【アライナー矯正と訴訟リスク】歯科医師が理解しておくべきリスク管理と予防策

歯科医

アライナー矯正は、近年需要が高まっている歯科治療の一つです。しかし、その人気の裏には訴訟リスクも潜んでいます。

 

歯科医師が知っておくべきアライナー矯正に関する法的リスクと、訴訟を予防するための具体的な対応策を紹介します。適切な知識と対策があれば、患者との信頼関係を深め、訴訟リスクを最小限に抑えながら治療を提供することが可能です。

 

アライナー矯正に潜む訴訟リスクとは?

アライナー矯正は、ワイヤーを使用しないため見た目の美しさや取り外し可能な利便性があり、多くの患者に支持されています。しかし、その一方で、従来の矯正治療に比べて訴訟リスクが上がる要因も存在します。

治療結果が期待通りでない

患者が治療後の仕上がりに不満を持つケースです。アライナー矯正の限界を十分に説明しないと、患者との間で誤解が生じ、結果的にトラブルに発展します。  

治療計画のズレ

治療計画と実際の進行が異なる場合、患者が「説明不足」や「医療過誤」と主張することがあります。特に、治療期間の長期化は不満の原因となりやすいです。  

装着時間の不徹底

アライナー矯正は患者自身の協力度が結果に直結します。装着時間の不足による治療遅延が起きると、責任を巡ってトラブルになることも。  

予期せぬ副作用 

歯根吸収、歯周病の悪化など、想定外の副作用が発生した場合、患者が訴訟を起こす可能性があります。

 

訴訟リスクを避けるためのポイント

できれば、訴訟にならないようリスクは避けていきたいところです。意外にも、基本的なことで対策できる場合も多いと感じています。

一番大きな原因になるのが、患者への説明不足。矯正治療は、リスクを伴う治療になります。最初のカウンセリングや矯正治療前の説明時にも行うのですが、なかなか伝わってないことも多いです。

言った言わないのような論争ではなく、しっかりと患者が理解できる説明をしていくことが重要となります。
 

患者とのコミュニケーション強化  

治療開始前に「リスク(危険性)」と「ベネフィット(利益)」を比較し、患者説明をしましょう。患者の期待を現実的な範囲に調整するために、次のような具体的な対策が効果的です。
 

ビジュアルツールを使って説明し、シミュレーション画像や3Dモデルを用いることで、治療後のイメージを共有します。歯並びだけ気にする患者の理想イメージとかみ合わせまで考えた歯科医院側の治療ゴールが違う場合も多いです。  
 

また、インフォームドコンセント(説明と同意)を文書として記録し、双方の合意を明確にします。手間がかかるなと思うかもしれませんが、自己防衛と患者に説明漏れがないようにするためにも作成することをお勧めいたします。

 

患者教育の徹底  

治療効果を最大限に引き出すためには、患者に正しい使用方法を理解してもらう必要があります。次のポイントを教育の中で強調しましょう。

・アライナーの装着時間(1日20時間以上の着用が推奨)  

・装置の正しい取り扱い方法 

・通院の重要性と定期的な調整の必要性

 

インターネット情報や周りにやっている友人情報で、勝手な判断をする患者もいます。「このくらいでいいだろう」と妥協されると治療計画通りに矯正治療が進まなくなります。

 

アライナー矯正は、患者教育ありきの矯正治療ということをお忘れなく!患者教育をしないのであれば、アライナー矯正を勧めない方が良いくらい重要なことです。

 

訴訟が発生した場合の対応策

万が一、訴訟に直面した場合も、冷静かつ迅速に対応することで、被害を最小限に抑えられます。

 

まずは、記録の重要性です。患者とのやり取り、治療計画の変更点、経過観察の結果を詳細に記録しておくことが重要です。訴訟になった際、これらの記録は法的な防衛手段として大きな役割を果たします。

 

担当の方が覚えているからいいかではなく、毎回、記録を残しておきましょう。

 

そして、弁護士との連携が必要になります。起こってからではなく、起こる前の相談・対策をしている歯科医院が意外と少ないと感じています。医療訴訟に詳しい弁護士と早めに連携し、訴訟リスクが顕在化する前に対応策を検討することが理想です。

 

リスクヘッジのための事前対策

リスクを追わないようにするから大丈夫だと思っていませんか?
 

歯科医師向けの医療賠償保険は、訴訟リスクをカバーする重要な対策です。保険内容を事前に確認し、アライナー矯正のトラブルにも対応できるプランを選びましょう。
 

リスクヘッジとして、矯正専門医や歯科衛生士と連携し、治療の質を高めることで訴訟リスクを低減します。特に患者教育において、複数のスタッフが関与することで説明不足を防ぐことが可能です。

 

専門医にお願いするとコストがかかるので、悩む先生も多いのですが、コストをかけても利益が出ませんか?最初は特に、勉強代だと思いコストをかけてでもお願いをするという選択肢を持ってもいいかもしれません。

 

リスク管理で患者との信頼関係を築く

アライナー矯正は、その利便性ゆえに患者の満足度が高い一方で、訴訟リスクも伴います。リスクの存在を理解し、適切なコミュニケーションと記録管理を徹底することで、歯科医師としてのキャリアを守ることができます。さらに、早期の保険加入や専門家との連携など、リスクヘッジを怠らないことが重要です。  

 

患者にとっても医師にとっても納得のいく治療を実現するために、まずは『信頼関係を構築する』ことが何よりも大切です。

 

正直、歯科医院で働いていて、訴訟される現実があるなんて思っていないです。歯科医院のスタッフは、そういうリスクが矯正治療にはあることを十分に理解する必要があります。

 

治療のプロセスを透明化し、万全のサポート体制を整えることで、訴訟を未然に防ぐことが可能です。アライナー矯正を提供する上で、リスク管理の意識を持つことは、長期的な歯科経営の安定にもつながります。

歯科衛生士ライター:原田

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