予後を提供することが可能です。
 

歯科衛生士としての立場から考えると、根管治療の意義は単に歯を救うことにとどまらず、患者の口腔健康全体の改善に寄与する点にあると感じられます。特に、根管治療後のフォローアップにおいては、患者との信頼関係を構築し、安心して治療を受けられる環境を提供することが重要となるでしょう。
 
歯科衛生士ライター:原田

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