インビザライン治療における失敗症例とリスク管理の深掘り

歯科衛生士, 歯科医


インビザラインは透明なマウスピースを使った人気の矯正方法ですが、その利便性ゆえに特有の失敗リスクがあります。成功するためには、治療計画の立案から患者への教育、途中のフォローアップまで、一貫した管理が重要です。

 

具体的な症例や対策を深掘りし、歯科医師としてどのように対処すべきかを一緒に考えていきましょう。

 

抜歯の適否による治療失敗

複雑な歯列不正に対して、インビザライン単独での矯正が難しい場合があります。スペース不足が原因で無理に歯を並べると、前歯の突出やアーチフォームの乱れにつながり、治療前より見た目が悪化するケースもあります。

 

一番起こりそうな原因として、患者の「抜歯したくない」という希望に配慮しすぎたことが挙げられます。適切な抜歯計画がなされない治療計画で矯正治療をスタートさせてしまうと結果、かみ合わせがずれてしまったり、患者の満足のいく歯並びにならなかったりします。

 

側方拡大やIPR(歯の削合)だけで治療がスムーズに進みそうなのか、しっかりと判断をする必要があります。

 

診断段階での3Dスキャンやレントゲンの解析、顎の大きさと歯列のバランスをきちんと分析してから矯正治療を始める手順は手抜きをしてはいけない工程になります。また、抜歯が避けられない場合は、抜歯後のメリットを十分に説明し、患者の理解を得ることが重要です。

 

無理に患者の要望だけを聞き入れることはせず「ここの歯科医院では無理だ」という主張も後々の失敗を防ぐため必要になります。

・どこまでの症例を引き受けて矯正治療を行うのか

・患者の要望をどこまで聞き入れるのか

ボーダーラインの設定をすることも一つの対策になりますよね。

 

バッカルコリドーの発生による審美的失敗

バッカルコリドーとは、笑った際に口角と歯列の間に黒い隙間ができる状態です。日本人は顎の幅が狭いため、インビザラインの治療後にこの現象が強調されることがあります。

 

治療計画時に顎の拡大を含まなかったり、歯列のシミュレーションで横幅が十分に考慮されていなかったりするとこの失敗に繋がることがあります。

  

・顎の拡大を見越した治療計画を立てること

・必要に応じて顎間ゴムを併用すること

・治療中もシミュレーションの見直しを行うこと

・患者の希望と仕上がりが一致するよう調整を行うこと

最初の治療計画時もですが、治療中も確認し、調整を行いながら勧めていくことが大切です。


対処方法や助言などが欲しい場合には、専門の先生に相談することで、解決策を知ることができるかもしれません。また、自分の勉強になることで、今後の症例の幅も広がり、失敗を防ぐこともできます。

歯肉退縮
インビザラインで歯を動かす際に歯肉が退縮し、歯根が露出してし舞うこともあります。矯正治療中は、気をつけておかないといけない部分にもなります。

歯肉退縮により知覚過敏の症状が強くなる可能性も考えられます。また「ブラックトライアングル」と呼ばれる歯冠乳頭がなくなり、隙間ができてしまうことで、見た目にも影響を及ぼしてきます。

患者としては、折角キレイな歯並びになるよう頑張ってきたのに、見た目が悪くなり不満や不信感に繋がってしまいます。矯正治療では起こりやすい症例ですので、気をつけて対処・対応できるようにしておきましょう。

シュミレーションでは、いくらでも歯を動かせます。ですが、患者の歯槽骨レベルや年齢などを考慮し、無理のない治療計画にしていかなければなりません。

装着時間の遵守と治療の進行管理

インビザラインの効果は、1日20〜22時間の装着が前提です。しかし、自己管理に任せる部分が大きいため、患者の習慣や生活スタイルによっては装着時間が不足し、治療の遅延や失敗を招くことがあります。

 

これは、多くの歯科医院で頭を抱える問題ではないでしょうか?

・マウスピースの紛失や破損  

・装着時間の短縮によるシミュレーションからの逸脱

歯科医院としては、できることは精一杯しているのにも関わらず、患者の努力不足で起きる失敗です。

  

だからといって、失敗の原因が患者だけにあるとは言えません。

・患者との初回カウンセリングで装着時間の重要性を説明

・アプリを活用して日々の装着時間を記録させる

など、歯科医院からのアプローチや患者のモチベーション維持をしていくことが大切です。

 

患者の管理が難しい場合は、部分的にワイヤー矯正を併用するハイブリッドなアプローチを検討するのも一案です。

 

患者がどのような方なのか、カウンセリングを行い知っていくことも矯正治療を成功させるポイントになります。

 

インビザラインと他の矯正法の併用の重要性

インビザラインは全ての症例に万能ではなく、特に重度の不正咬合や顎の形態修正を必要とするケースでは、他の矯正法との併用が推奨されます。例えば、部分的なワイヤー矯正を併用することで治療効果を高めることができます。

 

初期段階でワイヤー矯正を用いて奥歯を整列させ、その後インビザラインで微調整と仕上げを行う方法もあります。

 

このように複数の矯正法を組み合わせることで、患者に最適な治療を提供でき、満足度向上に繋がっていきます。

 

「ワイヤー矯正が絶対嫌だ」「アライナーだけで矯正治療をする」などのブロックをなくすことで、様々な提案ができるようになります。

 

失敗すると患者も歯科医院も困り、いいことがありません。どのように矯正治療を進めていけば、失敗しないのかを考えていくことが適切ではないでしょうか。

 

まとめ

インビザライン治療を成功させるためには、治療計画の精度とフォローアップの徹底が欠かせません。歯科医師は患者の希望に寄り添いながら、適切な抜歯や治療法の選択を提案し、治療の進捗を管理する必要があります。

インビザラインは、軽度〜重度の歯列矯正まで対応可能です。デジタル化も進み最先端な雰囲気はありますが、治療方針を立てていくのは、歯科医師の役目になります。

インビザラインの正しい知識や技術を習得する必要があり、矯正治療をやっていたからといって甘く見てはいけない部分になります。だからこそ、実績や経験の豊富な歯科医師のもとで、学び技術習得をしていく必要もあります。

 

また、治療を進めるうえで、患者教育やリスク説明も欠かせません。初期段階での誤解を防ぐために、治療のメリット・デメリットを明確に伝え、患者との信頼関係を構築することが、成功への第一歩です。

 

私も矯正治療のカウンセリングやインビザラインの矯正治療に携わっています。矯正治療で患者の将来が変わると思いながら仕事をしてきました。だからこそ、真摯に患者と向き合い、患者が納得した上で、矯正治療を進めていくことが大切だと思っています。


歯科衛生士ライター:原田

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